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純文学と一般文芸の違いは"何でもアリ"を許すかどうか(読書案内)

純文学って尊いイメージがあり敷居が高そうですが、そんなことはありません。

記事に目を通して、応募する賞の参考になれば幸いです。
ちなみに直木賞は一般文芸の中堅作家、芥川賞は純文学の新人の賞です。

純文学の大御所である村上春樹が貰えないのはそういう事です。

売れるのは難しい、書くのは一番ラク

純文学と一般文芸の違いって何でしょう?

純文学には深いテーマがある?
純文学はメッセージじゃなく問題提起?
純文学は読者ウケを狙わない?
純文学は作者の魂そのもの?

全部違います。

むしろそういった不文律をフルでシカトするのが純文学です。
ルールや形式は一切不問。
格闘技なら"目潰し金的何でもアリ"みたいなもんです。

すべて自由。放送禁止用語もしばし出てきます。

でも権威主義的な文壇の存在で、一般の人にも"なんか難しくて深そう"という認知が広まってて、それを何とか崩していきたいなと思うこともあります。

実は書くだけなら簡単、でもウケるのは難しいです。

純文学畑から始めて一般文芸に移ってきた書き手の意見として参考になれば嬉しいです。

純文学の実例と書き手と読者

高橋源一郎という純文学作家のデビュー作「さようなら、ギャングたち」から引用します。

床を掃いていたわたしは「わけのわからないもの」が落としていった「わけのわからないもの」の断片を見つけた。

 それは、ひらひら、ゆらゆら、ぐちゃぐちゃするだけな変なかたまりだ。
 わたしはほんのちょっとだけ考えると、そのゆらゆら、ぐちゃぐちゃするものをくずカゴに放り込んだ。

 実は、「わけのわからないもの」の正体が何なのか、わたしにはわからないのだ

わけがわからないですね。

通しで読んでみると、比喩や情景描写、同情人物の魅力、ストーリー展開といった一般的文芸に求められるものをガン無視しています。

...さて、純文学とは?

深いテーマがある?
→どうでもいい

メッセージじゃなく問題提起?
→どうでもいい

読者ウケを狙ってない?
→狙ってないけど実力ある人にニッチなファンがいる

作者の魂そのもの?
→どうでもいい

そういうワールドです。
好むのは、ホヤの刺身とかクサヤとか食用のフジツボを食べるマニアたちです。
たくさん読書を重ね、一般文芸じゃ物足りなくなった通とも言えます。

結果的に、一般文芸に求められる要素を生み出せない、あるいは興味がない。そういう書き手の最後の砦にもなっています。

もちろん一般文芸寄りの作品もありますが、より純文学"らしさ"を味わいたい人におすすめの本を紹介します。

作品紹介

"作品が理解できないのは自分の力不足"

そういう考えは間違ってると思います。

面白ければ面白い。つまらなかったらつまらない。小説って楽しむために読むもので、そんな高尚なものではないです。

円城塔『これはペンです』

SF系の純文学です。
文學界新人賞でデビューしその後も描き続けている人です。
これは芥川賞候補作になり、次の作品『道化師の蝶』が受賞しています。最終審査で石原慎太郎がこき下ろしたそうですが、そちらもオススメです。

てかこれ、少し昔の作品なのにAIによる文章作成というホットな話題に触れています。
理系の人は好きなんじゃないでしょうか?

夢野久作『ドグラ・マグラ』

言わずと知れた世界三大奇書のひとつ。
何でもアリの真骨頂で、かなり読者を選びます。
分類するならミステリ系純文学ですね。
読んだら発狂する、とも言われてますが、そんなわけあるか。

埴谷雄高『死霊』

しれい、と読みます。
スケールのデカさでワールドチャンピオンです。

いきなりブッダやら神様やらが現れ対話を始めますからね。

講談社文芸文庫というレーベルは純文学のトップクラスの作品を文庫化しているので、本屋で見かけたら漁ってみてください。高いですが装丁が綺麗です。
...なぜかビレッジバンガードにも置いてあります。

ジェイムス・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』

世界で最も訳のわからない、翻訳不可能と言われた奇書です。
現代音楽みたいな小説で、一ページ目で挫折する人がほとんどです。
誰かチャレンジして感想書いてください。

ヘンリー・ダーガー『非現実の王国で』

世界一長い小説です。
約15,000ページ。ギネスブックに載っています。
小説として翻訳されていません。

精神病院で亡くなった人の遺稿だそうです。
"何でもアリ"ってのはマジでなんでもありなんです。

書くのは簡単

結局、何書いてもいいんです純文学。

一般文芸に多かれ少なかれ必要な"お約束"に飽きた人は、プロットも何も立てずに、フィーリングでとにかく書く経験も大事なのかなと思います。

読書家の方、書き手の方、たまに気分を変えたいときはよろしくどうぞ。

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