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Effectuation起業をビジネススクールで教えることはできるのか?

こんにちは、広瀬です。今回は日本語版ハーバード・ビジネス・レビュー誌より、「起業をビジネススクールで教えることはできるのか?」についてコメントしてみたいと思います。
私は英語版ハーバード・ビジネス・レビューにサブスクライブしていますので、全ての英語版論文にアクセスできます。そこで「effectuation」でサーチをかけ、どのくらいの人がEffectuationについて論文を書いているか調べてみたところ、なんとヒットしたのはこの論文1本だけでした。そして、英語版のタイトルを和訳してネットを検索したら表題の論文が見つかったという次第です。幸いなことに、私がオンラインで勉強したバージニア大学ダーデン経営大学院の事例も出ていましたので、最後にエフェクチュエーション推しのコメントを入れてあります。
この論文は2024年6月17日(月)の時点で、誰でも読めますので、このNoteでは論文全体の要約と3つのビジネス・スクールで教えている事例に焦点を当てて書いています。私の論文要約で更に興味を持った方は、実際の論文を読んでみて下さい。


論文の要約

本論文では、感染症の流行による不確実性の増大に伴い、従来のビジネススクールでの起業教育のあり方が見直されている現状について論じています。多くの成功した起業家はMBAを持っておらず、大学を卒業していない人も多いため、ビジネススクールが現代に適応するためには、新しい教育アプローチが必要とされています。特に「エフェクチュエーション」と呼ばれるリソースベースのアプローチが注目されています。本稿では、3つのトップビジネススクールの事例を通じて、起業家精神を育むための新しい教育法を探求しています。

3つのビジネススクールの事例と特徴

1.トロント大学ロットマンスクール・オブ・マネジメント

  • アプローチ: 「手術室」のような教室で実体験の価値を重視

  • 特徴:

    • 教室を医学部の公開手術室のように改装し、学生がスタートアップ企業を「手術」する教授の様子を観察。

    • クリエイティブ・ディストラクション・ラボでは、有名起業家たちがスタートアップ企業を徹底検証し、学生が直感的な起業スキルを学ぶ。

2.バージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネス

  • アプローチ: エフェクチュアルな起業

  • 特徴:

    • 学生がすでに持っているリソースを認識し、リスクを受け入れるマインドセットを養成。

    • 競争よりも協働によるイノベーションを重視し、仲間と多様な洞察を共有しながらベンチャーを共同で設立することを推奨。

筆者注釈:
論文ではエフェクチュエーションの5つの原則の記述はありませんでしたので、論文内の言葉で要約していますが、行間を読むとBird-in-Hand、Affordable Loss、Crazy Quilt、Lemonade、Pilot-in-the-Planeの各原則の内容を読み解くことができると思います。

3.ペンシルバニア大学ウォートンスクール

  • アプローチ: 従来型のリソースタイプとリスク最適化アプローチ

  • 特徴:

    • 発表済みの学術論文に基づく分析モデルやツールを学生に提供し、起業家精神を教える。

    • 成熟期にあるスタートアップの落とし穴を避けるための方法を教育するが、不透明な状況には不適応なこともある。

結論

現代の複雑で不確実なビジネス環境に対応するためには、ビジネススクールも変革が求められている。特に「エフェクチュエーション」のようなリソースベースのアプローチが有効であり、未来のリーダーたちは予見できない将来の不確実性を受け入れ、創造力を発揮して適応する能力を持つことが重要です。ビジネススクールは、新しい教育原理を取り入れ、次世代の起業家やビジネスリーダーが困難に立ち向かう力を養成するべきです。

エフェクチュエーション推しのコメント

現代のビジネス環境は急速に変化し、予測不可能な出来事が次々と起こります。このような状況において、私たちが未来のリーダーに求めるべき能力は、従来のビジネス教育が提供してきたものとは異なります。その中で、バージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネスの事例が特に注目に値する理由についてお話ししたいと思います。

ダーデンスクールが取り入れている「エフェクチュエーション」のアプローチは、従来のリスク最小化を重視するビジネス教育とは一線を画しています。エフェクチュエーションは、学生がすでに持っているリソースを最大限に活用し、ある程度のリスクを受け入れることを促すものです。このアプローチは、現実の起業家精神に根ざしており、予測不可能な未来においても俊敏かつ柔軟に対応できるリーダーを育成します。

さらに、ダーデンスクールは競争よりも協働の力を重視しています。ビジネス界はしばしば激しい競争に満ちていますが、イノベーションは多様な視点や洞察を取り入れることで生まれることが多いのです。ダーデンスクールのプログラムは、学生が自分のアイデアを仲間と共有し、共同でベンチャーを設立することを奨励しています。これにより、学生は一人では解決できない問題にも立ち向かう力を身につけることができます。

現代のリーダーには、未知の困難に直面しても創造力を発揮し、適応し、迅速に行動する能力が求められます。ダーデンスクールの教育アプローチは、まさにこのようなリーダーを育成するためのものであり、不確実性が高まる現代において非常に適しています。これからの時代にふさわしいリーダーシップを育むために、ダーデンスクールのエフェクチュエーションのアプローチが広く認識されることを願ってやみません。

私が受講したサラス・サラスヴァシー教授のコース内容はこちらをご参照下さい。英語は避けて通れませんが、チョットでも英語に自信がある方はチャレンジして下さい。

今日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。皆様の独立・起業や新規事業立ち上げの参考になれば幸いです。

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