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AIと人間のかかわり方ー働き方に焦点を当ててー

はじめに

最近は、働き方が多様化して、自分に合った働き方は何だろう模索している人も多いと思います。
今回は、最近地味に生活に浸透してきているAIと働き方のこれからについて話していきたいと思います。

AIとは?

Artificial Intelligence(人工知能)の略称です。
「ちょっと何言っているかよくわからない」とか「よくAI、AIって言いうけどよくわからない…」っていう人は多いと思います。
なので、わかりやすくいうと、
人間が作り出した考えることのできる機械・プログラム
といったところです。
考えることができるというと多方面からツッコミが入りそうですが、わかりやすくいうためなのでご了承ください。
具体的な定義は、かつて人工知能研究の第一人者であった、ジョンマッカーシーが、人工知能について次のように述べています。

人工知能とは、知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術で、ここで指す知能とは、実際の目標を達成する能力の計算的な部分であり、人間、動物、そして機械には、種類や水準がさまざまな知能がある。

(ジョン・マッカーシー,1927-2011)

要するに、知能を持ったプログラム・機械のことを人工知能と呼ぶということです。

なぜ働き方が重要なのか?

近年、働き方に注目が集まっていますがその背景は何なのでしょうか。
一番大きな要因は、生産労働人口の急激な減少だと考えられます。

生産労働人口の急激な減少

次の総務省の人口のグラフを見ていただくと、生産労働人口の減少がわかります。

図1.我が国の人口の推移 ( 総務省,2017,p.164, 図表3-5-2-14 )

あまり減っていないように見えますが、高齢化率のオレンジの折れ線が1985年以降急激に上がってきていることがわかります。
これは高齢者が増えているというだけでなく、高齢者が増え、さらに1995年ごろから生産労働人口が徐々に減っていることによるものだと考えられます。
2060年の予測を見ると高齢化率が40%になることを考えると、少しぞっとしますよね。

生産労働人口の減少がもたらすのは労働力不足

人口に対して生産労働人口の割合が減少すると起こるのは労働力不足です。
社会では人口はそんなに変わっていないのでやらなくてはならない仕事が相変わらずあるのに、働く人が見つからないのです。
そうすると、労働者は多くの働き先があるので、何もしていなくても自分の市場価値が高まります。
要するに、仕事を辞めても他の職場に行くことができるので、「賃金や労働環境を良くして!」と言いやすいのです。
下のグラフは労働力人口の推移です。

図2. 労働力人口・就業者数の推移( 厚生労働省,2021,p25,図表 1-3-3)

少し労働力人口が増えているのがわかります。
「あれさっき言ってたことと違うじゃん」と思いましたよね。
ちゃんと理由があるんです。

図3. 労働力人口・就業者数の推移( 厚生労働省,2021,p25,図表 1-3-2)

これまで家庭で働いていた女性が社会進出したことや健康な高齢者の労働参加考えらます。
上のグラフを見ると25~64歳男性の労働力は減っていますが(緑と青の大きい部分)25~64歳女性の部分(オレンジ色の部分と黄色っぽい部分)と高齢者(それより右側の部分)は増加していることがわかります。
この二つの要因によって、労働力の減少は避けられていますが、これから先、日本国内にはこれ以上労働力がいないので、労働力の減少は避けられないでしょう。

労働力が足りないなら生産性を上げるしかない!

労働者の視点からだけではなく、雇用者の視点からも働き方は重要になってきます。
労働力が足りないなら、これまで人を安く雇ってとりあえず仕事をさせまくるという作戦では、上手くいきません(賃金が安いと働き手が見つからない)
労働環境を良くして、生産性をあげないと、労働力の賃金上昇に対して利益を増やすことが難しくなります。
生産性を上げるには、労働環境の整備も大切ですが、現代にはAIやプログラムによる自動化といった方法もあります。

AIと人間の得意分野の違い

AIの得意分野と苦手分野は何なのでしょうか?

AIが得意なこと

  • 大量のデータの分析

  • 特定分野での学習

  • 計算や単純作業

AIはデータを扱うのが非常に得意です。
人間だとexeclの表を見てもその表が何を示しているかすぐわかる人はそうそういないと思います。(いたら方法を教えてほしい)
AIはそういった一見何の意味もなさそうなデータから、人間がわかりやすい意味のある情報を作り出すことができます。
他にも、チェスや囲碁、将棋などの特定の分野で、すべての情報がデータ化できるようなゲーム(完全情報ゲーム)の学習は得意で、最近は、人間のチャンピオンを破ることができるようになってきました。
逆にAIが苦手なことは何でしょうか?

