ワンオーダー 〜キャッシュがないと戦えないヒーローとそれを支えるボクの話〜_29

ボクは全トッピングのワッフルとカフェモカを頼んだ。

お値段1800円である。

「ゆ、雪道さん、多少の遠慮もないところが好きです」

「いやー、うまい。病院食は味気なかったからねー」

人の金で食べるものほどおいしいものはない。

絶望的な現状を甘味が緩和してくれる。

「あれ、何かしょっぱい?」

「ゆ、雪道さん、なんで泣いてるんですか?」

「え? 泣いてる?」

気付くとボクは知らぬ間に涙を流していたようだった。

「どどど、どうしたんですか、雪道さん!」

死ぬまでに後何回、ボクはカフェに来ることが出来るのだろうか。

きっとボクの精神が重圧に堪えきれなくなったのだろう。

「辛いことがあるなら言って下さいよ。私、聞きますよ?」

「お前ごときに何が分かる! 実はさ」

「言うのかい! 精神分裂症か!」

ボクは、自分に課せられた借金のことを話した。

もちろん、デイビットだのEvil Demandだの壇ノ浦さんのことは伏せて。

「え……マジですか」

「マジです」

槇村さんはしばらく考え込んだ。

気まずい沈黙が流れる。

「ちょっと、稼げる仕事、あるかもです」

「どんな仕事っすか」

「まあ、夜です」

「夜かー」

「今から、付き合って下さい。紹介します」

「え、今から?」

「だって、時間はもう残されてないですよ! 一回目の期限まであと2週間しかないんですよ! 善は急げです!」

「行くかー」

「行きましょう!」

そういうことになった。

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