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読書感想文 人間における勝負の研究 米長邦雄著

米長邦雄さんはきっと柔軟性があり、器の大きい人。
本書を読んでそう思った。

この本を読もうと思ったきっかけは、
困難な局面で勝負師はどのような決断を下しているのか、
普段の意思決定をするうえで参考になる部分があるのではないかと思ったから。


内容は将棋の世界での勝負だけでなく、
人生全般について書かれており、
将棋に詳しかろうが、疎かろうが読む人を選ばないはず。

タイトルに「人間における」というフレーズがつけられているのもそういう所以であろう。

実際、わたしもはさみ将棋くらいしか打てない。


わたしたちは、正しい決断は絶対にこれしかないとたった一つの正解を追い求めがちだ。

だが、残念なことに一番正しいものでなければダメだと考えていると、
どんどん硬直化して視野が狭くなる。
創造力や先見性は生まれてこない。

なぜなら、自分自身が一番正しいと思う判断の基準になっているのは、すべて過去の経験からくるものだから

一方で、米長さんは正解よりも経験を積むこと視野を広げることを大切にしている

高校へ進学した理由は、将棋だけの世界に若いころから身を投じると、
バランスが崩れるのではないか。という長期的視点にたって決断をしているのだ。


この考えは、はじめて何かをするとき、特に心にとどめておきたいものだ。
はじめての転職、はじめてのお店、はじめてのデート、緊張する。
どれが正解なんだろうと考えると、分からなくなってしまう。
視野が狭くなっても行動できれば、まだまし。
動けずじまいになってしまうことが最悪。


どうして、動けずじまいになるのだろうか?
唯一無二の正解があると思い込んでいるからであろう。

正解にこだわるよりも経験をしながら、ちょっとずつ前に進んでいくことが大事なのだ。


似たような考え方が将棋の勝負においても出てくる。

戦いというのは、相手にどこまでなら点数を与えても許されるか、つまり許容範囲で捉えていくという発想が大切。

「一番正しい」を求めてないのだ。
相手に勝つという想いは前提にあるにせよ、新鮮な考え方だと感じた。

不確実性の時代だと言われている現代社会にとって、大変役に立つ考え方だ。


将棋をする人、しない人問わず読んでみる価値のある一冊。






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