ここに来てあらためて深く刺さる『のだめカンタービレ』
この2週間でできたことといえば、『のだめカンタービレ』を全巻読破したことくらいだった。
ドラマ化・映画化された当時、これでもか!とハマりにハマった作品で、当時映画を10回くらいは観に行ったし、上野樹里ちゃんが演じた主人公ののだめちゃんと同じワンピースやコートを数着持っていた。
当時、なぜあれだけハマりこんだのかまでは理解できていなかった。が、数年ぶりに再読してみてよくわかった。わたしは、のだめ過ぎるんだ。
幼稚園の先生になることを夢見てただただ楽しくピアノを弾きたい音大生、のだめこと野田恵。隣の部屋に住んでいる同じ大学の千秋先輩に恋したことや、周囲がその稀な才能に気づき高みへ連れていきたいと望んだことで、音楽を極める道に進むことになる。
かなり極端なタイプだが、仲間意識しか感じない部分をいくつかピックアップしてみると、
・超!感覚タイプの偏愛タイプ
・好きな人への憧れが日々のモチベーション
・気分の波がはげしい
・片付け苦手
・夢見がち
などなど、挙げだしたらキリがない。しかも、本気でハマっていた頃よりわたし自身ののだめ度は確実に上がっていた。なんてこと…
改めて読んでみて、のだめに共感しかないのはもちろん、でこぼこだらけの登場人物も一人ずつ分かりみしかなかったし、自分の決めた道を究めるということがどういうことなのかはそれぞれの哲学があって、きっと一生の教科書のような存在なんだろうなと感じた。
そんな『のだめカンタービレ』のなかで、今のわたしが特に好きなセリフを3つ紹介したい。
1.楽しんで弾くので頑張って聴いてくだサイ
今回、突然のだめを全巻大人買いしなおして、超短期間で読破したきっかけになったのがこのセリフ。
初めてソロでのコンサートツアーを開催することになった愛して止まないアーティストに向けて、ツアー初日の朝贈りたい言葉はなんだろうと考えた。
初日おめでとうとか、頑張ってね、応援してるねっていうのは大前提。その上で、あえて言葉にして伝えるとしたら何だろうと考えて、思い出したのがこの言葉だった。
ステージに立つ人は、当日までにさまざまな準備をしてきている。細かな部分まであれこれ考えて試行錯誤し、考えられるベストな状態を披露する。
準備は十分にした出演者に当日わたしが望むことといったら、めいいっぱい楽しんでねってことだけ。ステージ上で心から楽しそうにしている様子を見られるのが、客席を埋める一人のファンとして一番うれしいことだと感じている。
作品中でこのセリフは、のだめが初のリサイタルを開くときの挨拶として登場する。「楽しむ」と「頑張る」が逆ではないかという反応もあるが、わたしは絶対これが正義だと思う。
ちなみに、わたしがツアー初日の朝に言葉を贈ったアーティストは公演ごとに「楽しい」「楽しいしかない」「楽しすぎて体感秒だった」などと繰り返していた。そんな姿を息を詰めて頑張って見届けることができて、わたしは幸せでしたよ。
関連して。オーケストラ指導だと細かいところをちまちま指摘する千秋先輩が、結局当日は「あとは楽しめばいいから」というところ。連弾をするのに散々ピアノの指導をして本番は「適当に…今日は自由に弾いていいから」っていうところもとても好き。
2.音楽を 人を尊敬してて それが自分に返ってくる
良い演奏をつくろうと千秋があれこれ指摘するほど音がどんどん悪く、小さくなっていくオーケストラ。それを、世界的な指揮者・シュトレーゼマンがタクトを振るだけでオケが鳴り出す。その場面での千秋の言葉がこれ。
指揮者は目立つけれど、決してえらいとかじゃなくて。むしろ、上からな気持ちをもってしまった時点でオケのメンバーと一緒にいい音楽なんてつくれないものなんだろう。
先にも紹介したわたしの愛して止まないアーティスト・えだくんは、コンサートの最終公演で「このコンサートは、愛でできていると思うよ」と言った。
昔から出演者もスタッフも分け隔てなく大切にしてきた彼。今ツアーでもダンサーの見せ場をたくさん作っていたし、MCでも必ず丁寧に紹介をしてきた。見えにくいスタッフの方々のしてくれたことも、何度も言葉に出して伝え、感謝を伝えてきた。
そういう彼だから、誰もが彼の「やりたい!」を叶えたくなってしまう。誰がえらいとかえらくないとか、そんなことはなく、ただ役割が違うだけ。それぞれの役割をプロ意識をもって果たす人たちをそれぞれ尊敬して、大切にしているからこそ、力を貸してもらえる。
彼の公演期間、何度も思い出したセリフはこれだった。
3.それでもオレはやっぱり 何度でもあいつをあの舞台に連れて行きたいと思うんだ
才能を感じる人が好きだ。
のだめも、千秋先輩も、えだくんも。今仕事で日々インタビューしてお話を聞かせてくださる各業界のいろーんな人も、みんなそれぞれの思いがあって、それぞれのステージで輝いていることを実感させられるばかりの日々だ。わたしから見たら、才能のない人なんて、いない。
これはきっとわたしの癖で、もっている才能をいかして頑張っている人に触れる度、何とかしたいと思ってしまう。
才能が生かされないこと。本人も気付かないまま眠ったままの強み。そういうのを発見する度もったいなくて、何とかその人のことを広められないかと思ってしまうし、見つかってほしいと願ってしまう。わたしがインタビューして記事書きたい根源はそこだ。
このセリフのシーンの直前、千秋は、のだめに対して高みを目指すよう働きかけることを諦める。自由にピアノを弾くのが好きだった彼女が音楽から離れてしまうくらいなら、ただただ楽しくピアノを弾ければそれでいいじゃないか、って。それでも、というのがこのセリフ。
本人が満足していて、充実しているなら、本当はそれでいいのかもしれない。「あなたはもっと上のステージに行くべき」なんて思うの、勝手すぎるかもしれない。それでもわたしは、見つかって、よりよい形で活躍してほしいと願う好きな人たちのために、文章でわたしが見つけた推しポイントを広報し続けてしまうんだと思う。
真剣に楽しむ。真剣に向き合う。その道はつらいこと・苦しいことも多くある。それでも、その先にあるものがあまりに素晴らしいから努力せずにいられない。
きっと「好き」と向き合って生きていくしかないわたしは、この先もずっとのだめカンタービレを読み返すたびにいろんなことに気づかされるはず。
のだめカンタービレは、ただの音楽漫画にはとどまらない。好きなものに真剣に向き合って生きていく人の支えになってくれる作品だった。
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