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Effectual Business Modeling Method 起業アイデアを具現化する方法(2)

こんにちは、広瀬です。今回は前回に引き続き、Effectual Business Modeling Methodについて、Effectuation Business Canvas(以下、EBC)に具体的なケースを当てはめて説明し、EBCを使用することのメリットをお伝えしたいと思います。

前回のストーリー

EBCのケーススタディー

それでは、外資コンピューターベンダー働いているAさんの独立・起業のアイデアをEBCに描いてみたいと思います。独立・起業のアイデアはBird-in-Handの3つのWとAfforable Lossに分解され、EBCにマッピングされます。
まずはAさんのバックグラウンドが無いとBird-in-Handと話がリンクしないので、以下に経歴を説明します。

Aさんのバックグラウンド

Aさんは現在は外資コンピューターベンダーで様々な企画の仕事していますが、IT開発現場が自分には適任との思いから、今までの経験と知識を活かして独立・起業を考えています。当面は一人で個人事業主/フリーランスとして活動するか、個人との契約に対応できない企業に備えて株式会社を設立しようか悩んでいます。仕事の内容は昔とった杵柄の、ITコンサルタントとして昔のように幅広く活躍しようと思っています。

  • 外資コンピューターベンダーで開発、SE、プロジェクト管理、ITコンサルタント、新規事業立ち上げ、事業企画を20年間にわたり幅広く経験

  • TOEICスコア840点

Bird-in-HandとAfforable Lossの棚卸し

前回紹介したExcelの表に書き込みをしながら、Aさんの3つのWを棚卸しし、最後にAfforable Lossを棚卸ししていきます。実際に書き込みが終了した表を以下に示します。

AさんのBird-in-HandとAfforable Loss

この書き込みが終わると、自動的にEBCが出来上がります。以下に、AさんのEBCを示します。前回提示した表よりも各セルの幅を長くしています。また、What can I do?のセルには出来上がったEBCから、Aさんの強み/弱み/隠れた可能性が書けるように手を加えてあります。

AさんのEBC

想定製品/サービスの提供可能性

AさんのEBCができましたので、Aさんが考えているITコンサルティングのサービスが想定顧客に提供可能なのか否かを見ていきたいと思います。参考までに、前回示した各マスに番号が振られたEBCを以下に示します。

  1. ①想定製品/サービスは②製品/サービス知識をバックグラウンドとして、③想定顧客に提供する
    → バックグラウンドの知識は十分にありそうである

  2. サービスの提供方法は④営業チャネルである
    → この営業チャネルでは、知り合いや同業者からの紹介や依頼が無いとサービスを提供できない(Crazy Quiltで要検討課題)
    → 知り合いや同業者から紹介や依頼があっても、単発・短期の仕事では先々不安である(Crazy Quiltで要検討課題)

  3. ③想定顧客との関係構築は⑤顧客関係性の構築である
    → 特に問題はなさそうである。場合によってはサービス提供期間中は想定顧客先に常駐することもありうる

上記のレビューにより、想定製品/サービスの提供実現性に関しては、サービス提供するための④営業チャネルの弱さが指摘できます。

想定製品/サービスの実現可能性

次に想定製品/サービスの実現可能性を見ていきます。

  1. ①想定製品/サービスを②製品/サービス知識をバックグラウンドとして、⑥主なリソースを用いて③想定顧客に提供する
    → バックグラウンドとなる知識は十分にありそうである
    → 主なリソースは全て自分の手元にある

  2. ①想定製品/サービスは⑦主な事業活動を通じて提供され、適宜改善も行われる
    → 全ての事業活動は列挙されているが、内容によっては一人作業に無理が生じるかもしれない(想定顧客との調整が必要かもしれない)

  3. ⑧主なパートナーは①想定製品/サービスの提供や⑦主な事業活動に協力していただくパートナーである
    → パートナーが知り合い同業者だけというのも少ない気がするが、追々パートナーは増やしていく必要がありそうである(Crazy Quiltで要検討課題)

上記のレビューにより、一人でITコンサルタントとして仕事をする可能性は十分にありそうです。しかし、主なパートナーをもう少し増やすことにより、パートナーと協業してより大きな仕事ができるようになるかもしれません。

Affordable Lossの評価

  1. かかる費用は生活費+αで十分に許容可能な損失の範囲内である。

  2. 会社設立に必要な資本金は、まずは個人事業主/フリーランスとして独立し、その後様子を見て会社設立しても遅くはない。

  3. 当初から個人とは契約できない法人から仕事の依頼があったとしても、契約期間と想定売上を熟慮して会社設立は判断すべきである。

⑩What can I do?

強み:仕事が来れば想定サービスは実施できそうである。
弱点:営業が弱い。お客様を探さないと仕事が来ないパターン
   → Crazy Quiltで相談
   → 当初から会社設立するかどうかもCrazy Quiltで相談
隠れた可能性
1.企業IT戦略、経営戦略、マーケティング戦略の知識を活かし、
 ユーザ企業のCIO補佐官もできるかもしれない。
2.新規事業立ち上げや事業企画の経験もあるので、IT業界の新規事業立ち
 上げのような経営に近い仕事もできるかもしれない。
3.英語ができるので、国内の外人に対応する仕事もできるかもしれない。

EBCでビジネスの強み/弱み/隠れた可能性が見えてくる

いかがでしょうか? このケーススタディーから、Aさんの強み、弱み、隠れた可能性が見えてきたと思いませんか? ⑩What can I do?の内容からも、Aさんが今の段階で独立しても大丈夫か否かを判断できます。 私は自分の経験から、この状態でAさんが独立しても営業面が弱すぎるので悲惨な思いをするだけだと思います。コンサルタント業は経験と知識があれば誰にでもできる仕事ですが、自ら営業して顧客を探して契約を取ることは、誰にでもできる仕事ではありません。まずはもう一度Bird-in-Handを見直すか、Crazy Quiltとして会社の同僚、同業者の知り合い、その他今後関わり合いがありそうな方々と会話することをAさんにお勧めします。その時の会話で得られた知見はLemonadeの原則としてメモっておき、今後の改善課題や行動指針に役立てましょう。弱みが強みに転じればさらに強くなり、隠れた可能性を見直せば事業の幅の広がりが見込めます。

今回はEBCのケーススタディーと、出来上がったEBCから事業を立ち上げようとしている人の強み、弱み、隠れた可能性が見えてくる、と言うお話をさせていただきました。EBCを使用することのメリットをご理解いただけたことと思います。次回はEBCが中核にあるEffectual Business Modeling Methodの全体像のお話をしたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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