江冬椎慶

えふゆーしーけー。 作家です。 つぶやきで書きます。

江冬椎慶

えふゆーしーけー。 作家です。 つぶやきで書きます。

最近の記事

仲間内でどんなに騒いでも、時おりあの子はつめたい火に灼かれるような孤毒にとらわれ、気づけば口を閉してる 俺にできるのは慰めでも励ましでもなく、彼女を慰み者にする奴らに目を光らせることけだ いつかあの子も誰かに言えるように 仲間は守るもんじゃなく、信じるもんだって -視界の隅で

    • 母親を憎むその子は、朝に会うといつも夢の話をする 昨夜はナイフで刺した、とか 「センセーが言ってた。夢は感情を捨てにいく場所だって」 俺はその男の顔も知らない 「俺だって捨てたいね」 勘弁してくれと、背中越しに思う 毎夜現れるなら、いつものその不機嫌な顔で来てくれないか? -水底

      • 幸せも不幸せも一日ごとに積み重なっていくのに、君はまるで一日ごとに失っていくのを恐れるように、くっちゃべる相手を探してる 指のすき間からこぼれ落ちる何かが見えるのは君だけで、隣にいる俺には孤独と焦燥の陰しか積み重なっていかない なあ、俺はまだ君の手のひらに乗ってるか? ー傍白

        • 血が温かくて何の役に立つ? 俺は腹が減ってんだ かじかむ指、エンジンの悲鳴、工業地帯を抜けた 君の見せてくれた優しさも傷も、時速160キロの風のなか、遠い過去へ吹き飛ばされる ラーメンが食いたい。しかもあの店じゃなきゃだめだ 抱きしめる相手はいない それが唯一の救いだ -冷たい手

        仲間内でどんなに騒いでも、時おりあの子はつめたい火に灼かれるような孤毒にとらわれ、気づけば口を閉してる 俺にできるのは慰めでも励ましでもなく、彼女を慰み者にする奴らに目を光らせることけだ いつかあの子も誰かに言えるように 仲間は守るもんじゃなく、信じるもんだって -視界の隅で

        • 母親を憎むその子は、朝に会うといつも夢の話をする 昨夜はナイフで刺した、とか 「センセーが言ってた。夢は感情を捨てにいく場所だって」 俺はその男の顔も知らない 「俺だって捨てたいね」 勘弁してくれと、背中越しに思う 毎夜現れるなら、いつものその不機嫌な顔で来てくれないか? -水底

        • 幸せも不幸せも一日ごとに積み重なっていくのに、君はまるで一日ごとに失っていくのを恐れるように、くっちゃべる相手を探してる 指のすき間からこぼれ落ちる何かが見えるのは君だけで、隣にいる俺には孤独と焦燥の陰しか積み重なっていかない なあ、俺はまだ君の手のひらに乗ってるか? ー傍白

        • 血が温かくて何の役に立つ? 俺は腹が減ってんだ かじかむ指、エンジンの悲鳴、工業地帯を抜けた 君の見せてくれた優しさも傷も、時速160キロの風のなか、遠い過去へ吹き飛ばされる ラーメンが食いたい。しかもあの店じゃなきゃだめだ 抱きしめる相手はいない それが唯一の救いだ -冷たい手

          男女の駆け引きは大の苦手だ でも俺よりヘタな子がいたのだ 通って店の外に連れ出そうとしたら、仕事だもんお金くれなきゃイヤと膨れ面 仕事でアブク銭が入り、高い酒を入れたら、煙草つけるのも忘れて喜んでた 明日にはこの町を出なきゃならない 10年先も夢見ていられるようにと願う -乾杯

          男女の駆け引きは大の苦手だ でも俺よりヘタな子がいたのだ 通って店の外に連れ出そうとしたら、仕事だもんお金くれなきゃイヤと膨れ面 仕事でアブク銭が入り、高い酒を入れたら、煙草つけるのも忘れて喜んでた 明日にはこの町を出なきゃならない 10年先も夢見ていられるようにと願う -乾杯

