フィクションなの?実話なの?
遅ればせながら、村上春樹さんの「一人称単数」を読みました。
私は、彼の短編は好きで、発売されたら必ず読んでます。
「一人称単数」は以下8つのストーリーで構成されています。
石のまくらに
クリーム
チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ
ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles
『ヤクルト・スワローズ詩集』
謝肉祭(Carnaval)
品川猿の告白
一人称単数
タイトルが「一人称単数」というだけあって、一人称で語られています。
個人的に一番好きだった作品は、「ヤクルトスワローズ詩集」です。
当時のヤクルトスワローズの絶望的な弱さや人気のなさが、愛情ある表現とともに語られています。
また、ご自身の経歴とスワローズの歴史に何らかの縁を感じているようで、著者がいかにスワローズファンであるかが伝わってきます。
小説というよりも村上春樹さんの自伝的エッセイと言っても良い内容です。
そして、8つの物語の中で私がキーポイントだと思ったのもこの「ヤクルトスワローズ詩集」です。
この話が挟まれることによって、それ以降の物語も村上春樹さん自身の体験を書いたのではないかと思いながら、読んでしまいました。
実際に、「ヤクルトスワローズ詩集」より前のストーリーは、学生時代のころの話がメインで構成されています。(後日談はあるにせよ)
逆に、以降のストーリーは今の村上春樹さんに近い年齢のストーリー設定になってます。
そして、村上春樹さん自身のプロフィールに沿ったような人物設定になってる気がします。
ふと気になって、「ヤクルトスワローズ詩集」を今持っている人はプレミア価格がついてるのではないかと思って、google検索しました。
どうやら、自費出版した「ヤクルトスワローズ詩集」なるものは実在してないようですね。
ストーリーのどこまでが実話なのか興味がそそられます。
小説として読むのか、エッセイとして読むのかどちらが正解なんでしょうか?
あくまでも、小説の体ながらも、実話かもしれないって思わせるドキドキ感を抱かせてくれることを狙ったのではないかと勝手に解釈して楽しんで読みました。
そういう意味では、今作品は村上春樹ファン度が強い人ほど楽しめる作品に仕上がってるのではないかと思いました。
なぜなら、村上春樹さんを好きな人ほど彼のプロフィールに詳しいから、ストーリーに対して、より一層創造力がわくはずだからです。
フィクションと現実をあいまいにして行き来しているって構成が素敵でした。
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