「有田屋千三郎」第5話(全23話)

シーン5 芸能事務所

打ち合わせスペースで向かい合う事務所社長中山(50)と有田屋千三郎。

中山
「有田屋くん、今日、わかっているよね。最後のチャンスだからね。」

有田屋
「はい。社長、今日の仕事必ず結果残してきます。」

中山
「俳優になって12年。ようやく回ってきたチャンスだ。今まで待った甲斐があったな。君はイケメン俳優じゃないし、背が高いわけでも低いわけでもない。演技がうまいわけでもないし、歌も踊りもだめ。かといって特別な存在感があるわけでもない。特技もなければ家が金持ちでもない。正直何故芸能の道を歩もうと思ったのか不思議なくらいだ。」

有田屋
「所属のタレントをそこまでボロクソ言わないでくださいよ。」

中山
「所属は所属だけど、正直、存在感がなさすぎてクビにするの忘れてたんだよ」

有田屋
「どんだけ存在感ないんですか!!」

中山
「まあでも他の人間にはない、運、だけは持っているみたいだな」

有田屋
「はい、このチャンスだけはモノにしたいと思っています」

中山
「これ失敗したらもう二度と仕事はないぞ!いいか、死ぬ気でやってこい!」

有田屋
「はい!!行ってきます!!」

第6話に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?