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【会員の日記】ローマ・ボルゲーゼ美術館レポ 後編※2024年2月更新

前編はこちら


二階・絵画館

ここからはボルゲーゼ美術館の二階・絵画館についてご紹介します。

ドメニキーノ『狩りをする女神ディアナ』

ギリシア・ローマ神話の絵画です。中央で弓を掲げる黄色い衣装の女性は、狩りの女神ディアナ(アルテミス)。三日月型の髪飾りが可愛いですよね。周りの女性たちはニンフという精霊です。さて、この絵のもととなったのは、「ディアナ(アルテミス)がアクタイオンという男性に沐浴の瞬間を見られてしまう」という神話の一節です。

アクタイオンはテーバイ王家出身の狩人と伝えられている。あるとき彼はキタイロン山で狩りをしていたが、偶然にも谷の一番奥にある泉でアルテミスが従者たちとともに水浴びをしている場面に出くわしてしまった。アルテミスはこの闖入者に激しく怒って鹿の姿に変えた。そして狩りに連れてきた自分の猟犬たちに食い殺された。

Wikipedia『アクタイオンとカリストのいるディアナとニンフの水浴』より

絵画の見どころは複数あります。まず注目したいのは、画面左側。複数人のニンフが弓を射っていますが、この部分、手前のかがんだニンフから奥に向かって、「矢を取る→弓を構える→矢を放った直後」と、弓矢を使う動作がコマ送り的に表現されているのにお気づきでしょうか。一人一人の動きを目で追うことで、矢を放つ様子を動画のように鑑賞できるのです。

一連の動きを、複数のニンフを使って描く手法。現代のアニメーションにも通じる手法ですね。

次に注目すべきは、絵画の右端。見つけた!覗きしている男性です!!木々の間から、こちらに顔だけを見せています。いかにもコソコソしていますね。そして彼の右後ろでは、死んだ鹿が運ばれています。下の画像左端には、猟犬の鋭い爪と牙が見切れています。これらの要素は、先ほど引用したアクタイオンの末路を暗示しているのです。

女神と精霊の沐浴を覗いてしまい、鹿に変身させられ、猟犬に食い殺されたアクタイオンです。

最後に注目すべきは、絵画下部のこのニンフ。こちらをじっと見つめています。ニンフの沐浴を覗き見てしまった我々鑑賞者を非難しているのか、挑発しているのか、はたまた誘惑しているのか。何か、もの言いたげな目線です。

ガイドさんは「絵画をどこから見てもこのニンフと目が合う」と仰っていました。気になる方は実践してみてください。


レオナルドダヴィンチ『レダと白鳥』の模写

こちらはレオナルドダヴィンチの作品の模写。レオナルドの直筆ではありません。本人による絵は既に現存しておらず、別人が描いた数点の模写のみが残っているそうです。レオナルドの作品は、ローマというよりは、主な活動拠点だったフィレンツェやミラノ、或いはパリのルーブル美術館に保管されていることが多いです。
ところで、レオナルドダヴィンチの作品を見ると、『出さない神レポより出すゴミレポ』という言葉を思い出します。彼のアイデアは無限だったろうに、実際に完成させた作品や現存する作品の何と少ないことか。どんなに素晴らしいものでも、途中で放棄したり、頓挫したり、捨ててしまっては何も残らないのです。

ティツィアーノ『聖愛と俗愛』

続いては、ボルゲーゼ美術館を代表する有名な作品。過去のリラ紙幣には、作者ティツィアーノの肖像画とこの絵が表裏に描かれていたそうです。
「聖なる愛」と「世俗の愛」。どちらの女神がどちらの愛の象徴でしょうか。…左側の(当時としては)現代的で豪華な衣装の女性が世俗、右側の裸の女神が神聖の象徴ですね。
2人の服の色が良いですね~。身にまとうものは違っても、色が同じ(色の面積は対比されている)なので画面全体の色彩バランスが取れています。
穏やかで優美な風景が広がる背景もルネサンスらしくて好きです。

さて、この絵はもともと、とある貴族の嫁入り道具のたんすにくっついていたものだそうです。よって、絵画の中の二人の女性は、女神であると同時にその花嫁さんでもあるとか(諸説あり)。確かに、二人の女神は同じ顔ですから、一人のモデルを異なる方法で描いたと言われても納得できます。女神の間のキューピッドが水をかき混ぜていることから、「愛には聖なるもの(精神的な愛)と世俗のもの(肉欲的な愛?)があり、結婚にはどちらも必要」という花嫁の心得が説かれている、と言われることもあります。

ラファエロ『ユニコーンを抱く貴婦人』

ルネサンスの貴公子ラファエロの作品です!彼はルネサンスの三大巨匠として、レオナルドダヴィンチ、ミケランジェロと共に紹介されることが多いですね。彼の作品はサイゼリヤにもよく飾られているので、知らず知らずのうちに触れている人も多いでしょう。
彼は大先輩レオナルドをたいへん尊敬しており、この絵の構図も『モナ・リザ』の影響を受けているとかいないとか。言われてみれば確かに?

この絵は、ルネサンス時代の裕福な女性がどのような服を着ていたのか・どのようなアクセサリーを身に着けていたのかを正確に描写している点でも大きく評価されています。

こめかみの髪の毛の質感大好き。

天井にも素晴らしい絵画がずらり

ボルゲーゼ美術館の素晴らしいところは、所蔵品だけでなく建物そのものが美しいということ。特に天井画が非常に豪華で、上を向きすぎて首がいたくなったほどです。一階の部屋の天井も含めて、少しご紹介します。

一番好きな部屋
別角度から。
こちらは神々の様子
可愛らしい雰囲気のお部屋

終わりに

以上でボルゲーゼ美術館の紹介を終わります。もしローマにいらした際は、是非寄ってみてください。穏やかな公園を散策し、古代ローマから近世に至るイタリアの美術を浴び、帰りにちょっとジェラートを買って散策終了、なんていうローマの過ごし方もきっと素敵ですよ。
毎月第一日曜日は入場無料です!!!大人気の美術館なので、10日前からの予約が必須です。


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