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『現役大学生(達)の異常な愛情。または我々は如何にして世界からこぼれ、エロゲ―を作るようになったのか』(4)

第四話。
「続、E-create発足話(代表兼シナリオライター創士の巻 後編)」


若くして金も教養も無く、ただノベルゲームを作りたい一心で上京(この場合は京都を指す)を果たしたE-create代表兼シナリオライターの双士
そこに待ち受けていたのは、古き都に吹きさぶる冷たい風だった。

時は2015年、大学生活一年目、とあるカンファレンスに参加したときのこと。
ゲーム業界の偉い人とお話できるということで、振り絞る思いで自身のノベルゲームへの思いをぶつけてみた結果が以下である。

業界の偉い人A「ノベルゲーム? あぁ、昔流行ったよね」
業界の偉い人B「ゲーム業界で言うところの能・狂言だよね。時代はVRでしょ」

少し…いや、酷くショックを受けた。
神の啓示と見紛った世界への憧憬を真っ向からへし折られたのだから。
この心情は『ブルース・ブラザーズ』を観た直後の激情に駆られ御茶ノ水で5万もするギターを買ってきたにも関わらず、続く『ブルース・ブラザーズ2000』の開幕5分で前作の主人公ジェイクが獄中でシャブにより死んでいた事実を知り、呆然としながらそれでも震える指で『Smoke on the Water』を練習することと相違あるまい。

それほどのショックであり、またノベルゲームが、自身の中でロックと変わらないことを、少年双士は知ったのかもしれない。

講義は判然と受けた。
単位さえ取れればと言う不真面目な態度のその影で、ひたすら読んでいた一冊の本があった。

高橋直樹氏の『Nscripterオフィシャルガイド』である。

とある席で会った早稲田大学生が「くはwあのマゾツールすかww」と一笑に付したNscripter
そうだ、『月姫』『ひぐらしのなく頃に』がNscripterだったから、オレも使おうと思ったのだ。

笑いたきゃ笑え。
もっと早い手段があったのかもしれない。640*480よりも大きい画面サイズで作れたのかもしれない。
(※因みにNscripterは今でも自身の愛用ツールです。吉里吉里は難しくて使えません。高橋先生、ありがとうございます)

それが自身の第一歩だった。
『グミ・チョコレート・パイン』で言うところのグミだ。辿り着く先はきっと同じなのだ。後にチョキを連発しようとするあまり自律神経が吹っ飛んで薬を飲んでいるのだが、それはまたいつか語ろう。

ともあれ夏を越え、秋が来て、フリー素材、フリー音源、640*480画面サイズの掌編ホラーノベルを、フリーゲーム板に投稿した
今も電子の海を彷徨っているだろうか。
何故か某批評空間サイトに掲載され、ただ一件、Cの評価が下された。若気の至りか当時は素直に「ぶち殺すぞ」と思った。

けれども、まぁ、ひどく矮小で、はたから見れば価値のない些細な事でも、ともかく勝負はしたのだ。

曖昧な達成感と奇妙な恍惚感に包まれながら、特に考えるでも無く、とある番号へ電話を開けた。
高校時代、共に校内で同人誌を作った友人。後の秋月すいれん先生氏の番号である。

続く。

冬コミ最新作『藍のひだりがわ』今週の開発進捗

着実にラフ画が挙がってきており、開発が進んでおります。

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