見出し画像

ECサイトに今すぐ取り入れるべき、サブスクアイデア集

現代ビジネスにおいて、サブスクリプション型サービスを作ることはとても強力な販売戦略となっています。それはECサイトにとっても例外ではありません。

毎月1日に「売上0円にリセット」されるのと、
毎月1日に「売上が数十万〜数百万からスタート」できるのとでは、キャッシュフローの安定性がまったく異なってきます。
流行や季節に影響されたり、自転車操業に陥る危機を回避するというだけではなく、新商品の開発や新しいビジネスモデルに挑戦していくためにも、毎月一定の安定した売上というのは非常に重要な要素です。

しかしながら、物販ECの場合はデジタルデータのように在庫が無限にあるわけではないので、サブスク型のサービスは非常に作りづらいものです。

そんな中でも、物販ECにうまくサブスクビジネスを取り入れる方法はないのでしょうか?

というわけで今回は、物販ECにおいてのサブスクリプションについて、考察したいと思います。

ECサイトのサブスク6つの型

物販ECサイトでよくあるサブスクリプション型のサービス事例をタイプ分けすると、概ね以下のようなものに分類されるのではないでしょうか。

  1. 定期配送型:毎月一定の金額を支払うことで、商品が定期的に届くサービス。例えば、お菓子やコスメ、健康食品などを定期的に届けるサービスがあります。

  2. セレクション型:ショップのおすすめ商品やお客様の好みに合わせて商品を提供するサービス。例えば、コーヒー豆やお茶っ葉を毎月定期的に届けるサービスがあります。

  3. リピート優遇型:異なる商品を頻繁にリピート買いする人が定額会員になることで割引などの特典を提供するサービス。仕入れサイトなどのBtoBなどに相性が良い。

  4. 保証型:毎月一定の金額を支払うことで、破損や故障の際に無償交換をしてくれるサービス。例えば、PCやスマートフォンの破損保証などがこれに該当します。

  5. メンバーシップ型:物販商品を入り口としつつ、デジタルコンテンツやオンラインサロンなども提供するサービス。例えば、食器や食材をメインに販売しているサイトが、派生サービスとしてレシピや作り方動画を定額制で配信したり料理サロンを開くなどの方法があります。

  6. レンタル型:購入ではなく1ヶ月以上の長期レンタルで毎月課金するサービス。家電、家具、車などの中長期レンタルがこれに該当します。

取り扱っている商品の特性やジャンルに合わせて、まずはこのいずれかの型に該当するサービスは作れないだろうか?と検討してみましょう。

例えば商品の中に消耗品がある場合には、定期配送型が取り入れやすいですし、たくさんの商品を持っていたり頻繁に新商品を発売している場合にはセレクション型を取り入れると独自のサービスが生まれるかもしれません。

いまは顧客もサブスク慣れをしていますし、他業界のモデルケースも増えているので、うまく自分たちの業界に転用できると大きなビジネスチャンスとなります。


面白いサブスクアイデア集

サブスクサービスはアイデア勝負のところもあります。実現性はさておき、思考実験として、既にあるサービスもないサービスも含めて、思いつくままに列挙してみます。

  1. ハンドメイドのサブスクリプション:定期的に新作のハンドメイドアイテムを届けるサブスクサービスを提供することが考えられます。顧客はファンでもありパトロンのような関係性になるかもしれません。購入者の好みに合わせたカスタマイズオプションを設けたり、専用アイテムを作ることで、創作活動の資金調達が可能となります。

  2. ペットフードのサブスクリプション:ペットの種類や年齢など消費量に合わせて定期的にペットフードを届けるサブスクサービスを提供することが考えられます。未開封の返品や種類変更にも応じれると契約への安心感が増すかもしれません。

  3. 家庭菜園のサブスクリプション:季節に合わせた苗や種を定期的に届けるサブスクサービスです。自分で野菜を育てる楽しみや健康志向の高まりを受けて、一定の需要がありそうに考えられます。

  4. おもちゃのサブスクリプション:定期的に子供向けのおもちゃを届けるサブスクリプションサービス。子供の成長に合わせて、年齢に合わせたおもちゃを期間レンタルやセレクション提供をすることで、顧客のニーズに合った商品を提供することができます。

  5. アート作品のサブスクリプション:定期的に新しいアートを届けるまたはレンタルするサブスクリプションサービスです。ショップ側からのおすすめもしくは顧客からの希望商品をセレクトしてもらい、季節やテーマに合わせてアート作品を配送するようなビジネスが考えられます。

  6. お花のサブスクリプション:季節性があり枯れる前提のお花は定期配送型やセレクション型のサブスクと相性が良いでしょう。もし地域ビジネスだとしても配達可能地域を限定しておくなどのルール決めを行うことで、ネットで告知ができ、注文・決済・アフターフォローまで行うことで利便性が増したり安定収益となります。

  7. お酒のサブスクリプション:クラフトビールやワインを提供するECサイトで、定期的にお酒を届けるサブスクサービスを提供することが考えられます。同じ商品の定期配送型や、おすすめ商品のセレクション型など、多彩な組み合わせニーズがあると考えられます。

  8. ニッチカルチャーのサブスクリプション:特定のテーマに沿ったカルチャーグッズを定期的に届けるサブスクサービスです。毎月発売される新商品をコンプリートしていく某書籍サービスなどをモデルケースとして、ニッチカルチャーを攻めると面白いかもしれません。

