【30代OL】20年の摂食障害。卒業1年後のお話
みなさんこんにちは。摂食障害オンライン相談室を運営する、元摂食障害の心理士、渡邉茜(わたなべ・あかね)です。
この企画は、当カウンセリングの卒業後を追う企画。
今回ご紹介する卒業生は、20年の過食嘔吐生活を克服したサナさん(仮名)。
2021年11月に卒業し、約1年ぶりの近況報告インタビューを行いました。
課題/回復のアプローチ
■食生活の改善
過食嘔吐ありきの食生活になり、「嘔吐前提ではない食事」ができない印象でした。きちんと食べ物を味わって消化する。その基本を身につけるトレーニングを行いました。
■過食嘔吐依存からの脱却のために、生活を充足させる
過食嘔吐以外、時間を過ごす方法がわからなくなっている印象でした。日常の中の小さな幸福を見つけること(依存先を多く持つこと)が、回復の助けになると考えました。
■本音を話す
サナさんは良くも悪くも一人で生きられる人でした。しかし、その分「本音を話す」という相手がいないことで、自分の気持ちが内側に向いてしまっている印象でした。そこで、カウンセリングではとにかく本音を話してもらうことを心がけました。
卒業1年後のインタビュー
【1】カウンセリングをうけようと思った理由
ずっと治したいという気持ちから、行動に移すタイミングがこの時だったのだと思います。よく決心されましたね。
【2】実際に受けてみて、カウンセラーあかねの感想
言われて気づきましたが、確かにカウンセリングを「正解を探す場所」と捉えられている方もいますが、「本音を話す場所」なんですよね。その意図を汲み取って、自ら本音を表現することにつとめたサナさん、素晴らしかったです。
【3】実際に受けてみて、症状・生活・価値観の変化
サナさんがここまで早く回復できたのは、「スタイルがいいことに憧れる気持ち」と、「実際の心地いい生活」を分けて考えられた点だと思います。
ほとんどの方は、「今の痩せを維持するための生活は確かに苦しいけど、スタイルを褒められたいから頑張ってしまう」というパターンが多いです。
しかし、「スタイルがいいことよりも、もっと大切なことがある」と気づき、それらを優先し続けたことが、回復につながったのだと思います。
そのためには、「痩せていることよりも大切なこと」を感じ続けなければいけません。そこで、「食事を味わう幸福感」「過食嘔吐に費やしていた時間を別の癒しで補う」「ちょっといいビールを味わう」などを実践していただきました。
食事を安心して食べられるようになるために、「吐かない前提の食事」をする練習をしました。許容範囲が狭かったので、週ごとに50kcalずつ、朝昼の許容カロリー数を上げていきました。(例えば、1週目お昼は300kcalまでOKだったけど、翌週は350kcalまでOKにする)結構細かく、話し合って目標を設定しましたが、毎週挑戦してくれました。達成しても達成できなくても、目標設定して、挑戦して、失敗して、どうやったら自分に合った食事になるのかを検証し続けた点に意味があるのです。
アルコールが好きなことを初めはご自身で否定的に考えられていましたが、アルコール依存のような飲み方ではなかったので、それをプラスに取って「美味しいビールを飲む」という楽しみに変えていくようなアプローチをしました。ちょっといい銘柄のビールを選んで、ベランダの夜風に当たりながら飲む時間、気持ちよかったはずです。
【4】実際に受けてみて、苦しかったこと
たった1日、されど1日。この壁を乗り越えられるかどうかなんですよね。多くの方は1日できても、その達成感をあまり感じられず、やっぱり病気の声に負けてしまう。でも、サナさんの素晴らしいところは、ほどよくプレッシャーを感じ、過食嘔吐をしなかったことに対して、きちんと達成感を味わい、過食嘔吐をしないメリットを感じ続けていったことだと思います。
つまり、病気ではない、健康的な声を感じようとし続けた積み重ねで、「過食嘔吐したほうが、後から罪悪感で苦しむな」と、冷静に衝動を回避できるようになった印象です。
【5】卒業を決めた理由
週1回だけ過食嘔吐をしない日をつくれたことから、徐々にしなくてもいい日を作れるようになり、最後は数週間過食嘔吐をせずに過ごす日を過ごして、卒業を迎えました。
正直、早いです。5ヶ月で毎日していた過食嘔吐をやめるって。本当に偉業だと思っています。それを成し遂げられたのは、毎週課された目標に向き合い、達成できなくても諦めずにカウンセリングを受け続けた点にあると思います。その地道な努力、本当に素晴らしかったです。
【6】卒業後の症状、体重、生活など
すごい、ずっと卒業時の生活をゆるく継続していたのですね!そして、普通の感覚で生活ができている印象です。食事も「あいまい」に調整できるようになっているところがいいですね^^
体重より、健康を重視している点もすばらしいですね。そう思えるようになったのは「日常の充足」があるからだと思います。生活を楽しむ工夫あって、初めて体重依存から脱却できます。
これからも、自分の心地よさを大切に、毎日の生活に少しでも幸せを感じられることを応援しています。
【7】カウンセリングを受けようと迷っている方に一言
私はサナさんがすごいと感じたのは、「カウンセラー以外、誰にも頼らずに回復した点」です。私はよく「甘えられる人に甘えなさい」とクライアントに伝えます。しかし、サナさんは頼りたい人がいないとのことだったので、他者との関係に満たされるのではなく、とにかく自分自身の生活の充足を工夫することで、満たされていきました。それがすごいな、と素直に思いました。
自分自身と向き合い、自分を満たすだけでも、きちんと回復できる。それを証明してくれた方でした。
丁寧にインタビューに答えてくださりありがとうございました。これからもサナさんの人生を応援しています。そして、またいつでも季節のお便りでも、嬉しい報告でも連絡くださいね。
■毎週月水金17:00〜YouTube
■著書「摂食障害のしおり〜ダイエット依存を卒業する5ステップ〜」
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