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思い出ばなし(2021grad)

塾で出会った生徒たちの思い出ばなしを記録として残していく「振り返る」シリーズをスタートします。

先日、松江市でも成人式がありましたが、私が島根県に来た年に中3だった子たちの式でした。成人式前後には「先生にはお世話になったので」と写真をLINEしてくれたり、教室に会いに来てくれた生徒もいました。そして島根に帰省したときに講師として働いてくれている子たちもいます。
この世代の子たちからはいろいろと島根のことを教えてもらった気もしますし、苦労した思い出も多々あります。

今日はその世代の生徒の中から、高校受験直前に塾に来て、その後、高校受験・大学受験と一緒に走った生徒のお話。

出会いは高校受験の直前

その生徒、Aさんとしましょう。

Aさんが入塾したのは2017年12月。受験まで3ヵ月。
成績はお世辞にもいいとはいえない状態の中で、県内の進学校を狙っていました。カリキュラムを立て、冬期講習がスタートし、出願も行い、「さあ、あとは勉強するのみ」といった形になりました。

事件はここからおきます。

島根県は県立高校入試の際に出願してから1回だけ、志願変更が可能なのですが、私の知らないところで志願変更がされていて、ランクを下げて別の高校を受験することになっていたのを事後報告で聞いたのです。

今でこそ、島根県内で誰よりも高校受験の仕組みに詳しい自負はありますが、生まれも育ちも島根ではない私の当時の知識は教育委員会から発表されている情報と現地スタッフの生の声のみ。
そんな私を、きっと頼りなく感じていたのでしょう。

出願校を変えたものの・・・
メンタル激弱なAさんは入試が近づくほどに精神不安定になり、何度励ましたが分からないくらい励ました記憶があります。

そんな状態のAさんでしたが、プレッシャーを何とか乗り越え、そのまま高校に合格することができました。

大学の進路選択

高1の最初は部活と遊び?中心のAさんでしたが、成績が下がってきた2学期途中から、自分で危機感を感じて相談してくれました。

「勉強の仕方がわからない」
「高校の授業で言ってることが分からない」
「だけど大学に行きたい」

そんなAさんの言葉を実現するために、学校推薦型選抜の話をして、学校の成績を上げて推薦で大学を狙うことを話しました。

それは高校受験のときにプレッシャーでつぶれそうなメンタル面の弱さを見ている私は、Aさんの力が一番発揮できる方法がそれだと思ったのです。

それからのAさんは毎日のように自習に来るようになりました。教室に自分の専用席ができるくらい、夕方から夜まで。(別の人が座っていると怒ってたときもありました)
時にはサボりたい気持ちが出て、スマホを見ているだけのときもあり、「今日は帰りなさい」と私から注意されたこともありましたけど。

そんなAさんは定期テストで安定して高得点が取れるようになり、高3の夏には指定校推薦が取れる成績になっていました。

そして夏休み。
「子ども」「心理学」という本人の興味のあるジャンルから大学選びをしていました。
Aさんとの付き合いももう3年近くになっていましたから、性格も知っていて、都会に出ていろいろか考えの人に触れたほうが心理学を学ぶ上でもいいと思い、東京の大学を候補として薦めました。

本人は友人関係で地元に残りたい気持ちもあり、悩んでいましたが、最終的には私が薦めた大学を指定校推薦として受験することに決めました。

ここからは高校から推薦してくれるように、高校側とやり取りをしていくこととなるのですが、ここでも地方ならではの壁があり・・・
Aさんが通っていた高校からはその大学に進学した人は過去にほぼいないという理由から、高校の先生から反対をされました。

しかし本人のやりたいことが集中してできる環境があることが明確でしたので、そこからは高校の先生を保護者の方とも協力して説得していくことになりました。

そんな思いを高校の先生も感じてくれたからか、無事に推薦してもらえることになりました。

現在

Aさんはまもなく大学3年生。
時々、教室に顔を出してくれて、都会に染まっていく経過を見せてくれます。

そして今でも
「大学生でとっておいた方がいい資格ありますか?」
とかLINEをくれたりします。

Aさんの良さは素直なところ。(頑固な部分も知ってはいますが)
言われたことをしっかり実行し、素直に継続したことが大きいと思っています。

高校受験のときは私の知らないところで進路が決まっていたのに、今では何かあったときに相談できる大人の一人になったのかなと思うと嬉しく思います。

・高校は通過点であること
・勉強はまず質より量であること
・人の意見を素直に受け入れ、まずやってみること

このようにAさんからはたくさんのことを学ばせていただいた気がします。これが教育の現場のいいところ。大人も子どもも学ぶことが多い。

Aさんが将来何になるかはまだ分かりませんが、自分自身の経験を活かして人を精神的に支えられる人になってほしいなと思っています。


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