~悪魔と天使~(ほぼ2400字小説)
悪魔は自分のいる場所にまったく不満がなかった
むしろ居心地がよく後から入って来た悪魔達ともうまくやっていた
「毎日好きな事が出来てここは最高だな」
ある日、天から白い物がヒラヒラと降りて来た
「なんだ?あれは」
悪魔はそれを辿り寄せてみた
薄汚れて読めなかったが、何かが書いてあった
「うっとうしいな!」
悪魔はそれをビリッと破くとその場に捨てた
しかし、次の日もまた次の日も同じように降りて来た
悪魔は数日間は破っては捨て破っては捨てていたが、ある日汚れが薄くかろうじて文字が読める事に気がついた
…おいで
「おいで?」
次の日はもう少し読めた
…うよ。こっちにおいで
「こっちに来いって?行かれる訳ないじゃないか!」
悪魔は返事を書いてみようと思ったが、ヒラヒラした物は数分で天に戻ってしまう
破り捨てた物に書いてみたが、天に上げるすべがわからない
天に向かって大声で叫んでみたりもしたが、届いているかもわからなかった
悪魔は考えた
どうやって、届ける事が出来るのだろう
一方、天使は毎日長い巻紙に一方通行のメッセージを書いていた
はじめの頃は手繰り寄せると下の方が破れて戻って来た
「ちゃんと読んでお返事してよーー」天使は叫んでいた
地上を通るからか地獄が汚いのかわからなかったが、用紙は汚れて戻って来た
天使は諦めずに毎日毎日やり方を変えては一生懸命にメッセージを書いて降ろした
ある日手繰り寄せた用紙の下の方に手の跡のようなシミがついていた
「あれ?これって…」
次の日もシミはついていた
「読んでいるのね!」
天使はとても喜び、読んでくれていると信じて一生懸命に書いた
毎日のやり取りの中で「サイン」のようなものはあったが、天使はとても不満だった
読んでいる……読んではいる……
だけど、悪魔の言いたい事がわからなかった
数か月もの間、天使はあの手この手でメッセージを書いては、戻って来た「サイン」のようなものを何とか解読しようとしていた
「いつもだったら、2~3回でもう諦めちゃうんだから!特別だから続けているのに…」
何故ここまで頑張っているのか、不思議に思った神様は天使に聞いた
天使は答えた
「だって、間違ってあそこに行っちゃったのよ?本当はもっと光り輝く場所に行くはずだったのに」
天使は続けた
「もちろん、ここは無理だけど、人間界なら一緒にいられる。私達はツインだから!それに本当は自分で動く事が出来るのにそれをやらない。きっと失敗する事への恐怖とかがあって勇気が出ないんだわ。それとも別の何か障害があるのかしら…見てよ、時折見せるあの顔、とっても辛そう」
悪魔から天使は見えなくても天使には悪魔が見えていた
そんな状況の中でも天使はなるべく悪魔だけにわかるように、メッセージを書いた
ふと、もう諦めようと思う時もあったがそんな時は何故か悪魔からのサインがわかりやすく戻って来た
一方悪魔は心を締め付けられるほどに辛かったが、毎日必死に頑張っていた
天から届くメッセージにどうやって天使にわかるように返事を書けばいいのか
今いる場所でやらないといけない事もたくさんあった
そしてなにより上に行く方法や時期を考えていた
「今のままじゃだめだ、もっと修行してそれなりにならないと上にはいかれない」
「でも、そんな事をしていて天使からのメッセージが来なくなったりしたら」
しかし悪魔はこのやりとりが楽しくなっていた。
別に急ぐ必要もないか……
何か失敗して、このやりとりがなくなってしまう事を考えたら、このままの方が……
ある日、いつものようにヒラヒラ用紙が降りてきたが、メッセージが光り輝く文字となって浮き出ていた
「大丈夫、絶対に地上への道はある。そこの場所へは信じる心と少しの勇気があれば、必ず行かれるようになってる」
”信じる心と少しの勇気か…”
悪魔は目を閉じ大きく深呼吸をした
次の瞬間、悪魔は何か暖かいものに包まれとても幸せな気分になった
目は閉じていたが目の前に開いた扉があって、その先はとてもまぶしい光であふれていた
悪魔は目を開けた
「なんだここは?」
「あぁ、やっと来れたね」
すぐそばに天使がいた
天使はニコニコしながらそう言った
「ここが地上?こんなに暗いのに」
「暗くないよ?ほら、まずはこの人の目から外を見て」
”この人の目?……”
そこには、せわしなく行き来する人達が見えた
「えぇ?地上に出るってこう言う事?」
「そうよ、何だと思ったの?」
「いや、地上で君と……あっ、あそこに巻紙がある!あれに何か書こう」
「あれはトイレットペーパー、巻紙じゃないわよ」
「私達は元々は一つの魂だったから一つになれた。それでいいでしょ?」
「やだ!別々の体で君と会いたい」
「じゃぁ、来世はそうしよう!私も同じ気持ちだから!」
悪魔は、はじめはとても不満だったが、最後の言葉で機嫌を直した
天使は今までの気持ちや話したかった事を話し始めた
私は、普通は2回とか3回コンタクトを取って、ダメだなって思ったらすぐに手を引いちゃうの
だって、その人に私は必要じゃないんだもの
でも、あなたは違った……そうあなたは特別だった
何度やっても返事来ないし、すごく寂しかったし、だけど諦めないって思いはずっとあった
そのうちに、二人は一つの魂だったって気がついた
ツインってね、我慢する事とか耐える事とか何か障害がたくさんあるんだって
ただ一方通行だったけど、やり取りは楽しかった
本当はね、ちゃんとお話ししたかった
でも、あなたの場所は私にはとても遠くて、かろうじてあなたの姿は見えるのだけど、お話し出来なかったから
もし、お話しが出来ていたらもっと早く一緒になれたかもしれないね
あなたを知って私は他の者にもとっても優しくなれた
だから、すごく感謝しているの、ありがとう
次はもっと早く会おうよ!
もっと早く会って、もっとたくさん楽しい事をしよう
また私が必ず見つけるから
今よりも、もっともっと笑いあおう、そして支えあって励ましあって助け合って二人で幸せな時間を過ごそうね!
そう言うと、天使は続きを心の中でつぶやいた
ねぇ、知ってた?
あなたよりも、私の方が本当はずっとずーっと……
逢いたかったって事
※Happy Valentine's day
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