          ひとに興味がなかったガキの頃の唯一の記憶、いつも泣きべそかいてたクラスの女の子が、一度だけ教師に「ふざけるなくそやろう」って言ったこと バスケ部のキャプテンは変な宗教にハマったけど、その子はいま夜職でたくましく稼いでるってさ 俺はセッターをアメスピに変えたくらいかな -喫煙休憩

          ひとに興味がなかったガキの頃の唯一の記憶、いつも泣きべそかいてたクラスの女の子が、一度だけ教師に「ふざけるなくそやろう」って言ったこと バスケ部のキャプテンは変な宗教にハマったけど、その子はいま夜職でたくましく稼いでるってさ 俺はセッターをアメスピに変えたくらいかな -喫煙休憩

          方舟に乗れるサルのつがいは一組だっていうから、僕らはこの場所で夜明けを待っていた 彼女の赤切れだらけの指をそっと握り、僕は言った 君がこの手で乗り越えてきたいくつものストーリーをさ、今夜こそ聞かせてくれないか? 寒空の下、着ぶくれた二人は岩に腰かけて、ビールの缶を開けた -月夜

          方舟に乗れるサルのつがいは一組だっていうから、僕らはこの場所で夜明けを待っていた 彼女の赤切れだらけの指をそっと握り、僕は言った 君がこの手で乗り越えてきたいくつものストーリーをさ、今夜こそ聞かせてくれないか? 寒空の下、着ぶくれた二人は岩に腰かけて、ビールの缶を開けた -月夜

          …人は獣、牙も毒も棘もなく、ただ痛むための涙だけを持って生まれた… 僕が君を好きになったのは些細な歌詞の読み違えからだ 「いたむって言葉、痛みの方だったんだ」 惜しむらくは、幾十年がたち僕より先に逝ってしまった君の前で、その美しさをほめる歌が言葉にならないことだ ー墓前にて

          …人は獣、牙も毒も棘もなく、ただ痛むための涙だけを持って生まれた… 僕が君を好きになったのは些細な歌詞の読み違えからだ 「いたむって言葉、痛みの方だったんだ」 惜しむらくは、幾十年がたち僕より先に逝ってしまった君の前で、その美しさをほめる歌が言葉にならないことだ ー墓前にて

          駅前のガストで飯を頼んだら、AIで動く変な丸いロボットがハンバーグランチを運んできた 見ようによっちゃキュートだ。こいつはそこらの人間より賢く、丁寧な物腰でもめることもない上に、一つの難解な謎かけまで与えてくれる 俺は誰に「いただきます」を言えばいい? ーコンフォートアベイラブル

          駅前のガストで飯を頼んだら、AIで動く変な丸いロボットがハンバーグランチを運んできた 見ようによっちゃキュートだ。こいつはそこらの人間より賢く、丁寧な物腰でもめることもない上に、一つの難解な謎かけまで与えてくれる 俺は誰に「いただきます」を言えばいい? ーコンフォートアベイラブル

          クリぼっちの連中を集めた「寂しくなんかねぇよ会」の夜更け、皆ほぼ酔い潰れた席で俺は冗談めかしてある子に言った 「俺、お前のために他のやつら裏切っても平気だから」 長い沈黙の後、その子はやっと答えた 「…わたしも」 二人は共犯になり、俺は25日の朝に散々なじられた -X'mas

          クリぼっちの連中を集めた「寂しくなんかねぇよ会」の夜更け、皆ほぼ酔い潰れた席で俺は冗談めかしてある子に言った 「俺、お前のために他のやつら裏切っても平気だから」 長い沈黙の後、その子はやっと答えた 「…わたしも」 二人は共犯になり、俺は25日の朝に散々なじられた -X'mas

          中学の初恋の相手はピュアな天然系アスペの子で、いつも友達に囲まれてたが、卒業後は誰も連絡先を知らない ピアノを弾く時だけ柔道部男子の目つきになって、俺はずっと見惚れていたけど、皆何を見てたんだろう 笑顔?癒し?そこにいたのは神様に近い何かで、今だに俺の背筋を伸ばす -イエスタデイ

