ペット保険が保険業界にとってアツい理由
ペット保険になぜ業界の注目が集まるのか
保険の業界人向け新聞に保険毎日新聞(通称ホマイ)というものがあるのだが、眺めていると最近明らかに増えてきた分野がある。
ペット保険である。
新聞記事というのは編集者が「ニュースバリューの有無」チェックしており、取り上げられる頻度が多いということは「今アツい分野」とみなしているということだ。未来予測の基本は定点観測であることを改めて思い知らされる。
では、なぜアツいのか。
コロナ禍で自宅の滞在時間が長くなり、独身世帯も増えたことにより、ペットに癒しを求める人が増加した。子供が独立した後、老夫婦の癒やしとして飼う家庭もある。ペット市場が伸長すれば治療ニーズも増え、保険に対する需要が増大するのは自然な流れだ。
保険が最も輝くのは、いざという時のお金を用意することで選択肢を増やす時だ。全てが自由診療の動物医療は治療費が高額になりやすく、まさにうってつけである。
ペット保険ができること/できないこと
これには保険が支払われた後のお金の使い所=動物医療の現状把握が欠かせない。というわけで、早速Amazonで書籍を漁ってみた。
面白すぎて一瞬で読み終わってしまった。要点を抜き出すと以下の通り。
本書で示唆されているように、地方に住んでいる人間にとってはお金だけでなく物理的な距離の問題が大きい。体の小さいペットは長距離の移動をしている間に体調が悪化することも珍しくない。保険は治療費の準備において大いに力を発揮するが、距離に関してできることは交通費を賄うことぐらいだ。
ここで諦めては未来創造はできない。
たとえば、動物の不調を察知するツール提供を付帯サービスとして開拓すれば、ペットたちが手遅れの状態で病院に運ばれる事態を避けることができ、医師と飼い主両方の精神的負担を減らすことができる。
ペットは法律上だともの扱いだが、これもいずれ変わってゆくだろう。ペットを家族同然に可愛がっている人は私の周りでも多い。他人のせいで家族のように可愛がっていたペットが傷ついてしまった時、喪失感のような感情面まで踏まえた損害に着目される日も近いのではないか。
保険会社の蓄積情報を活かす
ペット保険を扱う会社の日々の業務では、動物医療の改善に繋がる情報があるはずだ。一時期流行ったビッグデータ分析というワードは、最近だとめっきり聞かなくなった。大量データを扱うのは蓄積の仕組み作りや保管容量の確保など、決してタダではない。
その費用に見合うだけの成果を上げる必要があるのだが、実務者の直感をなぞるだけの新規発見がない分析結果を作って爆死している事例が後を絶たない。
漠然とデータサイエンティストを雇うのではなく、「ペット保険の支払率改善を目指す」など会社側でミッションを明確に設定し、現場を知っている医療関係者を引き抜いて混合チームを作るほうが良い成果を生めるのではないだろうか。
シンプルに医師から「よくある病気の予兆」を教えてもらい、統計的裏付けのもと「これをやってくれたら保険料割引します」と飼い主を動物の病気予防に仕向ければ、立派な社会貢献になるのではないだろうか。
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