第四章 アキラ 九、毎日が人生最後の日でいい 初めて見た景色は、コスモスだった。 「ずいぶんと早く咲いているじゃないか。」 季節を間違えている。まだ梅雨が明けた…
三十二歳の自分だったら、十四歳の自分を抱きしめてあげることができるだろうか。 そうだとしたら、二十二歳の俺には、彼らを会わせることくらいはできるだろう。 朝日生…
江戸川 夏
2024年5月5日 08:08
第四章 アキラ九、毎日が人生最後の日でいい初めて見た景色は、コスモスだった。「ずいぶんと早く咲いているじゃないか。」季節を間違えている。まだ梅雨が明けたばかりだ。かくいう僕は、自分自身が咲く時期なんてわからないんだけど。世界が植物であふれている。視界に濃度があるとしたら、植物だけ異様に濃く映るのかもしれない。前世は蝶や蜂だったんだろう。さて、どうにも自分の名前にしづらい花を
三十二歳の自分だったら、十四歳の自分を抱きしめてあげることができるだろうか。そうだとしたら、二十二歳の俺には、彼らを会わせることくらいはできるだろう。朝日生一の身体の中には、三つの自分がいた。六花。紫陽。アキラ。プロローグ安い酎ハイの空き缶が、机の上に並んでいく。こんなに飲まなくてもよかったかもしれない。どれだけ飲んでも、現実が変わるわけではないのだから。「紫陽、もうやめて