          中学の初恋の相手はピュアな天然系アスペの子で、いつも友達に囲まれてたが、卒業後は誰も連絡先を知らない ピアノを弾く時だけ柔道部男子の目つきになって、俺はずっと見惚れていたけど、皆何を見てたんだろう 笑顔?癒し?そこにいたのは神様に近い何かで、今だに俺の背筋を伸ばす -イエスタデイ

          先輩のケツに乗り集会に連れていかれた時のこと 江ノ島の出口が警察に封鎖され皆が覚悟を決めた時、OBの老けたオッサンがウィリーしながらバリケードに突っ込み、吹っ飛んでった 混乱のさなか、私らはみんな逃げおおせた カッコつける事しか頭にない人に弱くなったのはそれからだ -あでやかな男

          先輩のケツに乗り集会に連れていかれた時のこと 江ノ島の出口が警察に封鎖され皆が覚悟を決めた時、OBの老けたオッサンがウィリーしながらバリケードに突っ込み、吹っ飛んでった 混乱のさなか、私らはみんな逃げおおせた カッコつける事しか頭にない人に弱くなったのはそれからだ -あでやかな男

          「世界に一つだけの花は枯れるしかないさ。同種がいて交配して、はじめて生きてけるんだ」 俺はマスクを被る前の最後の一服をする 「あの歌は何が言いたいんだ?」 相方も手持ちのバールを点検してる 「勝つ手段は正攻法だけじゃないこと。今夜はトクベツになるぞ」 -ミッドナイトバンクロバーズ

          「世界に一つだけの花は枯れるしかないさ。同種がいて交配して、はじめて生きてけるんだ」 俺はマスクを被る前の最後の一服をする 「あの歌は何が言いたいんだ?」 相方も手持ちのバールを点検してる 「勝つ手段は正攻法だけじゃないこと。今夜はトクベツになるぞ」 -ミッドナイトバンクロバーズ

          近所のラーメン屋のBGMが、EDMからゴリゴリのギターロックに変わった 店員も髪型を変え、客にイジられるたびキレた 「モヒカン違ウ!コレハ、トロージャン!」 間違いない、日本は変革を迫られている 俺は静かに息を吸い込み、言った 「アブラニンニクマシマシ」 -俺たちはどう生きるか

          近所のラーメン屋のBGMが、EDMからゴリゴリのギターロックに変わった 店員も髪型を変え、客にイジられるたびキレた 「モヒカン違ウ!コレハ、トロージャン!」 間違いない、日本は変革を迫られている 俺は静かに息を吸い込み、言った 「アブラニンニクマシマシ」 -俺たちはどう生きるか

          とても芸達者な子がいて、感極まって涙する演技は誰の目も惹きつけた だから泣くなと教えた 涙を堪える演技はよりお客の胸を打つ 頭が良いのですぐに理解し、その子は更に魅力的になった 卒業式に告白されだけど断った その子はどんな顔をすればいいか途方に暮れてた なんだか泣けた -在処

          とても芸達者な子がいて、感極まって涙する演技は誰の目も惹きつけた だから泣くなと教えた 涙を堪える演技はよりお客の胸を打つ 頭が良いのですぐに理解し、その子は更に魅力的になった 卒業式に告白されだけど断った その子はどんな顔をすればいいか途方に暮れてた なんだか泣けた -在処

          音大を出てジャズを愛する私はJ-popとボカロに熱中するあいつに高説を垂れた ファストフードで満足するのはメディアに騙されてる証拠だ 「好きなら騙されたって構わないよ」 私はとっさに平手打ちをかまし、そこからは泣き言だった 一度も騙してくれたことなんかないじゃない -説教

          音大を出てジャズを愛する私はJ-popとボカロに熱中するあいつに高説を垂れた ファストフードで満足するのはメディアに騙されてる証拠だ 「好きなら騙されたって構わないよ」 私はとっさに平手打ちをかまし、そこからは泣き言だった 一度も騙してくれたことなんかないじゃない -説教