AIが苦手なこと

  • 芸術やアート・音楽などの創造

  • 感情の読み取り

  • 多分野にまたがる問題の解決

AIはデータにできない不確実な仕事はとても苦手です。
そもそも、データにできないと学習ができないからです。
音楽や芸術・アートなどの創造性や複雑性が求められる仕事では、AIは役に立ちません。
人間の感情の読み取りも、表情だけでなくボディーランゲージや声色など様々な要因があり、人や文化によって異なる場合も多いので、現在のAIには難しいとされています。

AIは人の仕事を奪って、仕事がなくなってしまうという声をよく聞きますが、
逆に、AIによって仕事が減れば、労働時間が減り有意義な仕事に時間を割くことができるので、生産性が上がり以前より楽な生活ができるようになるのではないかとも考えることができます。

AIの問題点

AIを社会で用いるためには様々な課題があるとされています。

  • AIが問題を起こしたときに誰が責任を取るのか

  • 中身のブラックボックス問題

  • AIにどこまで考えさせるか

責任の所在

AIが問題を起こしたときに誰が責任を取るのでしょうか。作った人?AIを売った人?それともAIを操作した人でしょうか。


例えば、AI搭載の自動運転車がAIの誤動作で事故を起こしてしまったとします。AIを作ったのと自動車を作っている会社は異なり、AIの誤動作は車を運転していた人が、いつもと違うことをしたことも関係している場合、だれに責任の所在があるのか非常に不明瞭です。
ブラックボックス問題とも関係しますが、AIを作った人はデータを与えただけで、AIがどのように物事を予測しているのかは誰にもわからないので、AIを作った人が一概に悪いとは言えないのです。

AIにどこまで考えさせるか

フレーム問題とは、最適な結果が得られるように、AIにどこまで考えさせればのかという問題です。
有名な例は、洞窟の中に台車があり台車の上にバッテリーと時限爆弾がありバッテリーを持ってくるという課題です。
パターン1では、バッテリーを持ってきてねというと台車ごと持ってきてしまう。
パターン2では、いろいろ考慮してバッテリーを持ってきてねというと、いろいろなこと(洞窟が崩れないか、爆弾は爆発しないかなど)を計算しているうちに時間切れで爆発してしまう。
パターン3では目的と関係のあることを考慮して持ってきてねというと、目的と関係があることは何かということを考えているうちに爆発してしまう。といったように、AIが考える範囲を適切に設定しないと時間がかかりすぎたり、逆に目的を達成できないなどの問題が発生してしまうのです。

人間にできることは何か

このようなAIの特徴を踏まえたうえで、人間には何ができるのでしょうか。

人間の得意なこと

人間が得意なことはAIが苦手な部分と同じと言えます。

  • 多分野にまたがる問題の解決

  • 芸術やアート・音楽などの創造

  • 感情の読み取り

AIによって自動化が進むと、単純作業が減り、複雑性が求められる意思決定・人間との関り・芸術性が重要視されるようになります。

人間に必要とされる能力

これらから人間に必要とされる能力は次のようなものだと考えられます。

  • 適切な意思決定

  • 良好な人間関係の維持

  • 創造性を発揮

AIと人間の共同

AIや機械で自動化が進んだ社会になったときに人間がやる必要がある仕事は

  • クリエイティビティが必要な仕事(クリエイター・エンターテイナー)

  • AIを作成・管理する仕事(エンジニア)

  • AIを使う仕事(いろいろな分野)

  • 人間の感情を汲み取る必要がある仕事(サービス業など)

  • 多分野で不確定な状況の中で意思決定が必要な仕事(経営者・医者・弁護士など)

  • 手作業・人力でないとできない仕事(職人など)

といったものになることが考えられます。
もっとたくさん仕事あるはずだと思う方も多いかと思いますが、AIや機械が社会にもっと普及すれば、大体の仕事は上の仕事のリストに分類できるようになっていくと思います。
AIによって自動化された社会で、必要とされている環境は何なのでしょうか。

具体的な働き方

ストレスをなくす

適切な意思決定や良好な人間関係の維持、創造性を発揮するためには、ストレスを溜めない、ストレスフリーな環境を作り出す必要があると考えられます。
大平・山川 (2018)によれば、

