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父の影響で日本語教師へ|世界の日本語教師たち Vol3(前編)|芳賀久美子さん

  このedukadoページでは「世界の日本語教師たち」というテーマで、毎週世界を股にかけて日本語を教える先生たちの現場のリアルな声を取材した記事を配信したいと思います。第3回では、”父の影響で日本語教師へ”と題してお届けします。

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今回の日本語教師:芳賀久美子さん
日本語教師を始めて6年。幼少期はシンガポールの日本人学校に通い高校を日本で卒業。再びその後シンガポールへ。通訳や翻訳の仕事を経験した後、両親が経営するシンガポールの日本語学校に勤める。

インタビュアー:Jun
埼玉県在住のフラガール。国際観光専攻。
趣味は海外ドラマとJ-popアイドル観賞。
観光学を通じて世界を学ぶうちに、日本文化について深く知りたいと思いedukadoへインターンシップとして参画。現在はPRを担当。
多くの日本語教師へ取材する傍ら、日本語教育を取り巻く環境を改善すべく活動中。

⒈父が始めた

  今年の11月で日本語教師になって6年になります。父が日本語学校を経営していたため、教えるということには前から興味がありました。いくつか他のお仕事も経験しましたがなかなかパッションが持てずにいたところ、父からの「教えてみたら?」という言葉をきっかけに、日本語教師をはじめました。いざ始めてみると、面白くやりがいを感じる仕事だと思い、今は楽しく仕事をしています。

ーシーカヤックで訪れた素敵な国が運命の地となる
  父がSSEAYP(The ship for South East Asia Youth Program, 1975「東南アジア青年の船」)でシンガポールに訪れたとき、いい国だなと感じ住むことを決めました。当時から教えることが好きだったため、それをキャリアにしたいと最初は少人数に日本語を教えていました。その中の生徒の1人が私の母になります。今は、父と母が2人で学校を経営しています。 学校自体は今年で31年になります。

—事務の仕事からサービス業(日本語教師)へ
  事務の仕事、通訳や翻訳の仕事も経験しました。日系の企業で働いたこともありますが、本当に自分のやりたいことを考えたときに、教師という選択肢に辿り着きました。 
  最初は自分に自信がなく、本当にできるのかという不安も大きかったです。ですが、授業をしていく中で徐々に楽しい、面白いと思うようになりました。他の職業では経験できないやりがいが感じられます。生徒が「わかる!」「日本語面白い」と反応してくれるときにやりがいを感じます。教えることはサービス業でもあります。ですので、反応がよくないことや、時にネガティヴなことを言われることもありますが、生徒が楽しく授業を学んでいる姿を見ると、もっと頑張ろうという気持ちになります。

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—2つの言語を使った幼少期
  日本に行ったのは14歳の時です。それまではずっとシンガポールにいました。シンガポールでは英語がメインでしたが、時折父と日本語で話す機会もありました。また、小学校も日本人学校に通っていました。日本に行ってから環境が変わり、日本語で生活するようになりましたが、今はまた英語を使ってシンガポールで生活しています。ですので、改めて言語として日本語を学んだということではなく、会話や生活の中で身につけていったという形になります。

—英語と日本語を比べる
  2つの言語を比較したときに日本語の方が複雑だと感じます。言葉の使い回しがいくつもあることや、1つの漢字にいくつもの読み方があることは、英語にはない特徴です。例えば“やさしい”という言葉にはeasyの“易しい”“kind”の優しいがあることが面白くもあり、学ぶ視点から考えると難しいとも感じます。

⒉シンガポールの日本語学校

ー就職や文化から日本語の世界へ
  生徒の数はシンガポール人に続き、マレーシア人が多いです。これはシンガポールの隣国がマレーシアで、多くの人が働きに来ているからです。また、アジア諸国、ヨーロッパ、オセアニアと世界中からも集まってきています。 
 開校当時は、日本語を学ぶ動機として、日本に対する憧れ、興味で仕事で使うという理由は少なかったですが、逆転現象が起き、仕事で日本語を使う機会があるという理由で学びにきている人が多いです。

ーレベルごとにクラス分け
  学校の方針として、目的を分けずに授業を行なっています。クラスのレベルはN1級、N2級(※「日本語能力検定」のレベル)という形ですが、最終的に検定を習得するかは本人次第です。級と同じくらいの力がつくようにカリキュラムが組まれているということになります。 また、学校では英語で単語や文法を説明しています。そこは日本にある日本語学校とは異なる点だと思います。

—生徒の目線で授業を行う
  多様なバックグラウンドを持つ生徒がいるので、生徒の目線に立って授業を行うことに気を付けています。生徒の中には、初めて漢字を学ぶ生徒も多くいます。言語を習得する上で1番の近道は、ネイティブの国で生活をすることだと思いますが、シンガポールではこのような機会がないので、丁寧な説明や、わかりやすいユニークな授業を心がけています。

〜記者から一言〜

  小さい頃から日本語教師という職業が身近にあった芳賀さんのお話は、とても興味深いものでした。さらに、他の職業も経験された上で最終的に辿り着いたということに、日本語教師の仕事の魅力が伝わってきました。

次回は後編をお届けします。現地で働く先生のお話や、シンガポールでの日本語教育の未来をお話いただきました。
お楽しみに!

取材・文:Jun Sakashima



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