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テクノロジーを活用した教育の充実に向けて:未来の学びを形作る文部科学省の戦略

子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実(教育DX、オンライン教育、民間人材の活用等の推進)

令和6年4月22日 デジタル行財政改革会議(第5回) 文部科学省

 教育現場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)について、令和6年4月22日付で文部科学省から『子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実』という資料が出されました。  

 この資料では、文部科学省の提唱する「デジタルを活用した教育の充実」を達成し、最新のデジタル技術を活用して、子供たちと教師の力を最大限に引き出すことを目指す上で、その達成度合いを判断するためのKPI(重要業績評価指標)と、達成に向けた施策の方向性が示されています。  

この記事では、これらの要点と意義についてまとめていきます


1.教育DXの現状と課題

 文部科学省は、ハード面(端末やネットワーク・運用に関わるセキュリティポリシーの整備)とソフト面(学校教職員による活用)から現状を分析しています。

 ハード面では端末やネットワーク環境など、デジタル活用に必要不可欠な整備項目とともに、その円滑な運用を支えるセキュリティポリシーの整備状況と令和7年度に向けた達成目標(KPI)が示されています。

 多くの学校や自治体では、デジタル活用の初期段階に端末とインフラ整備に追われる中で、実際に運用するにあたって欠かすことのできない、セキュリティポリシーの整備が追いついていないことがデータから明らかになっています。特にクラウド活用を前提にしたポリシーをすでに策定している自治体は全体の半分に満たず、安全で快適なオンライン学習を整備するために重要なポイントであると言えるでしょう。

 ソフト面では、これらのテクノロジーを活用する教師の意識に重点が置かれています。データからは、ICT環境が徐々に整備されていく一方で、未だFAXや押印など、旧来の慣習や文化が根強く残っていることが明らかになっており、特に苦手意識をもっている教師へどのようにアプローチしていくかを検討する必要性が指摘されています。またクラウドや生成AIを活用することで校務のさらなる効率化を推し進め、そこで生まれた余剰時間を効果的に活用し、教師の指導力の向上に向けた研修などを実施することが求められています。

 これらハード面、ソフト面の課題を解決していくことで、文部科学省の掲げる①個別最適・協働的な学びの充実、②情報活用能力の向上、③学びの保障、④働き方改革への寄与、という4つの目標を達成に近づけることができるでしょう。これらの目標が実現していくと、地域や学校ごとの教育格差が縮小し、すべての子供たちが公平にデジタル教育の恩恵を受けられる環境が整っていくと考えられます。

2.クラウドの活用による校務の効率化

 令和5年度には、デジタル庁と共同で開発された校務DXダッシュボードによる取り組み状況の可視化や、先進的な校務DX環境のモデルケースの創出などが進められました。これにより、校務DX推進を進めるにあたり、専門人材の不足や、今まで形式にばらつきのあった帳票を統一するコストが推進の大きな障壁になっていることが明らかになりました。

 令和6年度以降においても、この方向性は大きく変わらず、校務DXダッシュボードを通じた取り組み情報の可視化と、モデルケースの創出支援が引き続き行われることが示されました。

3.デジタル教材とオンライン教育の推進

 文部科学省は、デジタル教材の利用を促進し、学習履歴のデータ分析を可能にする環境の整備を進めています。また、オンライン教育の充実も重要な柱です。これにより、学校に通えない子供たちや特別な支援が必要な子供たちも、質の高い教育を受けることができるようになります。

 令和5年度にオンライン教育について各学校種で見直しが行われた取り組みが、令和6年度には実際に運用されていきます。

 中学校段階で遠隔教育特例校制度が見直され、令和6年4月より、学校現場がより柔軟な対応が可能になるように、大臣による指定を不要とする制度改正が行われました。実際の現場では、受信側の教室に普通教員免許を持っている教師が立ち会うことが求められていたものが、臨時免許状や特別免許状の所持者でも可能になります。義務教育段階でこの弾力化が行われたということはポイントでしょう。

 高等学校段階では、履修者の減少や教師の人材不足などによって開講が困難になっている科目について、受信側の教師配置が令和5年に弾力化されました。これに加えて、令和6年度の予算には、自治体による多様な学習ニーズに応えるための「遠隔授業配信センター」の整備を支援する費用が盛り込まれています。

 また小中高段階で共通する問題として、優れた外部人材を活用するためにオンライン教育の教師については特別非常勤講師の活用も可能であることが明確化されています。

4.民間人材の活用

 教育現場に新たな風を吹き込むため、民間の専門家を積極的に取り入れる取り組みも行われています。特別免許状特別非常勤講師制度を活用し、企業や大学の専門家が学校で指導する機会を増やしています。

 これにより多様な専門知識を持つ人材が教育に参画することで、児童生徒により実践的で幅広い学びの機会が提供されることが目指されています。

5.まとめ

 上記の内容を見ていくと、文部科学省が示した戦略には、単にデジタル技術を導入するだけでなく、それを最大限に活用して子供たちと教師の力を引き出すことできるよう環境を整えることと同時に、専門性を持った外部人材の登用によって現場が抱える課題の解決を目指していく方向性が見てとれます。

 これ自体は子供たちによりよい教育を提供し、変化する社会を生き抜いていく上で必要な力を身につける支援をしていく上で重要である一方で、例えば校務DXダッシュボードなどの施策、特別免許状や特別非常勤講師制度などが現場のニーズを無視した形で導入されてしまうことのないよう、マッチングを重視した運用が期待されます。

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