落ちこぼれを絶対に出さないアンサンブル団体 Ensemble Medem代表 江島直之
こんにちは!note更新担当のたぬ子です。
今回は、愛媛県松山市・新居浜市で発足した弦楽アンサンブル団体 Ensemble Medem代表 江島直之さんに、団体を立ち上げられたきっかけや、今年の抱負などお伺いしました。
音楽は諦めなければ、やりたいと思えば誰でもできる!
― Ensemble Medemを立ち上げたきっかけを教えてください。
僕が愛媛県と関わりを持つようになったのは、2018年ぐらいからなんですけど、それまでも岡山で大人のアンサンブルやジュニアオーケストラを指導していて。そういう場があることによって、地域の文化レベル向上に繋がると感じたので、松山を中心に愛媛県でも同様の場を作ることで、愛媛県全体の文化レベルが向上すればと思いEnsemble Medemを立ち上げました。
愛媛にも音楽のアマチュア団体はあるんですけれど、入団するとすぐに交響曲などを演奏するので、ある程度の演奏レベルがないと団体に入るのが難しいんです。アンサンブルに参加したいけれどレベルが…という方は結構いらっしゃるので、そういう方々の救済の場となればいいなと思っています。
それでいて、楽しいだけではなく学ぶことは学んでいただいて、演奏レベルが上がった時にほかの団体へ移ってもいいし、Ensemble Medem全体のレベルが向上していけば、難しい曲にもチャレンジする体制に変えていければいいですね。
― そういった考えから、Ensemble Medemは“落ちこぼれを作らないアンサンブル団体”と紹介されているのですか。
音楽は、誰しもが隔たりなく楽しめるものだと思われているんですけど、実際に「アンサンブルしたいな」となった時、できる場所が限られるんですよね。これは地方も都会も関係ないです。
元々アマチュア音楽団体は、学生オーケストラの流れでOBやOGが始めることが多いんですよね。一般の大学で4年間音楽をされている方は、どこの音楽大学よりもはりきって活動されていたり、勉学よりも音楽に時間を費やしていることが結構あって、アマチュアの中ではある程度弾けるんです。そうなると「未経験者はどうなるの?」という話で、入団してもなかなか付いていけなかったり、そもそも入団できないんですよね。そうなるともうアンサンブルする機会がなくなってしまうので、そこをどうしたら良いのかと。
せっかく関わりを持てた県なので「音楽は諦めなければ、やりたいと思えば誰でもできる!初めて楽器を触った人でも、何かしら音楽と関わりが持てる場」を目標としています。
平均値より下にしっかりと受け皿を作るので、弾ける方が来られたりすると「物足りないかな」と、思うかもしれないですけど、そこは僕たち指導者がその人たちに合う対応をしながら、できるだけ吹きこぼれも出ないようにしています。それでも、吹きこぼれよりは落ちこぼれるほうが多いので「落ちこぼれを絶対に出さない」というのは、ずっと思っていることですね。
音楽、生演奏、本気で取り組む大切さを感じでほしい
― 設立されて2年目、今年の抱負や意気込みを教えてください。
コンサートをすることによって、音楽の力をより一層訴え、メンバーにもより理解をしてもらい、音楽の大切さ、生で演奏することの大切さ、そして本気で取り組む大切さをメンバーを通じて、皆さんに音楽で提供できたらいいなと思っています。今年はそれを一人でも多くの人に感じてもらえる団体になればいいですね。
世代の隔たりなく楽しめるプログラムづくり
― コンサートのプログラムは、江島さんが考えられるのですか。
練習をしながら、講師の妻と2人で決めましたね。
モーツアルトのアイネクライネナハトムジークやベートーヴェンの交響曲第5番は、キャッチーでよく知られているんですけれど、Ensemble Medemはクラシックをやるというよりも、クラシックな楽器を使って“音楽”を楽しむというところに重きを置いていますので、無理なくみんなで楽しめるようなプログラムを組んでいます。
