ワンオーダー 〜キャッシュがないと戦えないヒーローとそれを支えるボクの話〜_25

テレビ中継で映されたEvil Demandは先日と同じ奴だった。

街に火柱が上がっている。

きっと、今まさに現場では苦しんでいる人がいるのだろう。

何故、奴らは人々を襲うのだろうか。

Evil Demand。

訳すと、邪悪な要求、である。

何か意味があるのだろうか。

Evil Demandは人々を襲っている。

と、眩い光が一閃し、Evil Demandの身体からどす黒い血液が飛び散った。

何者かが、Evil Demandを切り裂いたのだ。

まさか。

炎と煙の合間に見えたそのヒーローの姿は、壇ノ浦さんのものに違いなかった。

見間違えるはずがない。

壇ノ浦さんはボクへのお見舞いを終えた後、戦いへ赴く決断をしたのだ。

自分の意志で。

今月、もうお金がカツカツだと言っていたのに。

壇ノ浦さんは剣を構え、Evil Demandに牙突を喰らわせる。

もちろん、牙突というのは比喩である。

しかし、腕に防がれ、本体に届かない。

お、出た!牙突零式!

腕を切り裂き、本体に鋭い斬撃を与える。

叫ぶEvil Demand。

ここ数回の戦いの中で、明らかにEvil Demandへのダメージは蓄積されていた。

弱っている今がチャンス!

もうあと一押しできっと、倒すことが出来る!

「行け!行け!」

野球観戦みたいになるボクである。

壇ノ浦さんが斬撃を繰り出して行く。

Evil Demandの腕を全て切り落とし、ついに身動きを封じた。

そして胴体についた目玉を踏みつけながら、身体の真上に登る。

壇ノ浦さんは剣を振り上げ、そして深々と突き刺した。

突き刺した根元から光りが舞い散る。

剣が太くなり、壇ノ浦さんの姿勢にも力が入る。

Evil Demandの身体が浮き上がると、巨大化した剣が貫通していた。

そして、壇ノ浦さんは剣を振り上げる。

Evil Demandの身体は切り裂かれた。

お疲れさまでした。

ようやく、Evil Demandを倒すことが出来た。

思えば、奴に奪われた物は大きかった。

囲碁サークルの友人達。

壇ノ浦さんの残高。

ボクの借金。

たくさんの犠牲を、ようやく悼むことができるのかもしれない。

気付くとボクの頬を涙が伝っていた。

「ももちゃん、ありがとう」

たくさんの犠牲者への弔いと、これから増えるはずだった犠牲者を減らしてくれて。

壇ノ浦さんは、今日、まさに正義の味方として讃えられるべき存在になったのだ。


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