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中国・重慶で現地の人に教える日本語〜世界の日本語教師たち Vol.2(後編)|えむむんさん

 このedukadoページでは「世界の日本語教師たち」というテーマで、毎週世界を股にかけて日本語を教える先生たちの現場のリアルな声を取材した記事を配信したいと思います。今回は、 “中国人に教える日本語学習”についてお届けします。

<えむむんさん>
 2019年に重慶に語学留学へ。留学の後、短期滞在をし現地の日本語学校に講師として協力した経験を持つ。その後一度日本に帰国し、2020年から中国の国立大学で日本語教師に就職。現在は新型ウイルスの影響で日本国内からオンラインで授業を行なっている。 

<Jun>
埼玉県在住のフラガール。国際観光専攻。
趣味は海外ドラマとJ-popアイドル観賞。
観光学を通じて世界を学ぶうちに、日本文化について深く知りたいと思いedukadoへインターンシップとして参画。現在はPRを担当。
多くの日本語教師へ取材する傍ら、日本語教育を取り巻く環境を改善すべく活動中。

⒊日本語を教える

—授業を行なっている中で難しいなと思う点はありますか。

 私が留学してた時は、1クラス15人ほどの大人数で行っていたので、先生が1人1人見るのは大変そうでした。自分としては短期間でかなりの中国語のレベルを上げなければ、留学が無駄になってしまうという想いがあったので、1番前の席で意欲的に勉強していました。それでも、先生に注目してもらうのは難しかったです。ですので、自分が教師になった時にはより生徒目線になり、課題や希望に寄り添える先生でありたいと思いました。話すスピードや内容を会話の中で読み取り、生徒1人1人に合わせていくのを意識しています。また授業資料も、会社が用意したものとは別に独自に作成をし、個人に合わせたものを使うようにしています。
 自分の指導法を型にはめたように決めてしまうと、その決めた指導法に合った学生しか対応できなくなってしまうと感じています。なので私が大切にしている事は、生徒の分析です。生徒がどんなタイプか分かれば、その生徒にあった指導法を考える事ができ、生徒に合わせる事で満足度が高まると思います。

—現在はオンラインで授業を行っているそうですが、何か気をつけていることはありますか。

 オンライン授業だと、直接会うことができなく、画面上でのコミュニケーションなので、気にかけていることがいくつかあります。それは、顔の表情や声の大きさ話し方に関してです。通常の対面授業よりも聞き取りにくいことや、電波の関係でリズムよく会話ができないため、なるべくゆっくりはっきりと話すことを意識しています。
 あと、生徒が緊張していると感じた際には、緊張感を解せるよう、授業の最初の段階で楽しく授業ができる雰囲気作りにも気にかけております。

—学生は初めて日本語を学ぶ方が多いですか。

 私が担当した生徒はある程度レベルが高い方が多かったです。例えば平仮名が読めるかどうかくらいのレベルだと、中国人で日本語も話せる方がある程度のレベルまで教えて、その次のステップで日本人の先生が出てくる流れなのかなと感じています。ですので、私が担当した生徒は普通に意思疎通ができるくらい、会話ができるレベルでした。たまに単語がわからなかったり、会話が途切れたりしますが、それに対して自分で「教えてください」、「これ何ですか」と質問ができるくらい高いレベルでした。

⒋中国の日本語学習

—中国国内では、現地の日本語が話せる先生が教えているんですね。

  日本語講師としてお手伝いしていた時は、中国人の講師が主に基礎となる文法や単語を指導し、私が正しい日本語の発音、会話の練習のサポートをしておりました。
 オンライン授業では毎回「何年くらい日本語を勉強していたのですか」と質問をします。すると、必ず数年単位で勉強しているという答えが返ってきます。最低でも1年半、長いと7年くらいでした。日本人講師の授業を求める理由として、ネイティブレベルの複雑な日本語を知りたいという気持ちがあるからだということを感じ、ある程度学習し基礎が身についている生徒が、オンライン授業を受講しているのではないかと思いました。

—中国では日本人先生は多くいらっしゃるんですか。

 私もびっくりしたのですが、留学した重慶では全くいませんでした!!日本人の日本語教師は本当に少ないです。一方で北京や上海は、日本人が多い都市と言われているので先生も多いと思います。重慶はまず日本人が少ない都市なので、私が日本人の先生をやりたいと言った時はとても歓迎してくれました。

ー中国の中でも学ぶ環境は大きく異なるのですね。

 重慶は直轄市ですので、かなり栄えていますが、日本人がビジネスを始めるとなるとどうしても北京や上海が主なのかなと思っています。栄えていてもこんなに違うのかと驚きました。

—重慶でも日本語を学びたい方の需要はありますよね。

 日本語の先生はいませんが、結構需要があるんです。その大きな理由として、大学進学があります。試験の際に自分の母国語とは別の言語を話せる必要があり、英語より日本語を選択する学生も多くいます。

—中国やアジアでは言語学習としての日本語学習はとてもニーズがあるように感じています。一方で、欧米では日本文化としての日本語習得も多くの可能性があると考えます。中国人以外の方に教えることもやってみたいですか。

 はい。私がもともと自分が中国に興味があったことから、中国で日本語を教えています。ですが、日本を知りたいと意欲のある方に対して、手を差し伸べたいなと思っています。自分の力を貸してあげたいです。

〜記者から一言〜 

 日本で英語を勉強し始める小・中学校ではALTの存在が当たり前のようになってきています。ですので、日本人の日本語教師が求められるのは、ある程度のレベルの学生というのは少し驚きがありました。お話を伺っていると中国国内でも日本語教師の需要はまだまだありそうでしたので、今後教育環境がどう変化していくのか楽しみです。

次週はシンガポールで日本語を教える先生のインタビューをお届けします。
お楽しみに!

取材・文 Jun Sakashima

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