音楽活動を通して、いかに”音楽家の価値”を示すか
― 江島さんが、音楽活動の芯としているものは何ですか。
演奏活動、指導、アウトリーチ全ての音楽活動において、僕が大事にしていることは“音楽家の価値”をいかに示すかですね。これが1番の課題であり、そのために音楽活動をしています。
僕たちの職業は、目に見えないものを提供しているので、価値を見出しづらいんですよね。ドイツのように音楽家に国家資格があると価値が分かりやすいですが、日本は芸術に対して免許がないので、まずプロとアマチュアの線引きをどこでするのかが難しい。
都会は、プロとして活動する場が多くあるので、アマチュアと棲み分けができているんですけど、地方に行けば行くほどその線引きが全くない状態です。それ故、学校公演の際に「普段は何のお仕事をされていらっしゃるんですか」と言われることが多いです。要するに、社会から”音楽は趣味”と見られているんですね。
子どもたちのレッスンでも「音楽は趣味で」と、親御さんからよく言われます。僕たちのように、音楽を仕事にしている”音楽家”という職業を知っていたとしても「音楽で生活していける人は一握り」と、子どもがプロになるとは考えないんです。不景気の今、安定した生活を送れる職業の方が安心ですよね。だから、音楽家は減る一方なんですよ。
音楽は、遥か昔から受け継がれて現代の僕たちが演奏し、未来へ受け継いでいくものなので、次の世代の子たちが音楽で生活できる社会づくりのために、僕たちは”音楽家の価値”を示していきたいです。
先月末のEnsemble Medemのコンサートも、メンバーにプロの重要性を理解してもらうために、予算を切り崩してあえて各パートにプロを1人ずつ入れんですよ。実際に演奏しているメンバーが、プロの重要性を理解すれば「プロとは、お金を支払うだけの価値があるんだ」と、”音楽家の価値”を認識してくれますよね。そして、メンバーからほかの人へと”音楽家の価値”が伝わっていく。
今はこうして、少しずつでもプロの音楽、プロの居場所を理解してもらうことに、力を注いでいます。
僕たちの世代で絶滅危惧種ですが「音楽家の仕事は夢あるんだ!」と思ってもらいたいし、実際に「音楽家という職業はいいものだなあ」と思える、そんな社会を作ることが僕の死ぬまでの目標ですね。
1人ではできなくても、みんなと一緒ならできる
― 今後愛媛でやりたいことを教えてください。
「1人ではできなかったことも、みんなと一緒ならできることがある」と伝えていきたいです。Ensemble Medemは自分が弾けていなくても、ほかの人が音を出してくれているから、一緒に一曲弾けたように感じるし、演奏会を経験することができる。団体だからこそ夢見れる部分ってあるんです。それは怠けているのではなくて、できないこと数えても仕方がないから、適材適所でできる人ができることをやって、お互い助け合いながら1つのものを完成させているんですね。
先月末のコンサートでは、高校3年生から80代の方が演奏していましたけど、スポーツでそれだけの年齢差があったら1つのチームになるのは、無茶でしょ。でも芸術は、年齢差を超えて一緒になって1つの作品ができるんです。
そして音楽は、目に見えない代わりに耳で聴かないといけない。耳で聴くということは、誰か相手がいて発信してくれないと絶対に届かない。だから、確実にそこで対話が成り立つんですよ。そうすると、人と関わらざるを得なくなるんですね。
コロナ禍で、人と人が関わりが無くなってしまって、寂しかったり、心の支えが無くなったり、様々な想いを持った方がたくさんいたと思うんです。そんな状況を越えた今だからこそ、Ensemble Medemの練習の中やコンサートを通して「やっぱり人っていいな。一緒にものづくりをしていくのは楽しいな」と、改めて実感してほしいです。
絵しりとり バンド ⇒ 道○○
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