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【おすすめ!】メトロポリタン美術館展@国立新美術館その①

皆さんこんにちは、一橋地歴同好会アインズです。先日、一橋大学の前期日程の合格発表がありましたね。もしかしたらこの記事を読んでいる方の中にも春から一橋の方がいるかもしれません。合格された皆様、おめでとうございます🌸

さて、受験も終わりお出かけでもしようかな、というそこのあなた!大学に向けた新生活で東京に来るそこのあなた!残り少ない春休みをどう過ごそうか決めかねてる在学生のあなたも!!
全員、六本木の国立新美術館で開催中の『メトロポリタン美術館展ー西洋絵画の500年』※展示は終了しました※に行きましょう!!

初期ルネサンスから20世紀の印象派まで、500年間の絵画の変遷を追体験できるとんでもない展覧会が、今東京で催されています!ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている西欧絵画の巨匠の作品が一挙来日し、少なくともフラ・アンジェリコ、ラファエロ、エル・グレコ、ルーベンス、カラヴァッジョ、フェルメール、クールベ、ルノワール、セザンヌ、モネの日本初上陸作品が展示されています。凄すぎ。
今回の記事では、それぞれの区画で印象に残った絵画や画家について、気が付いたことや思ったことをいろいろ綴りたいと思います。


【第一区画・信仰とルネサンス】

フラ・アンジェリコ キリストの磔刑 1420~1423

フラ・アンジェリコ (2)

…開幕フラ・アンジェリコだと!?企画展示室の入り口で静かに燃えた人は少なくないはず。
さて、この絵の凄いところは十字架を取り囲む人々の遠近感です。十字架を中心とする円を、あえて楕円として描き、手前から奥へ空間の広がりを持たせています。背景が一面金であるように中世のゴシック美術の影響も残っていますが、この遠近感はまさにルネサンス!黎明期の貴重な作品です。

ところで、この絵をみたとき、私は自分の幼稚園時代を思い出しました。幼い私は色鉛筆でケーキの絵を描くのが好きでした。イチゴのホールケーキです。ホールケーキは丸いので、頑張って綺麗な円を書きます。しかし4歳のある日、気が付きました。円をゆがませると何かそれっぽいぞと。ケーキは丸いけど、絵にするときは真ん丸じゃ無いほうが上手に見える。なぜだろうでも何か物凄く上手に描けた。あの時の興奮は今でも覚えています。

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私の発見は当時のりす組さんに衝撃をもたらし、この描き方は園児の中にあっという間に広まりました。お絵描きのパラダイムシフトです。今思うとあれは、りす組という閉鎖空間に「遠近法」の概念が生まれた歴史的瞬間だったのかもしれません。ちなみにフラ・アンジェリコは『受胎告知』で有名な画家です。サイゼにあるやつです。

フラ・フィリッポ・リッピ 玉座の聖母子と二人の天使 1440頃

フィリッポリッピ (2)

続いては、声に出して読みたい画家名フラ・フィリッポ・リッピ。F音と破裂音の訓練にどうぞ。フラというのは修道士という意味です。フラ・アンジェリコが敬虔な修道士だったのに対し、フィリッポ・リッピは女好きで、修道女と駆け落ちし彼女と息子をモデルに聖母子像まで描いてしまいます。カトリックは妻帯を禁じていますし、女性は30歳くらい年下だったようで大スキャンダルだったはずですが、還俗して普通に許されました。
宗教画を重んじる割にその辺のルールが緩いのがルネサンスっぽくて良いですね。ローマ教皇にだって「甥」「姪」(意味深)がいた時代です。孕ませた女を急いで別の男と結婚させて誤魔化す、という荒業を使った修道士もいますから。
この聖母子も身近な誰かがモデルだったのかもしれません。ちなみに私は聖母子の右奥の天使の髪の毛のふわふわ感が好きです。

ラファエロ・サンツィオ ゲッセマネの祈り 1504

ラファエロ (2)

顔良し、育ち良し、性格良し。天性の絵画技量とコミュ力を併せ持つルネサンスの貴公子、ラファエロ・サンティ若き日の作品です。これから磔刑に処されるという運命を静かに受け入れるキリストの脇で弟子たちが眠っています。宗教画とは思えぬ優しい雰囲気があり、弟子たちの寝息が聴こえてきそうです。荘厳で近寄りがたい中世の宗教画とは一線を画したこの絵画は、後のラファエロの優美な聖母子像を思い起こさせます。

ちなみにサイゼリヤに頬杖を付いたかわいい天使の絵が飾られていることがありますが、あれはラファエロの『システィーナの聖母』という絵画の下の方を切り取ったものです。上の方は背景が無数の顔で埋め尽くされていてちょっと怖い。

