Editionβ

出版社、エディションベータです。 まだ見ぬ人々に出会い、まだ見ぬ世界を本の中に創造した…

Editionβ

出版社、エディションベータです。 まだ見ぬ人々に出会い、まだ見ぬ世界を本の中に創造したくて出版社をつくりました。人文・社会ジャンルを中心に刊行予定。 The final edition is in yourself. https://www.editionbeta.com/

最近の記事

  • 固定された記事

『エキリ・コミッション 謎の感染症に挑んだ医師たち』第一章お試し読み!

第一章 日本占領 昭和二十(一九四五)年八月三十日未明、連合軍の本艦隊が南の水平線にあらわれた。先頭艦はスタージスだ。ゆうべ東京湾について、沖に停泊していた先行の艦隊がうごきはじめ、本艦隊に合流した。これからこの灰色の連合大艦隊は、日本上陸拠点である横須賀湾に向かう。 先頭艦スタージスには、クロフォード・F・サムスが乗っていた。サムスは四十三歳になったところだが、今回の戦争で軍医大佐に昇進した。その能力と人柄をみこまれてマッカーサー元帥に抜擢され、三週間まえに首都ワシントン

    • 中学生の自分に伝えたい、なぜ勉強しなくてはいけないのか。

      特に中高生の皆さんは耳にたこができるほど聞いているだろう。 勉強しなさい、と。 なぜ勉強しなければならないのか、思春期まっただなかの中学生の僕は、まったく理解できなかった。 今思えば、誰かにぶつけていてしかるべき非常に良い質問だ。 なぜ僕は誰にも聞かなかったのだろう? 「中学生は勉強するものだ」という常識で自分を抑え込んでいたかもしれない。あるいは、記憶にはないけれど、誰かに尋ねたものの回答を得られなかったか、またはそのときの相手の反応が望ましいものでなかったため、避け続けた

      • Box-tory #4

        次回刊行までの間、弊社編集担当が場をつなぐべく連載する他愛もない箱庭ショート、Box-tory(ボックストーリー)。第四幕は今年最大のトピック、新型コロナウイルスについての断章。 Box-tory #4 Uncomfortable “With Corona” Era いったい、どうしたらよいのか。 このフレーズが全世界の人類の脳裏に何度も何度も渦巻いたことだろう。 他の多くの人もそうだったかもしれないが、僕はとにかく居心地が悪かった。 未だに居心地が悪い。 新型コロナウイ

        • Box-tory #3

          次回刊行までの間、弊社編集担当が場をつなぐべく連載する他愛もない箱庭ショート、Box-tory(ボックストーリー)。第三幕は侃侃諤諤、生物学的に解決不能な不倫のお話。 Box-tory #3 フリンフヘンロン 「まずね、これだけは言っておくよ。僕は不倫の話をしたいわけじゃないんだ。むしろ、不倫の話なんて勘弁してくれって話さ」 久しぶりに友人と会って酒を飲み、他愛のない話題で盛り上がる。今年新たに文春砲を浴びた芸能人の話が出たところで不思議はないが、彼はまだそれほどアルコ

        • 固定された記事

        『エキリ・コミッション 謎の感染症に挑んだ医師たち』第一章お試し読み!

          Box-tory #2

          次回刊行までの間、弊社編集担当が場をつなぐべく連載する他愛もない箱庭ショート、Box-tory(ボックストーリー)。 第二幕は唐突に人工知能。 Box-tory #2 AI 研究者Kは人工知能を作り上げたそうだ。 その完成を告げるKの口ぶりが、まるで明日の天気でも話すかのようで、私は目を丸くした。 Kの認識ではとうの昔にシンギュラリティを越える人工知能は可能になっているのだという。 研究者は必死に人間並みの低能さを表現しようとしてそれを実現できないだけで、つまりは人間らし

          Box-tory #2

          Box-tory #1

          次回刊行までの間、弊社編集担当が場をつなぐべく連載する他愛もない箱庭ショート、Box-tory(ボックストーリー)。第一幕は命名の契機となったアンニュイな午後のひと時のお話。 Box-tory #1 箱 なんだろう。 ちょっとした切っ掛け。 小説の一節、写真、ニュース、風景、風。 畢竟、気まぐれにこの地域に吹いた一陣の風かもしれない。 ゆっくりと、ゆっくりと立ち止まりそうなほど動きの緩慢な文章を書きたくなって、さてそれをどこから始めようかと脳内のさび付いた重箱の隅をつつき

          Box-tory #1

          某有名編集者のセクハラ問題で考えた著者との契約関係

          他の出版社の編集者も無関係ではいられない原稿料未払いの問題。何が起きても軽症ですむ某編集者が著名な方だったため、セクハラ問題がクローズアップされたが、仕事の進め方もかなりきわどいものだった。 セクハラはダメだ。 それはもう書くまでもないので、今回は原稿料未払い問題について、どうしてこのようなことが起こるのか、出版業界における編集者と著者との関係について考えてみたい。 編集者が企画した書籍がどうやって発売までこぎつけるのか、出来上がってみればシンプルなようだが、実際に歩いてみる

          某有名編集者のセクハラ問題で考えた著者との契約関係