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【30代OL】20年の摂食障害。卒業1年後のお話

みなさんこんにちは。摂食障害オンライン相談室を運営する、元摂食障害の心理士、渡邉茜(わたなべ・あかね)です。

この企画は、当カウンセリングの卒業後を追う企画。

今回ご紹介する卒業生は、20年の過食嘔吐生活を克服したサナさん(仮名)。
2021年11月に卒業し、約1年ぶりの近況報告インタビューを行いました。

課題/回復のアプローチ

【サナさんカルテ】
■症状:拒食・過食嘔吐
■カウンセリング期間:2021年6月〜2021年11月(5ヶ月)
■サポート内容
毎週通話カウンセリング

■プロフィール
2021年開始時、38歳。毎日の過食嘔吐。157cm 45kg
食事:朝:目玉焼き/昼:一人前の半分くらい/夜:過食嘔吐

※初回カルテ 2021年までの歩み

高校1年の終わりに、少し太ったね。ということがきっかけでダイエットしました。その後、高校卒業するころには40kg以下になるくらい痩せてました。当初は摂食障害ということには認識ありませんでした。

高校卒業後、専門学校に通う:常にカロリー制限の食事でした、最初は過食嘔吐はなしです。が、パン屋で働いててそこでもらうパンを夜に食べつくしてしまい、その中少しづつ過食が多くなり、嘔吐も始まりました。短期留学中、常に食にとらわれていて、皆の前では食べ物に関しては食べないでとかしてました。日本に帰国後は実家で暮らす。過食嘔吐をかくれてするようになりました。

再度勉強したいと思い大学へ通いました。その当時は過食嘔吐が常で、でも、この時初めてやめたい、と思うようになりました。学校卒業後、就職し、職場で出会った方と結婚その後、離婚。離婚後、一人生活で食事も一人なので、そちらのほうが怖かったです。別れることより、一人での生活のほうが怖かったように思います。その後ずっと過食嘔吐を朝から晩まででした。

その生活に疲れてきて、何となくですが、最初は、朝、昼、を一人でも食べれるようになり、それがうれしく(毎日ではないです)でもそれを頑張るのがつかれてきたり、というのも常に我慢というか。これだけ食べれる、とかこれだけ食べようとか。そういった感じでコントロールしてる感じです。
そして夜は必ず過食してしまいます。また夜のアルコールもなかなかやめられません。

■食生活の改善
過食嘔吐ありきの食生活になり、「嘔吐前提ではない食事」ができない印象でした。きちんと食べ物を味わって消化する。その基本を身につけるトレーニングを行いました。

■過食嘔吐依存からの脱却のために、生活を充足させる
過食嘔吐以外、時間を過ごす方法がわからなくなっている印象でした。日常の中の小さな幸福を見つけること(依存先を多く持つこと)が、回復の助けになると考えました。

■本音を話す
サナさんは良くも悪くも一人で生きられる人でした。しかし、その分「本音を話す」という相手がいないことで、自分の気持ちが内側に向いてしまっている印象でした。そこで、カウンセリングではとにかく本音を話してもらうことを心がけました。

卒業1年後のインタビュー

【1】カウンセリングをうけようと思った理由

ずっと10年以上治したいと思っておりました。
お金がもったいない、歯が溶ける、交友関係が全くもてない。これ以上、お金を無題にしなくない、歯を溶かしたくない、という気持ちはずっとありました。
が、それ以上に、恐怖というか、このまま生活(過食嘔吐)から抜けだせないのかという恐怖、不安、絶望。けど、一人では本当に何もできない。助けが必要、助けを求めないかぎり抜けだす方法がわからない、と思ったからです。

ずっと治したいという気持ちから、行動に移すタイミングがこの時だったのだと思います。よく決心されましたね。

【2】実際に受けてみて、カウンセラーあかねの感想

この考え方はおかしい、考えの押し付けを感じたりしない、私の意見を否定せずきいてくれる。私自身で自分の偏った思考を気づくようになる感じです。だから話すことが怖くならないです。話すまえに、何が正しいのかを探さなくて正直に話せる。

