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「星を継ぐもの」はビジネス書

少し前にどういう経緯か忘れたがSF小説を読みたい欲にかられてひとまず古典の名作と名高い「星を継ぐもの」を手に取った。SF小説というだけあってUFOとか宇宙人とか、タイムスリップとかそんな話なのかと思っていた。しかし良い意味でその期待は裏切られた。(確かにそういう話なのだけれども)

SF小説の皮をかぶったビジネス書

結論から言って「星を継ぐもの」はSF小説の皮をかぶったビジネス書だ。SFはScience Fictionの略だが、「星を継ぐもの」はまさに「科学の作り話」にふさわしい内容だ。この小説ジャンルのファンも先日投稿した「銀河英雄伝説」ファンと並んで恐ろしい人たち(誉め言葉)なので特に細かく解説することは避けたい。しかしどの辺がビジネス書と感じたかは書き留めておく。

謎解き超大規模プロジェクト

「星を継ぐもの」の裏表紙のストーリーはこうだ。

月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが綿密な調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもなければ、ましてやこの世界の住人でもなかった。彼は五万年前に死亡していたのだ!一方、木星の衛星ガニメデで、地球のものではない宇宙船の残骸が発見される。関連は?

物語の大筋はこの死体と「彼」にまつわる様々な謎を解き明かすという内容だ。この死体の謎を解くために各分野相当数の人材が呼ばれ、大規模な謎解きプロジェクトが発足する。死体の検査をするチーム、宇宙服の材質を検査するチーム、彼が持っていたメモのようなものを解読するチーム等々。それぞれのチームは独自で研究を進める。その研究成果は挙がってくるがそれらを結び付けられずに謎解きは難航する。各セクションごとに「垣根」や「プライド」が存在し研究成果の共有ができずにいたのだ。しかも各セクションの研究成果は「答え」ではなく「ピースの一つ」であり、新たな謎のきっかけとなるのだ。

そこに主人公(超天才)がどのチームにも属さない(正確にはどこかに属していた気がする)全体を見渡す役割として招かれてきて、広がり続ける謎に立ち向かうという話なのだ。

プロジェクトチーム問題と天才の不在

ここから先は是非本編をお読みいただければと思うが、この作品に見られるプロジェクトチーム問題は現代のビジネスや色々な日常生活で起こっていることに酷似している。皆さんが関わっているプロジェクトなどの規模の大小はいったん横に置いておこう(この物語のスケールは大きい)。

この物語の主人公のような天才的な人物が皆さんがや私が所属する組織や、プロジェクトに存在すればいいのだが、残念ながらそうではないと思う(この文章を読んでいる天才の人には先にお詫びしておくゴメンナサイ)。では天才がいない中でどのようにしてそのプロジェクトを少しでも成功に近づけるのか。それは凡人たる「いちメンバー」が全体像を大まかにでもイメージしながら日々の活動を行うことだ。別のチームではどうなっているだろうかと想像し、時には話を聞きに行って、見解の相違を修正して、の繰り返し。天才はほんのわずかしかいないかもしれないけれど、みんなが全体を見渡していく意識をもって日々の仕事を進めていくことができればより良い未来が待っているのではないか。

読み方の一つとして

仕事を語ることができるほど仕事をしていないし、やり切れていない自分がいるので、偉そうに話をすることはできない。上記文章だって反論はいくらでもあるだろうし、何を当たり前のことをと思う人もいるだろう。おっしゃる通り。100%その反論と意見は正解だ。わたしはこの「星を継ぐもの」をそういうビジネス的な視点で読むと面白いという話がしたいだけなのだ。「ガンダムが面白い」と一口に言っても「メカ」が良いという人もいれば、「人物」が良いという人もいるだろうし、「設定が深い」という人もいるだろう。この小説を「ビジネス書」として読むことを見方の一つとして提案したいのだ。

この文章をここまで読んでくださった方はおそらく「ちょっと読んでみたいかも」と思ったのではないだろうか。ぜひ読んでみてほしい。このジャンルの小説は最も深い「沼」の一つと言われている。私はもう片足を突っ込んでしまっている。どうぞご一緒に。

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