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~僕たちのアップデート~2000字のドラマ

「噂で聞いたんだけど」
唐突に京介は話し始めた
「どんな夢でも願いでも必ず叶えてくれる場所があるらしい。しかも叶える為に金はいらない つまりタダだ」

「どんな夢でも叶うのか?」
智は身を乗り出し聞いた

「何でもだ…ただし」
「ただし?やっぱり何かあるんじゃない」
明日香はうさん臭そうにそう言った

まぁまぁと手で明日香を制し続けた
「ただし、元に戻るのには莫大な金額を取られるんだってさ。金額は50億!」
「50億!?」智は驚いた
「あら、50億も必要なら、それ以上の物をお願いすればいいじゃない。そもそもどんな願いでもって言うなら元になんて戻りたいと思わないでしょ」
明日香はクスクス笑いながら言った

「それがさぁ、結構いるらしいぜ?元の自分に戻りたいって人」
京介はニヤリとしながら言い、そのまま続けた
「なぁ、行ってみないか?やるやらないは別としてさぁ」

智は手を高々とあげた
二人は明日香を見た
「はぁ…わかったわよ」

3人は日曜日に噂の場所を探し始めた
商店街をまっすぐ進み、4つ目の路地を左に入り、道なりに左下に進んだ
しばらく歩くとまた左に曲がった。
すると先ほどの商店街に出た。
「はぁ?どういう事?さっきの場所じゃん!道あってる?!」
明日香はプンプンしながら京介に聞いた
「あってる…と思うんだけどなぁ。とりあえず進もうぜ」
京介は言った
商店街に出た3人はそのまままっすぐ目の前の路地に進んだ
そう、まるで方位記号を辿っているかのように

しばらく歩くと、ボロボロの看板に「うらない」と書いてある小さな店を見つけた

「ここかなぁ…」京介は不安そうに言った
「とにかく入ってみよう!」
智は扉を開けて中に入った。カラーンとドアのベルが鳴った。
京介と明日香も続いて入った
中は少しかび臭い何の店かもわからないほど薄暗かった

「すみませーん」智は叫んだ
カウンターの奥の小さな扉から一人の男が出てきた
男は何も言わず、椅子を3脚用意した
3人は顔を見合わせてから、それぞれ座った

京介が口を開いた
「あのぉ」
「夢を叶えたいんだろ」
男はすぐさま低い声で言った
「あっ、いえ、ちょっと話を聞いてみたくて来ただけなんだけど…」

「話?話は簡単だ。夢や希望や願い思い、それ位あるだろ?それを全て叶えてやる、それだけだ」
男は続けた
「未来のお前たちをアップデートしてやれるんだ。ただし…」
「戻りたい時は50億払うんでしょ!!」
智は言った。明日香は「シーッ」と睨んだ

「いや、その前に大事な事がある。どんな物でも叶えてやれるが、全て細かく聞く必要がある」
「細かくって?」
明日香は言った
「全て細かくだ。出来れば、そうだな時間単位だな。何時何分にこうなるとか、この先の事を…自分がどうやって死ぬかまで全て細かく自分で決めてもらう」
「すっげー大変じゃん!」
智は叫んだ
「夢を叶えるという事はそんなに簡単じゃないだろ。それを細かく決めるだけで叶うんだ。それもタダで」

「とりあえず、考えてきます」
京介はそう言い、2人に目配せをすると店を出た
「どうする?とりあえず書いてみるか?」
京介は二人に聞いた
「でも、何日で書きあがるんだよ!明日の事を書いてもすぐ明日になるぜ?」
智はめんどくさそうな顔をした。明日香はその言葉に笑った。
「じゃぁ、高校を卒業した辺りからを書いたらどうかな?」
「うん、そこからの自分の人生を考えればいいんだな」
明日香の提案に京介は答えた。智はしぶしぶ同意した

3日後
「もうだめだぁ」智はノートを投げた
「ちょっと!投げないでよ!どこまで書いたのよ」明日香は聞いた
「3日後…」智の言葉に二人は爆笑した
「だってさ!何時何分トイレに行って、何時何分母さんの作った朝食の献立書いて、それを食べて…」
「そこまで細かく書くの?」明日香は言った
「そう言う事なんだろ?だって、一生トイレ行かれなかったらどうすんだよ!」
「夢の為のプロセスなんだから、そんなに細かくなくていいんじゃないかなぁ」
京介は笑いながら智に言った
しかし、智はもうすでに諦めていた

「明日香はどこまで書いた?」
「大学を卒業して就職して恋をしたって所まで来たわ」
「それって夢なの?普通に出来そうだけど」
京介は笑った
「じゃぁ、京介は?どこまで書いたの?」
「大学で博士課程を取った」
「京介の方こそ、頭がいいんだから取れると思うわ」
明日香も負けじと笑った

店の中で男は片付けをしてた
奥から彼の妻がやって来て男に話した
「今日も誰か来たの?」
「あぁ、性懲りもなく」
「もう、いい加減違いますって言えばいいのに」
妻は続けた
「本当に書いてきたらどうするの、叶えてあげられないじゃない」
「そこまで細かく書いてくる奴はいないだろう。そもそも、そんなに細かく書いて来れる子なら夢だってなんだって自分で手にいられるさ」
男は笑った

どこで、こんな噂が広まったのだろう。
何も売るものがないから「うらない」と看板を出しただけなのに

カラーン
ドアのベルが鳴った

「やれやれ、またか」男がドアを見た

1人の女の子のシルエットが見えた

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