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And the livin' is easy

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他のクリエイターさんの記事で感銘を受けた記事。ブルース調。
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2023年9月の記事一覧

【一縷(いちる)】

そう彼女の愛情は一人分しか無かった。 その対象が僕から君に移っただけのことだ。 とはいえ君に恨みなんてあるはずもない。 だから本当に感謝している産まれて来てくれて。 あのときグズる君に精一杯の愛情を伝えた。 「お腹が空いたのかな?」 「それとも眠いのかな?」 「分からなくてごめんね…」 「でも君のことが大好きなんだよ…」 そっとぎゅっと抱き締めた。 もしも僅かでも残るものがあったのなら嬉しい。 コンビニで幼児を連れている父親を見掛けた。 「パパあれ買って!」 「ダ

アナタは怒る人ですか?

満員電車の中、毎日のように流れるアナウンス。 「お忙しい通勤の時間帯、電車が遅れまして申し訳ございません」 理由の大半は人身事故、体調不良者の救護。今朝はお客様同士のトラブルだった。 電車や設備の不調ならいざ知らず、そのほとんどは駅員さんのせいじゃない。 それでも謝らなければならないのは、とりあえず怒りをぶつけたい、そういう人たちがいるからだ。 サービス業で働いていた時、私自身もそうだった。もう一生分くらい謝った。申し訳ございません、申し訳ございません。 その大半

臆病者が自由を手に入れた話でも聞いてみないかい【三話】

瞼を開くと、まだ窓から光は入ってきていない。 時計を見ると午前3時。 まだベッドに入って一時間程度だ。 ぼんやりとした頭で思考を巡らせる。 憧れていた沖縄生活も、半年が過ぎていた。 この生活を始める前に、なんとなく考えていたことはあらかた済ませた。 行きつけの食堂、居酒屋、そば屋も出来た。 毎日ブラブラと大好きな街を歩き、気になった店に入り酒を飲む。 時間を気にすることなく、ビーチで横になる。 そんな毎日を夢見て頑張ってきた。 はず、なのだが。 何か胸の奥に満たされ

大人になった私たち

夏の終わり 夏が終わっただけでなんかまた寂しくなって でもだんだんと涼しくなるんだろうなって考えたら それも少し楽しみで 久しぶりの日本の香りやさしさ空気 タバコ臭い喫茶店 そこにいる新聞を読みながらコーヒー片手にいるおじいちゃん あーこのまま時計が止まってくれたらなって思った 未来から誰かが現れて教えて欲しいな 私がどうなってるのかそんなことを考えながら 1人でいる喫茶店幸せででも泣きそうで 2年ぶりに3人で集まったのかな 思ったよりも時間が早くて大

わたしは ひとり

 わたしには もう  ううん はじめから  そう きっと そう  はじめから いない  だれも そんなひと  いなかった だれも  わたしには はじめから  うぬぼれては いけない  わすれては いけない  わたしには そうなんだ  だれも いない  わたしの はなしなんて  きいてくれる ひと  どこにも だれにも  いない いない から  わらえば いいんだ  あかるく はなせば いい  それだけで いい  それだけで いい から  

家族葬の理想と現実

ふとカレンダーを見ると間もなく秋のお彼岸です。 ああ、来週末あたりはオヤジの墓参りにいかないとなぁ、先月のお盆に行ったばかりなのに・・・そんな事を考えていたら、葬式の事を思い出しました。 父は長男では無かったので、我が家にはお墓が無く、僕自身も結婚式は何度も呼ばれていますが、お葬式にはほとんど参加した事が無く、冠婚葬祭の、こと「葬」に関しては全く知識がありませんでした。 同じような境遇の方もいるかと思い、当時を振り返って葬式の理想と現実を書いてみようと思います。 (3000

くっだらね。

 高速道路の分岐を間違えた。  乗ったのは[東部湯の丸]というインターチェンジで、そこから[長野方面]と[東京方面]の2カ所に分岐するのだが、逆の方面に進入してしまった。  言い訳をすれば、大雨で周りがよく見えなかったのもあるし、まさか何度もこの道を使っている自分が間違えるとは思わないという慢心か。愚かなことに間違った方向へ盲目的に2区間、時間にして20分ほど走ってようやくミスに気がついた。  2区間遡ったインターチェンジで降りる。モニターに表示された通行料金は420円