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生命保険を通じて見えてくる、家族形態の変化と次の一手

保険のお支払手続で見えてきた景色

私が営業現場にいた頃、生命保険の支払手続を行ったことが何度かある。

そこで気づいたのは、「生命保険は人との関係性を否応なしに浮かび上がらせる」商品だということだ。

象徴的なのは、保険金の支払事由に該当した時、請求権を持つ人間に意思能力がなかったケースである。

大金を手にする権利が既に確定しているため、保険会社の責務としてきちんと支払い終わるまでフォローをしていく。

この場合、成年後見制度を利用する手続きを進めることになるのだが、他人の財産の処分権を得ることになるので当然ながら審査があり、手続きに時間もかかる。

ご家族の方がさまざまな苦労をされながら対応する様子を見て、私も遠くに住む親が介護になったら・・・などと思いを馳せた。

事務の目線でいうと、会社としてこれまで全く接点を持っていなかった人間から高額な保険金の請求が来るケースについては、相手の属性が分からない以上どうしても慎重にならざるをえない。

しかも不幸があったタイミングで出会うので、保険会社としてはさまざまなパターンを想定して、感情に寄り添った手続きができるように受け皿を用意する必要がある。

複雑であるが故に、個々人の事務構築能力が試される分野である。

家族形態の変化に見る、イノベーションの余地

生命保険はマイホームの次に大きな買い物と言われるが、値段だけではなく、「家族のあり方と密接に関わる商品である」という点も共通だ。

保険契約は締結時に「誰が保険料を払うのか」「誰に保険をかけるのか」「誰が保険を受け取るのか」の3つを必ず定める。

そして、今の日本は「自分に保険をかけて、自分で保険料を払って、自分で受け取る」形が増加傾向である。

独身世帯の増加や、「生きているが働けなくなったときの保障」を重視する傾向が後押しになっているだろう。

離婚の増加で、「親が子どもにかける保険」が成立しづらくなった側面もあるかもしれない。(子供が未成年だと親権者の同意が必要で、仲違いした元夫婦が相手だとかなりハードルが高い)

これは前述の話の裏返しで、保険業界に新しい側面をもたらしつつある。

なぜなら、「自分のためにかける保険」は加入時に十分な情報を得られている人物が請求者となるケースがほとんどで、手続きをスムーズにするための工夫(システムによる自動判定)がしやすいからだ。

会社によっては最初から「自分に保険をかけて、自分で保険料を払って、自分で受け取る」形態しか加入を受け付けない商品もある。

この「顧客属性が分かっているゾーン」にフォーカスした商品やサービスは、まだまだイノベーションのチャンスが眠っていると感じる。

ちなみに私の経験上でいうと、「利便性向上のために足りない情報は何か?」→「ありものの情報を組み合わせて、近似値でもいいから欲しい情報に肉薄できないか?」という順番で考えると、突破口が開けることが多かった。

新規サービス創出を考える人たちの参考になれば幸いだ。

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