急性ストレスは実行機能の低下,価値関数の変容,報酬や損失への鋭敏性の変容などにより意思決定に影響する

ことが示されている。
人間関係でも、ストレスがあることによって、判断能力が鈍り、自分の言動が相手にどう影響を与えるのか考慮しないままに、コミュニケーションを行ってしまう可能性があります。

創造性に関しては、一概にストレスによって悪影響があるとは言えません。Byron et al.(2010)では、

評価ストレスには曲線的な関係があり、低評価のストレスは、創造的なパフォーマンスを増加させることが示唆された。加えて、状況のコントロールと創造性には負の関係があることが明らかにされている。ストレスの種類によって創造性に与える影響が異なることが示唆されている。


これらから言えることは、状況がコントロールできていないというストレスは多くの場合、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があるということです。
なるべく、状況のコントロール感を高めるような工夫として次のようなものが挙げられます。

  • 意思決定は管理職ではなく、担当者自身がなるべく行う

  • フレックスタイム制を導入する

  • フィードバックをする機会を与え、現状を客観的に把握する

迅速な意思決定と行動

これまでよりもAIや機械で自動化が進むと、社会の成長スピードが高まることが予想されます。
それは、人間が生きるために必要な仕事をする必要がなくなり、成長するために必要な仕事により多くの時間がさけるようになるからです。
そうすると、これまでの意思決定や行動のスピードでは、その時には正しかった意思決定も、社会が変化することによって間違いになってしまう可能性があります。

例えば、アメリカのカメラメーカーのコダックは、かつて、フィルムカメラ事業でアメリカのシェアが1位でした。しかし、デジタルカメラの普及により経営が立ち行かなくなり、結局倒産してしまいました。
実は、コダックは一番最初にデジタルカメラを開発したのにもかかわらず、デジタルカメラは本物のカメラではないと販売を見送ったのです。

確かに、フィルムカメラはデジカメを開発した時点では、一番売れる商品だったかもしれませんが、時代が変わることによって、正解が不正解になってしまうことが往々にしてあります。
社会の変化がますます激しくなる中で、必要となってくるのが、迅速な意思決定と行動だと考えられます。

迅速な意思決定と行動を促す工夫は次のようなものが挙げられます。

  • 意思決定は管理職ではなく、担当者自身がなるべく行う

  • 意思決定に必要な認証・ルールを減らす

  • 失敗を許容する文化を形成する

解決策の弱点

ストレスをなくすというのは職場における競争が減ってしまうという問題点もあります。ストレスがないというのは、一見するととてもいいことのように感じますが、職場での適度なストレスは、職場の生産性向上に寄与していると示している調査もあります。

迅速な意思決定や行動をすることは、意思決定や行動をする前に、その事柄について熟考する時間を減らし、その結果、仕事でのミスの増加が起こってしまう可能性があります。これはミスが許されないもしくはなるべく少ない方がよい仕事、例えば、外科医、裁判官、飛行機のパイロットなど、ミスが命に直結するような仕事の場合迅速な意思決定や行動は必ずしもいいとは言えません。

まとめ

今回はAIの普及によって変わるであろう働き方について考察してみました。

  • ストレスが少ない

  • 迅速な意思決定と行動ができる

といったことが今後の職場ではより一層必要になっていくのではないでしょうか。
働き方は多様化しているので、他にも必要になってくる職場環境はあるとは思います。(待遇・組織文化など)
こんな働き方が必要なんじゃないかと思った方いたら、ぜひコメントください。
AIの普及によってもたらされるもの(恩恵や弊害)は多くありますが、その分人間もより多くの変化が求められると思います。
今後の社会が楽しみですね!

引用文献

McCarthy, J. (2007). WHAT IS ARTIFICIAL INTELLIGENCE? Retrieved from http://www-formal.stanford.edu/jmc/whatisai/whatisai.html ( jul,23,2022)

総務省 (2017). 平成29年版 情報通信白書 Retrieved from http://www. soumu. go. jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf (2022年7月23日).

山川, 大平. (2018). ストレス下における不合理な意思決定―認知機能の側面から―. 生理心理学と精神生理学, 36(1), 40–52. https://doi.org/10.5674/jjppp.1805si

Byron, K., Khazanchi, S., & Nazarian, D. (2010). The relationship between stressors and creativity: a meta-analysis examining competing theoretical models. Journal of Applied Psychology, 95(1), 201.


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