ティツィアーノ・ヴェッチェリオ ヴィーナスとアドニス 1550年代

ティツィアーノ

ヴェネツィア出身のティツィアーノはスペイン国王フェリペ2世など欧州の王侯貴族に愛された売れっ子画家です。ギリシア神話の美と愛の女神アフロディーテ(ローマ神話のヴィーナス)は美少年アドニスに「危険な狩りに行かないで欲しい」と懇願します。しかしアドニスは狩りに出かけ、結局イノシシに殺されてしまいました。この絵はアドニスがフラグを立てた瞬間の絵です。さて、皆さんは「人を引き留める絵」と言われて頭の中でどのような構図を思い浮かべますか??こんな風にヴィーナスが大きく体をねじって背中を見せたり、二人の視線が対角線上で交わるような構図、当たり前ですが私には絶対に真似できません、、、。

ヴィーナスが「行かないで」と画面左に相手を引っ張り、逆にアドニスはそれを振りほどこうと画面右に進む。逆方向のエネルギーの矢印が引っ張り合っている感じが絵画に表れています。ジャンルを問わず人と人が絡む絵って「ただ触っているだけ」に見えがちなのですが、この絵はそれぞれの体重が相手に影響を及ぼし合っている感じが良く表れています。力ではヴィーナスが劣勢で、相手に引っ張られてちょっと引きずられかけている感じがリアルですね。対角線上にぶつかり合う視線、背景の雲間から差す光、怯えたキューピッドが悲劇性とドラマ性を増しています。

【第二区画 絶対主義と啓蒙主義の時代】

17世紀~18世紀、激しい明暗と劇的な構図が特徴のバロック様式の絵画は、カトリック教会と絶対王政の宮殿の双方で権力誇示の道具として重宝されました。

カラヴァッジョ 音楽家たち 1597年

メトロポリタン美術館展その2 (2)

カラヴァッジョは17世紀イタリアの画家で、バロック様式絵画の立役者です。この絵はカラヴァッジョがパトロンの枢機卿のために描いたものです。枢機卿の邸宅では若者たちが演劇や音楽の集いを開いており、それをモデルとしたそうな。

半開きの口、気だるげで悩ましい目線、白い背中、リュートを弾く柔らかい指。正面向きの少年の太ももが見えていたり、全員肩や首元が露になっていたりと、何とも扇情的な絵画です。同じイタリアの画家でも先ほどまでのルネサンス絵画とは雰囲気が全く異なりますね。古代ギリシア彫刻やルネサンスの美少年は理想化された姿で、ある意味人間味が無いというか「美術品として美しい」という感じですが、カラヴァッジョの少年たちは妙にリアルで生々しいので危うさを感じます。

シモン・ヴ―エ ギターを弾く女性 1618年頃

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今回の展覧会で特に印象に残っている絵画です。バロック美術らしい大胆な明暗!!デコルテの半分が暗くなっていることで、明るい方の肩や胸が際立っています。中世は金ぴか、ルネサンスや北方の絵画は遠近法の自然が背景になりがちですが、この絵画は背景を黒く塗りつぶし、まるでスポットライトで人物が照らされているように演出しています。豪勢なサテンの衣の質感や、ギターを弾く指先のなめらかさも素晴らしかった!是非実物で確かめてほしいです。

ヴ―エはカラヴァッジョらイタリアのバロック絵画をフランスにもたらした画家として知られています。展覧会では先ほどのカラヴァッジョの絵と隣同士で展示され、楽器の音が共鳴しあっているようでした。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 女占い師 1630年代

メトロポリタン美術館展 (2)

右側の老婆が女占い師で、中央の男性が占いの内容に気を取られている間に周りの女性たちが男性の持ち物を盗もうとしています。緊張感のある目線が特徴的ですね。前述の『ヴィーナスとアドニス』と対照的に人物が硬直的に描かれているので、目線だけが動いているのが強調されています。ちなみに占い師を含め女性はロマだとされています。左端の女性の袖の刺繍がエキゾティックですね。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールで有名なのは、しばしば「怖い絵」として紹介される『いかさま師』です。

その①まとめ

今回は15世紀の初期ルネサンスから、17世紀のバロック様式絵画までの展示で印象に残ったものをまとめました。ルネサンス好きの自分としては開幕から「っっっ!(声にならない興奮)」が止まりませんでした。本当に美術の変遷を追体験できます。その②では18世紀以降のオランダやフランスの絵画の感想を綴っています。

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一橋地歴同好会アインズは世界史・日本史・地理に関わる様々な活動を行っています。私は西洋美術史に興味があるので研究会誌や発表会でも絵画について好きなことを語ることが多いのですが、地理部として都内の名所旧跡を巡ったり、日本史で忠臣蔵の鑑賞会をしたり、世界史料理を再現したりと活動は多岐に渡ります。自分の興味を深めるのも、他のメンバーが好きな分野について知るのもどちらもとても楽しいです!興味がある方はTwitterの情報等も確認してみてください!

※参考

※絵画画像はメトロポリタン美術館展公式から引用しました。多くはパブリックドメインでオンライン展示などもありますが、実物を見るのが一番だと思います。

※展覧会は5月30日までです!


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