「おひさしぶりです」が言えるうちに。近況報告

 前回の原稿から半年ほど経ってしまった。そしてここは自分のことを書く場ではないのだが結果的に二稿続いてしまうことに。
体調を崩していたーーと書くと、あぁよくあること、となる人生だが、今回は休職をともなう不調。思えばここ1年以上ずっと「限界だ」と言いながら過ごしてきた気がする。限界だと思っているなら早く体のために一度リセットすべきだった。
 今年1月、横になりながらスマホで病院の検索をしていた時、あるクリニックのトップに書いてあった言葉で、もうとっくに無理だったんだと気づく。
「“まだ大丈夫、こんなことくらいで受診するのは気がひける”などと思っていませんか?」
 そのクリニックの予約をすぐ取るのと同時に、不調をきたしているあらゆる部位の検査をすることになった。なにしろ前年の健康診断で「総合判定E」数値(AからEのうちの最低)を叩き出していたこともあり、血液、尿、MRI、眼底検査など、ありとあらゆる科に回された。
 一番大きかったのは脳に病が見つかったことで、以降、血流を改善する薬など、十種以上の薬・サプリメントに生かされている。
ただの偏頭痛だと思っていたものは偏頭痛じゃなかった。適当な鎮痛剤を飲んで我慢して仕事していればいいというのは間違いだった。
「いつ脳梗塞など起こしてもおかしくないんですから」と、脳神経外科医に半ばおどかされながら休養し、思ったことは
「どうせ長く生きないんだったら好きなことをやりたい」
ということに尽きる。
たとえば、書きかけの原稿。
ほかの仕事に体力・気力・時間を奪われ、いくつ未完成の原稿を抱えているのか。
たとえば、やりかけの企画。
頭の中でだけ「これは絶対に喜ばれるはず」と想像してきた企画がいくつあるのか。
いつかやりたい、という「いつか」はわたしには来ないかもしれない。
じゃあ今やるしかないんじゃないか?
というわけで、体力の許す範囲で少しずつ動きだした。
身内の中には、もっとやりたかったであろうこと、もっと会いたかったであろう人を遺し、急逝してしまった同朋もいる。
その人がもし生きていたなら、わたしがこんな企画を実現したら喜んだだろうな。きっと面白がって協力してくれただろうな。などと想像しながら少しずつ歩を進める。
あまりに歩みが遅いので、現世の協力者にはすでに迷惑をかけてしまっているところもあるが、ひとつ信念として挙げられることは「お客さんに喜んでもらえる企画かどうか」。そこを一番に考え、自分にできることをやっていく。
書きかけの原稿も、少しずつでもまたここに出していきたい。
「おひさしぶりです」と言えるうちはまだいい。生きて、動けているということだから。久しぶりに地上に出るまで忘れられていてもいい。たまに光を浴びた時、目の前にいる人たちが笑っていてくれたら幸せだとわたしは思う。


(伊藤美保)

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