言われて気づきましたが、確かにカウンセリングを「正解を探す場所」と捉えられている方もいますが、「本音を話す場所」なんですよね。その意図を汲み取って、自ら本音を表現することにつとめたサナさん、素晴らしかったです。

【3】実際に受けてみて、症状・生活・価値観の変化

症状:食べたい欲はありますが、過食したい症状とはちがいます。食べたいから食べる、それが過食衝動での食べるではない感じです。

生活:生活が劇的に変わったということはないです。食事は食べないか、食べて吐くが基本。それが、生きるためのものとして、身体の栄養として、そしておいしいと楽しむ時間として、食事を取り入れることができる。多分、健康になったと思います。

価値観:スタイルの良さ、というのはやはりきれいだなって思います。
スタイルをほめられるより内面をおせじでもほめられたほうがうれしく満たされる。という感じです。
内面をみてくれているのだなと、嘘とかお世辞でもいいです。そんなに外見はきにされてないとは思います。
あと、スタイルを保つための並みならぬ努力をしてまでほしいかというと、そうではない。楽な方を選ぶ。

サナさんがここまで早く回復できたのは、「スタイルがいいことに憧れる気持ち」と、「実際の心地いい生活」を分けて考えられた点だと思います。

ほとんどの方は、「今の痩せを維持するための生活は確かに苦しいけど、スタイルを褒められたいから頑張ってしまう」というパターンが多いです。
しかし、「スタイルがいいことよりも、もっと大切なことがある」と気づき、それらを優先し続けたことが、回復につながったのだと思います。

そのためには、「痩せていることよりも大切なこと」を感じ続けなければいけません。そこで、「食事を味わう幸福感」「過食嘔吐に費やしていた時間を別の癒しで補う」「ちょっといいビールを味わう」などを実践していただきました。

食事を安心して食べられるようになるために、「吐かない前提の食事」をする練習をしました。許容範囲が狭かったので、週ごとに50kcalずつ、朝昼の許容カロリー数を上げていきました。(例えば、1週目お昼は300kcalまでOKだったけど、翌週は350kcalまでOKにする)結構細かく、話し合って目標を設定しましたが、毎週挑戦してくれました。達成しても達成できなくても、目標設定して、挑戦して、失敗して、どうやったら自分に合った食事になるのかを検証し続けた点に意味があるのです。

アルコールが好きなことを初めはご自身で否定的に考えられていましたが、アルコール依存のような飲み方ではなかったので、それをプラスに取って「美味しいビールを飲む」という楽しみに変えていくようなアプローチをしました。ちょっといい銘柄のビールを選んで、ベランダの夜風に当たりながら飲む時間、気持ちよかったはずです。

【4】実際に受けてみて、苦しかったこと

プレッシャーみたいに少し感じました。最初、週一日過食嘔吐なしを約束しました。
絶対守らなければならないわけでもなく、見られているわけでもないので、強制的なものではないです。
それでも、克服するには、このいつかは約束どおりの結果がでないと、というプレッシャー、できるのかという不安、過食に頼らず一日を過ごすという決意を今日、あるいは近日中にしないと、ということです。そして、最初の1日過食嘔吐なし。ができました。案外、できるものかもっていう感じになり、過食嘔吐しない日は作れるものになってきました。

たった1日、されど1日。この壁を乗り越えられるかどうかなんですよね。多くの方は1日できても、その達成感をあまり感じられず、やっぱり病気の声に負けてしまう。でも、サナさんの素晴らしいところは、ほどよくプレッシャーを感じ、過食嘔吐をしなかったことに対して、きちんと達成感を味わい、過食嘔吐をしないメリットを感じ続けていったことだと思います。
つまり、病気ではない、健康的な声を感じようとし続けた積み重ねで、「過食嘔吐したほうが、後から罪悪感で苦しむな」と、冷静に衝動を回避できるようになった印象です。

