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#児童書

コケシちゃん

コケシちゃん

4年1組にスイスから体験入学生がやって来る。異質の日本人に対する抵抗が半端なく、展開に目が離せない。

思えば、うちの息子たちにも海外では東洋人に対する偏見の、帰国してからは「ヘンな日本人」差別の苦労があった。

私自身はというと、小学4年のとき地元に帰ったのに、転校生というだけで目の敵にされた自分の過去と重ねて読んだ。

転校生を迎える新学期にもお薦めしたい。

※コケシといえども、ひとりひとり

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この夏、出逢えてよかった1冊

この夏、出逢えてよかった1冊

小手鞠るい 『ある晴れた夏の朝』(偕成社、2018年)

原爆投下の是非について高校生が激論を交わす。本場アメリカの討論に唸り、知らなかった歴史に驚き、スリリングな展開にフィクションであることを忘れた。日本語版を中高生に、英訳版を高校や大学の副読本にオススメ。この夏の英訳本の出版を機に、遅ればせながらも出逢えてよかった1冊。

ミスターオレンジ〜未完の勝利

ミスターオレンジ〜未完の勝利

トゥルース・マティ作・野坂悦子訳『ミスターオレンジ』(朔北社、2016年)

「第2次世界大戦のさなか、ヨーロッパを逃れてニューヨークへきた画家ミスターオレンジとの出会いが、少年ライナスを大きく変える」という帯のことばを読んで、少年と画家の交流がならば「魔女の宅急便」のキキが絵描きのウルスラに出会って成長するのと似た展開かなと予測して読み始めた。だが、その予測はよい意味で裏切られることになった。も

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ファンタジーへの誘い

ファンタジーへの誘い

斉藤洋 作・小澤摩純 絵 『ジーク』(偕成社、1992年)

あまりにも素敵な表紙だったので「自分にはハードルが高いかも」と長らく積ん読状態だった1冊。斉藤洋さんは大好きな作家さんだから、挫折したくなくて身構えすぎたんだと思う。

もっと早くに読むべきだった! 私でも読めたんだから、未読の方はぜひ!

たとえていうなら、「なん者ひなた丸シリーズ」の西洋版青少年部門(笑)ちょっとこわそうだけど安心し

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空を見上げるとき

空を見上げるとき

工藤純子著『セカイの空がみえるまち』(講談社、2016年)

異国の地に降り立つと言語や風習のみならず空気の匂いも違う気がして、ふと空を見上げたものだった。この空は同じはずなのに、と。

久しく東京を離れている私は、新大久保がコリアンタウンのある「明るい街」へと変貌を遂げたことを今回初めて知ったのだが、読み進めるにつれ「明るさ」とは裏腹に外国人にたいする差別や偏見のうごめく闇の深さをも思い知ること

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学校の問題に真っ向から挑む

学校の問題に真っ向から挑む

工藤純子著『あした、また学校で』(講談社、2019年)

クラス対抗リレーやなわ跳び大会がある度に「あいつがいるから勝てない」「おまえのせいだ」という声が飛び交い、運動苦手なこどもが肩身の狭い思いをするのは、学校あるあるの話。

でも、この本は、そんな弱い立場のこどもを教師が叱るところをしっかり描き、学校が抱える課題に真っ向から挑んでいる意欲作だ。

「こんなん書いて大丈夫なの?」「出版社どこ?」

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『風の陰陽師』シリーズに震えた

『風の陰陽師』シリーズに震えた

三田村信行『風の陰陽師』シリーズ(ポプラ文庫、2010~11年)

初版2007年刊行のこのシリーズは
マンガ化もされているため
ご存じの方が多いと思う

私は『ハリーポッター』でも
夢に出てきてしまうほど怖がりなので
この類いの物語は基本読まないのだが
同著者による『安寿姫草紙』で免疫ができて
今ごろになって初めて陰陽師シリーズに挑んだ

目の前にはっきり情景が浮かぶほどリアルで
もちろん恐ろし

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私にとっての『セイギのミカタ』

私にとっての『セイギのミカタ』

佐藤まどか作・イシヤマアズサ絵 『セイギのミカタ』(フレーベル館、2020年)

「みんながほんのちょっとずつ勇気をもてば、なにかが変わるかもしれない」――そんな著者の思いが詰まった1冊

赤面症でトマトマンと呼ばれる主人公の前に現れる
セイギのミカタ
直球ストレートできたかと思ったら変化球で
最後まで目が離せない展開だ

小学4年の時
私は2度目の転校で
1年の時と同じ小学校に戻った
すでに知っ

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ありのままの不思議

ありのままの不思議

三田村信行『オオカミの時間 今そこにある不思議集』(理論社、2020年)

三田村信行『おとうさんがいっぱい』以来
45年ぶりの佐々木マキとのコラボ『オオカミの時間 今そこにある不思議集』

※『おとうさんがいっぱい』は頭木弘樹編『絶望図書館』にも収録

世の中は理性で説明できることばかりではない
にもかかわらず
「子ども向け」にするために
大人は余計な脚色を加えてはいないだろうか

この2つの作

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