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『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形』

『映画を早送りで観る人たち  ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形』
光文社新書

著者の稲田豊史は、1974年、愛知県生まれ。
横浜国立大卒後、ギャガ入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て2013年に独立。ライター、コラムニスト、編集者。とのこと。

私がこの本を買った本当のところは、自分でもはっきりしていない。
単なる興味本位の域を出ていないと思う。
私自身も、早送りで観ることはあって、それは、ただ面白くないからとばしてしまうだけで、それだけのことと思っていた。
ところが、著者はそれだけに止まらず、更に掘り下げていた。

この本は、もともと、2021年3月29日に「現代ビジネス」というサイトに著者が執筆した『「映画を早送りだ観る人たち」の出現が示す恐ろしい未来』、及び同年6月と12月に執筆された続編の、合計9本の記事を元にしたもの。それに、多くの追加取材を行い、全面的な加筆改稿を施し、第1章と第5章の書き下ろしを加えた、そうだ。

そもそも、著者には違和感があった。

『序章 大いなる違和感』で書いている。

著者がDVD業界誌編集部にいた頃、仕事で大量のDVDをみる必要があった。しかし、ある時、かつて倍速視聴した作品を見直してみたら、印象が全くちがっていて愕然とした、そうだ。

2021年01/18日号の『AERA』に、
[『鬼滅』ブームの裏で進む倍速・ながら見・短縮化 長編ヒットの条件とは]、との記事が載せられ、そこに、通常速度では観られなくなったという男性の声が紹介されていた。
その記事を読んだ著者は居心地が悪かった、なぜなら、自分に倍速視聴にどっぷり浸かった時期があったから。
胸がざわついた著者は、こうつぶやいた。
「それでは、作品を味わったことに、ならないぞ・・・」と。
こうして、『序章』で、倍速視聴の背景を探るところから始まる。
一つめは、作品が多すぎること。
二つめは、コスパを求める人が増えたこと。
三つめは、セリフですべてを説明する映像作品が増えたこと。

以下、「掘り下げ」が続く。その順番は上記の順ではないが。

第1章 早送りする人たちーーー鑑賞から消費へ。
 「鑑賞」と「消費」の違いや、「観たい」のではなく「知りたい」とか、
 早送りする人たちの、その理由を書く。

第2章 セリフで全部説明してほしい人たち
ーーーみんなに優しいオーブンワールド

「わかりやすいもの」が喜ばれる、わからなかった。(だからつまらない)、など 。
 今時の若者(ことにZ世代)は、どうやら「鑑賞」することを求めてはいない、「面白い」かそうでないか、直感的に選別する、解らないことを吟味思考する手間隙を嫌う、らしい。
私は、ゲームを全くと言っていいくらいやらないのだが、「オーブンワールド」なゲームがあるそうで、解らなくても解らないなりに楽しめるのだそうだ。解らないなりにでさえ楽しめなければ、それはもう彼らにとっては無用なものなのだ。

第3章 失敗したくない人たち
ーーー個性の呪縛と「タイパ」至上主義

LINEグループの共感強制力、Z世代の個性発信欲、自分にとって観る価値があるかどうか、Z世代のネタバレ消費、圧倒的に時間とカネがない今の大学生、など。 
  Z世代は、1960~´70年生まれのX世代、1980~´90年生まれのY世代に続く世代。
Y世代が「ディジタルネイティブ」、つまり、社会人になる前からインターネットやパソコンのある環境で育ってきた世代であるのに対して、Z世代は「ソーシャルネイティブ」と呼ばれる。ソーシャルとはSNSのこと。10代前半からスマホでLINEやインスタやTWITTERに親しんできた世代。
Z世代の特徴を8つあげている。→→続編に別記する。

第4章 好きなものを貶されたくない人たちーーー「快適主義」という怪物
見たいものだけを見ていたい、心を揺さぶられたくない、好きなものだけつまみ食いーピッキーオーディエンス、共感至上主義と他社性の欠如、映画を監督で観ない、「他人に干渉しない」Z世代の処世術など。

第5章 無関心なお客様たちーーー技術進化の行き着いた先
「映画一本=2時間」が長すぎる設、単位時間あたりの情報処理能力が高い人たち、スマホとタブレットの「ひとり観」が倍速視聴を助長した、など。

以下、続く。




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