【5】卒業を決めた理由

いつかは卒業する。今の自分ならできると思ったから。

週1回だけ過食嘔吐をしない日をつくれたことから、徐々にしなくてもいい日を作れるようになり、最後は数週間過食嘔吐をせずに過ごす日を過ごして、卒業を迎えました。

正直、早いです。5ヶ月で毎日していた過食嘔吐をやめるって。本当に偉業だと思っています。それを成し遂げられたのは、毎週課された目標に向き合い、達成できなくても諦めずにカウンセリングを受け続けた点にあると思います。その地道な努力、本当に素晴らしかったです。

【6】卒業後の症状、体重、生活など

【症状】あかねさんのカウンセリングを卒業してからも3食と間食を正しくたべることは普通に続けられて、逆にこれを破ると食生活のリズムが崩れるかなと思っておりましたが、徐々に緩くなりました基本必ず3食食べますが、足りなければ食べます。体調悪ければ、軽く食べて休みます。摂食障害の衝動は、多少の体調の悪さくらいでは、容赦なく現れることだったので、これはすごく体調不良の回復に良い点です。

【体重】健康診断の記憶よりは、2年前、45kg, 1年前47-8kg(Akaneさんのカウンセリングを受けている最中でした)そして、今年の健康診断では49.8kg
体重が増えたことよりも、中性脂肪の値が基準値内に落ちました。
※この数値の改善が過食嘔吐と関係あるのかわかりませんが。基準値の倍以上はずっとありました。お酒の関係もあるとおもっているので、過食嘔吐が直接かかわっているかは、わかりませんが、基準値内でよかったです。

【生活】過食ばかりだった時間を、食事ということができるようになると、まず食事が楽しみで、でもだんだんそれが薄れてきて普通になってきました。もちろんおいしいものを食べることは好きです。
一人暮らしなので、丸一日自分の自由すぎて、何しようって思うことがありました。
自分の心地よい感覚を重視して、あかねさんのおっしゃった、“依存先を増やす”というのを心がけて、新しい暇つぶしもたまに探したりしております。それがいい意味での新しい依存になればよいかなという感じです。

すごい、ずっと卒業時の生活をゆるく継続していたのですね!そして、普通の感覚で生活ができている印象です。食事も「あいまい」に調整できるようになっているところがいいですね^^

体重より、健康を重視している点もすばらしいですね。そう思えるようになったのは「日常の充足」があるからだと思います。生活を楽しむ工夫あって、初めて体重依存から脱却できます。

これからも、自分の心地よさを大切に、毎日の生活に少しでも幸せを感じられることを応援しています。

【7】カウンセリングを受けようと迷っている方に一言

いろんな状況があると思いますが、一人で克服は(たぶん不可能ではないのでしょうが、)とても難しいかと思います。
私は、あかねさんにカウンセリングを受けるという選択をしてよかったと思っております・

私はサナさんがすごいと感じたのは、「カウンセラー以外、誰にも頼らずに回復した点」です。私はよく「甘えられる人に甘えなさい」とクライアントに伝えます。しかし、サナさんは頼りたい人がいないとのことだったので、他者との関係に満たされるのではなく、とにかく自分自身の生活の充足を工夫することで、満たされていきました。それがすごいな、と素直に思いました。

自分自身と向き合い、自分を満たすだけでも、きちんと回復できる。それを証明してくれた方でした。


丁寧にインタビューに答えてくださりありがとうございました。これからもサナさんの人生を応援しています。そして、またいつでも季節のお便りでも、嬉しい報告でも連絡くださいね。


摂食障害オンライン相談室公式HP

■毎週月水金17:00〜YouTube

■著書「摂食障害のしおり〜ダイエット依存を卒業する5ステップ〜

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