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読書感想文 ビジネスの未来 山口周著


山口周氏の本は、相変わらず論旨がしっかりしているため、読み進めやすく、分かりやすい。

備忘録的に以下要約をしてみた。

資本主義は終焉する。
物質を求める資本主義は限界に近づきつつある。
戦後圧倒的な高度経済成長を達成した日本は、資本主義の限界に直面する早い国の一つ。
途上国を含めても、世界的な経済成長が続くことは考えられない。
直近の過去数十年が異常な状態であった。

IT革命によって、イノベーションは起きたが、GDPは増加していない。
なぜなら、パイを奪い合っただけだから。
例えば、改札口で切符を切るおじさんが自動改札によって、職を失ったケース。
これは産業革命によって、馬車が自動車に変わった例とは違う。
あの当時は、物質的な豊かさを求める必要があった。
現代では、マーケティングをすることで本来、必要としていない欲望を作り出し、需要を掘り起こしているだけ。
収益の大半が広告費であるyoutube の台頭によって、紙媒体がメインであった日本の交互業界の売上は7%近く低下した。

以上のことから、経済は無限に成長せず、限界が訪れる。


一方で、高度経済成長期からみると、日本人の幸福感は増加している。
失われた数十年と否定的な枠組みで語られる時代を経ても、現在のほうが幸福度は上昇している。
この事実は、日本人の多くはもはや物質的な豊かさを求めていないということ。

経済指標の枠組みで使われているGDPはどれくらいのモノを作れるかの指標。
飽和化している現代に当てはめる指標としてふさわしくない。

では、経済成長や物質的な豊かさを求めるという今まで当たり前であった目標を失った今、どのような目標を立てれば良いのか。

それは、幸福を感じることのできる社会。
そのために

 ベーシックインカムの導入
誰もがイノベーションを実現できる環境
GDPに変わる新たな指標の導入

を提言している。


 経済成長の延命措置にそろそろ終わりを告げよう。一人一人が幸福を感じることのできる、労働そのものに喜びを感じることのできる仕事にとりつける社会の構築を。


以上のような内容だと思う。


読んだ感想は、
労働に喜び、幸福を見いだせる社会は間違いなく素晴らしいと思う。
毎日が充実している、創造的な取り組みに勤しみ誰かが認めてくれる、そんな毎日を過ごしてみたい。
そして、今後そのような生き方を実現できる人々は増えてくるのかもしれない。

ただし、たとえベーシックインカムを導入したとしてもすべての人がそのような状態にたどり着けるのであろうか。
誰もが抱くであろうこのありきたりな疑念がまとわりついた。

いわゆる汚れ仕事や身体的、精神的に追い詰められる仕事をせざるを得ない人だっている。
そのような人々がいるおかげで、社会が成り立っている面は少なからずある。
ベーシックインカムが導入されたら、そのような職に就く人はいるのであろうか。
それとも、そのような職に対しては、半ば強制的に従事させられるのだろうか。
もしくは、そのような仕事ですら魅力的に感じられるような時代が訪れるのであろうか。
将来的には、労働の概念が変わり、労働することの価値が上がり、どんな仕事であれ働くことが真の幸福であると感じることのできる時代がくるのかもしれない。

価値観の変化は、時代が変わらないと分からないであろう。


いずれにせよ、考えさせられる内容だった。
疑念は残るものの、著者の作品は読んでいて面白い。
読ませる力は相変わらずのクオリティ。


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