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「万全な体制」という幻想

「そのべさんにお願いしてよかったです」
「そのべさんとこの仕事でご一緒したいです」

そのようなお知らせが相次いでいて、僕は嬉しいと同時に、もっと良い仕事をしよう!、という気持ちが高まっています。誰かの役に立てるって、素晴らしいことですから。

でも、思えば2018年は、仕事をするには決して良いコンディションではありませんでした。だからこそ、このように評価いただけるのが、飛び上がるほど嬉しいんです!

■仕事する時間があるって、当たり前じゃない

今年は、昨年から続く妻の産後うつのケア、息子(0歳)のお世話、睡眠不足でまとまった仕事時間を確保しにくかったのです。仕事をする時間があるのは当たり前じゃない、1日8時間働けることは幸せなことなんだと痛感しました。

4月からは保育園に通い始めたものの、集団生活で風邪や結膜炎をもらってくる、いわゆる「保育園の洗礼」を受け、5月の約半分は欠席。同じ頃には妻が肺炎でダウンし、僕はダブル看病の日々を送りました。

もちろん、仕事はスローペースです。日中は看病があるので、息子の午前寝と昼寝の間に仕事をします。残りは夜に息子が眠った後に行ったのですが、これは体力勝負でした。

「なんで電話に出ない?」→「出ないんじゃない、出られないんだ!」

一番感じたのが、周りの人との時間軸の違いです。たとえば、今年3月の段階で僕が仕事に使える時間は午前10時〜11時、午後1時〜3時、午後9時以降といった具合でした。その時間外に来た電話には出られませんし、メールやメッセンジャーへの返信はできません。

人によっては仕事の電話にはすぐに出て、止むを得ず応答できなかった場合には速やかに折り返すのがマナーだ、と思う方もいます。僕はことごとく電話に出られなかったので、取引先の方から「なぜ電話に出ないのか?」と強い口調で指摘されたこともありました。返信が遅いことで連絡が途絶えた人もいました。

確かに僕の対応は失礼だったのかもしれませんが、僕には僕の事情があるわけで、仕方がない。「電話なんてなくなってしまえ!」と、何の罪もないのに電話を責めました。まあ、落ち込みますよね。「ああ、仕事なくなっちゃったよ」って。

■いまの状況から最大限の力を発揮する

僕の仕事はライティングですが、何度やめようと思ったかわかりません。ライターは、ただ文字を書くのではなく、依頼者からの相談を文字で応えるコンサルみたいな仕事なんですよ、ライターって。コンサルとは、ややカッコつけた表現をしてしまいましたが。

書くのは最終段階であって、ターゲットの設定、企画、どういう内容にしたらいいか、どのような記事構成にするか、どんな写真を入れるか、など考える作業がたくさんあります。それらの作業には時間がかかることがあり、細切れでやるのが当時の僕には難しかったんです。いいところで息子が泣いたりして、中断が相次いでアイデアがふっとんだことも。

ああ、時間がない。
十分な時間がない。

毎日そんな悩みを抱えていたんですが、人って不思議なもので、そんな状態でも続けていると、限られた時間やいまの状況の中で最大限のパフォーマンスを出そうとするんですね。

変化を一番感じたのは、記事構成と切り捨て力。かつて僕はどんな情報をどう並べるか迷って原稿がなかなか書けなかったんですが、子育てして制約を受けるうちに「ええい、これでいけー!」という感じでスパッと構成を決められるようになったんです。

構成は言わば、記事の骨。骨さえ決まれば、あとは肉をつけていくだけなので、納品できるレベルまではいかなくとも、タイトルからリード、まとめまで一気に書けます。

骨ができていると言うことは、全体を頭の中でイメージできているわけですから、息子が昼寝する2時間や3時間あれば、バババっと書ける。万が一途中で起きても、僕には設計図があるから、中断した箇所から始めればいいだけです。

骨を決める時には、いらない情報をカットする必要もあって、その力はついたと思いますね。原稿だけではなく、生活の中でも「この連絡は放置」「これは明日レスすればよし」みたいな感じで、対応を瞬時に決めていく。

■理想的なコンディションじゃなくても、大丈夫

24時間を自分だけに使えていた時は、余計なことをたくさんしていたと思うんです。けれども制約を受けて使える時間が短くなることで、どうにかする方法を必死で考えるようになる。

以前の僕は、何かをする時には万全の体制じゃないとダメだと思っていました。たとえば、1日8時間寝て、毎朝カフェでその日にすることをイメージして、週末には必ず英会話カフェに行ってリフレッシュして…、という感じですね。しかし、いまの生活の中で、それらの状況を整えるのはけっこうな努力をしないときつい。

自分にとって理想的なコンディションではなくても成果を出す。僕は子育てをしながら働いてみて、僕が身につけるべきはこれだ!、と感じました。同時に、万全な体制じゃないと成果が出ない、という僕の考えは偽りだと確信しました。

いまも僕には不安なことがたくさんあります。今後も、理想とはほど通り環境で仕事に向き合うことがあるかもしれません。それでも、僕はそのコンディションでいい仕事をしてみせる。人の役に立ちたいし、世の中に価値を提供したいから。



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