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十一、新たなことにチャレンジする日

  アマリリスが 数年ぶりに花茎を伸ばし、花芽を二個つけた。きのう遂に花が咲いた。ところがその日のうちに花を一つ落としてしまった。私が誤って接触したためだ。三時と九時の方向に花びらを広げて咲いたうちの一つが落ちたから、残った一つの花はバランス悪そうだ。奇しくも花を落としたきのう五月二十一日は、一つの恋愛にピリオドが打たれた日でもあった。

 五月二十一日を意識するようになったのは最近だ。たまたま一九九二年の手帳を見つけてめくってみると、五月二十一日に滴が描かれていた。言語化できる心境ではなかったものの、何らかの形で残そうとしたことを思い出した。よくぞ残したものだ。それに触発された私は、五月二十一日を新たなことにチャレンジする日と定めることにした。昨年はドビュッシーのアラベスク第一番の練習をこの日に始めた。

 今年は何を始めようか。数週間前からあれこれと考えていたが、当日になっても決められなかった。ピアノのレパートリーを増やすか、就活を始めるか、コンテストに応募するか。折角のチャレンジだ。好きなこと、得意なことを伸ばすために取り組みたい。今日明日中に。

 花茎から外れてしまったアマリリスは、プリンの空き瓶に挿して、テーブルに置いている。よくよく考えると、花茎についているもう一つの花も摘んだほうがよいのではないか。アマリリスは結実を楽しむ植物ではない。花に送られていた養分を球根を太らすために回して分球を促し、枯らすリスクを分散するのが得策と思えてきた。そうすれば室内の目の届く場所で、いつでも眺められるのだから。

 だが、アマリリスに失恋を重ねてしまったので、隣に並んで置くのは憚られる。少し離れた場所に置き、三時と九時の方向に背中合わせで置くのだけは避けるとしよう。

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