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採用担当者は企業の顔であり、合同説明会や採用面接等において印象が悪ければ、求職者からは選ばれません。転職理由として人間関係を挙げる人は多く求職者は採用担当者の態度や人柄を通じて「この会社で働きたい」と思います。そのため採用担当者の印象はかなり重要になってきます。

 中小企業は大企業のように採用を専門とする部署がなく、他の業務をしながら採用担当者を兼ねることも少なくありません。他の業務と兼任して採用に関する十分な経験やノウハウがないまま求職者の対応をすることは企業にとって様々なリスクとなりえます。

 普段は採用業務とは別の業務に従事している社員について、その業務の合間に採用にまつわる業務をしてもらうときに留意しておきたい事項を解説します。

Ⅰ 採用担当者の業務実態調査

Indeedが企業において直近1年間で採用実務に従事している方1,647名を対象に、「採用担当者の業務実態」に関する調査を行いました。その結果、人事・採用業務以外の業務を兼務していると答えた企業が72.4%になりました。採用業務のみ携わった会社はわずか24.1%でした。

 また採用担当者が採用に割けている時間は業務全体の43.4%であり、採用担当者は、採用だけではなく他の多くの業務も担当していることが分かります。

企業規模別で従業員2~299名の企業で採用業務に割けている時間は35.5%であり、規模が小さい企業については採用担当者を置くことができず他の業務に時間が取られてしまっていることが分かります。

人材採用業務フローの中で最も重要だと思う業務をの第1位は「面接の実施・同席(12.5%)」、第2位は「人材要員計画・採用計画の立案(10.0%)」でした。

 

人材採用のために最も重要なのは採用面接ですが、採用フローの中で「面接」にかけている時間はわずか採用フロー全体の16.1%にとどまっています。

・採用業務以外の業務を兼務している企業が72.4%
採用担当者が採用に割けている時間は業務全体の43.4%
従業員2~299名の企業で採用業務に割けている時間は35.5%
採用業務フローの中で最も重要だと思う業務は「面接の実施・同席」
・採用面接にかけている時間は採用フロー全体の16.1%

採用担当者は採用業務以外の業務を行っているが、採用業務に時間をかけられていない。面接は大事だと分かっているけど面接にかけている時間は少ないことが分かります。つまり採用で一番大事な面接プロセスを確立すれば採用担当が他の業務をしていたとしても採用の質は一定以上保てるということになります。

Ⅱ 採用担当者について

1 採用担当者は会社の顔になる

応募者はどのような人が働いているかということを採用担当者を通じて想像します。「ここで働きたい」と思うのかそれともこの会社は大丈夫なのかと思うのかは採用担当者の印象ひとつで変わります。

本業の業務が忙しいからといって会社からやらされているような態度を出してみたり発言をしたりすることはご法度です。その印象が元でせっかく内定を出しても入社辞退ということもありえます。

2 採用担当者の人選について

採用担当者の人選についてはどんな人が向いているのか条件を挙げてみます。

(1)コミュニケーションがある方

採用業務フローの中で一番大事なのは採用面接です。そのためその採用面接で求職者が話しやすいようにコミュニケーションが取れる人物が適任です。

(2)トップの成績の人

例えば営業の人を採用する場合には一番成績のある営業マンが採用担当した方がいいです。それは入社について憧れをもってこの人の元で働きたいと思ってくれるからです。

3 面接で聞いたらいけないこと

(1)面接できいたらいけないこと

採用担当者が未熟な場合にはつい聞いてしまいそうなことがあります。以下の項目については聞いてはいけないことになります。

次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握したりすることや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。

<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
 
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施(注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

(厚生労働省「公正な採用選考の基本」より引用)

(2)もし聞いたらいけないことを聞いた場合

この場合には厚生労働省から改善命令があります。この改善命令に従わない場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

それだけではありません。聞いたことによってSNSで投稿拡散されることも考えられます。そうなると会社の信用失墜につながり応募者が激減することもありえます。

未熟だから面接で聞いたらいけないことを質問してしまったではすまされません。面接をするということは会社の顔となります。面接で聞いたらいけないことは頭の中に入れて面接しなければなりません。

4 他の業務が忙しいときは?

他の業務が忙しいときには採用担当まで手が回らない場合もあります。この場合には採用担当の業務を細分化していきます。電話応対、書類選考、採用面接、面接選考など他の人が対応できるようにしておきます。

Ⅲ 中小企業こそ採用は慎重にならなければならない

中小企業は大企業とは違い採用専門の人を立てるほど余裕はありません。そのため他の仕事をしながら採用担当者を兼ねることがよくあります。その採用担当者が十分な経験・ノウハウがない状態で求職者の対応をすることは会社にとって様々なリスクとなりえます。

一番いけないパターンは採用したい人が採用できないというリスクよりも採用すべきでない人を採用してしまうリスクです。採用面接でいかにして面接を行うのかが重要になってきます。

会社の規模が大きく何人も社員がいる会社である場合、仮に採用してはらない人を採用したとしても影響力は小さいです。しかし中小企業においては、採用してはならない人を採用してしまうと影響力はかなり大きいです。会社組織が崩壊してしまうこともありえます。

だからこそ採用担当者が兼任で採用に割ける時間があまりない場合であっても社員を採用するには慎重にならなければならないのです。

Ⅳ リスクを最小限にするためには

採用担当者が兼任している場合、書類選考は別の人が行ったり、面接はさらに別の人が行ったりすることがあります。その場合であっても採用担当者の気分次第で採用できなかったりすると会社にとって損失になります。

このリスクを回避するためには採用業務を一定水準保つことです。採用担当者が誰であっても採用業務が行えるようにマニュアル化することをお勧めします。


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