  9. スポーツチームのサブスクリプション:サッカーや野球などのスポーツチームの公式グッズを提供する物販ECサイトでも、サブスクサービスを提供することが考えられます。ただし、毎回同じグッズを届けるのではなく、ファンクラブの特典のようにそのシーズンや試合に合わせてグッズを変えたりコラボ商品を作ることで、ファン層の拡大や定期的な収益の確保が期待できます。

  10. フィルター用品のサブスクリプション:空気清浄機や浄水器など、定期的に交換用フィルターを提供するサブスクサービスです。顧客にとっても注文の面倒さや買い忘れを防止できるメリットがあり、継続的な利用を促進することができます。

  11. 自転車のサブスクリプション:自転車ECサイトで、メンテナンスやレンタル型のサブスクリプションサービスを提供することが考えられます。地域限定サービスになるかもしれませんが、自転車愛好家や都市部の通勤者などに人気が高まるかもしれません。コミュニティへ発展していく可能性もありそうです。

  12. 健康管理のサブスクリプション:ヘルスケア用品を取り扱うECサイトでも、健康に必要な食事やノウハウ、サプリメント、健康診断などを提供することで、新しいビジネスモデルに発展していくことが考えられます。

以上、いくつかのサブスクリプションサービスのアイデアを列挙してみました。
パトロン型やファンクラブ型など、あまりECサイトに馴染みがなかったビジネスでも、うまくサブスクビジネスを取り入れることによって、顧客との関わり方そのものが変わってくるかもしれません。

商品やサービスによっては、定期配送的なものだけでなく、限定商品の提供や会員限定イベントの開催などの特典を提供することも考えられますし、顧客のフィードバックを積極的に取り入れることで、サービスの改善や商品の改良につなげることもできます。

上記のような工夫を行い、たとえ在庫に限りのある物販ECであってもサブスクビジネスを積極的に取り入れていくことが可能となります。


一方で、サブスクビジネスには注意すべき点もいくつかあります。
ここであたらめて、サブスクビジネスのメリット・デメリットを考えてみましょう。


ECサイトにサブスクビジネスを取り入れるメリットは?

ECサイトにサブスクリプション型の販売手法を取り入れるメリットは、概ね以下のものとなります。

  1. 定期的な収益の安定化:サブスクリプション型の販売手法は、定期的な収益を見込めるため、事業の安定化につながります。毎月の売り上げが予測できるため、販売計画や在庫管理などが容易になります。

  2. 顧客ロイヤリティーの向上:サブスクリプション型の販売手法は、定期的に商品を提供するため、顧客との接点が増えます。顧客はサービスに慣れ親しんでくるため、長期的な顧客ロイヤリティーの向上につながります。

  3. 顧客の利便性の向上:定期的に商品が届くことによって、顧客の買い物の手間が省けるため、顧客の利便性が向上します。また、顧客が商品の再注文をする必要がないため、ストレスや手間を軽減することができます。

  4. 商品の継続的な改善:定期的に商品を提供することで、顧客の声を直接聞き取ることができます。そのため、商品の改善やカスタマイズがしやすくなり、顧客にとってより良い商品を提供することができます。

  5. 顧客の購入意欲の増加:定期的に商品やメールを受け取る状況が生まれるため、ショップ側からのキャンペーン案内や新商品の案内を行うことにより、顧客の購入意欲が増加しやすくなります。また、継続購入しているショップのため信頼性が高まり顧客情報を入力する手間も省けるため追加購入のハードルは下がります。

これだけ見ると、ぜひともサブスクビジネスを取り入れたくなるところですが、合わせて以下のデメリットも見ておきましょう。


ECサイトにサブスクビジネスを取り入れるデメリットは?

ECサイトにサブスクリプション型の販売手法を取り入れることによるデメリットは以下のようなものが考えられます。

  1. 顧客離れのリスク:サブスクリプション型の販売手法は、長期的な契約を結ぶため、顧客にとっては負担になる場合があります。顧客が商品に興味を失ったり、サービス内容に不満を持った場合、解約や退会のリスクが生じるため、顧客離れにつながる可能性があります。

  2. 競合との差別化の必要性:近年、サブスクリプション型の販売手法が一般的になってきたため、競合が増えています。そのため、自社のサブスクリプションサービスが他社と差別化されていなければ、顧客の取り込みが難しくなる可能性があります。

  3. 商品の品質と在庫管理の重要性:サブスクリプション型の販売手法では、定期的に商品を提供するため、品質や在庫管理が重要となります。商品の品質が低下した場合や、定期的な配送ができなくなった場合、顧客に不信感を与えることになり、解約や退会だけでなくショップの評判を落とす可能性があります。

  4. サービスの価格設定の難しさ:サブスクリプション型の販売手法は、商品の定期的な提供を約束するため、絶妙な値決めをしたり価格改定の難しさがあります。一定期間の契約を結ぶため、ショップにとっても顧客にとっても適切な価格設定を行う必要があります。

  5. 収益の安定化に向けた取り組みの必要性:定期的な売り上げがあるため、収益の安定化につながるサブスクリプション型の販売手法ですが、売上が一定以上でなければ利益を出すことができません。そのため、顧客の獲得や維持、商品の改善など、収益の安定化に向けた取り組みが必要になります。

このように、サブスクビジネスは「信頼・在庫・価格」の長期契約がショップ側にとっても重荷になる場合があります。
サブスクは顧客との”約束”であるため、ショップと顧客がWin-Winの関係を築けることがとても重要になってくるのです。


詐欺まがいのサブスクに注意!罰則もあるよ。

実際、昨今のサブスクビジネスの流行に伴って、残念ながら詐欺まがいの悪質なサブスク事例も生まれてしまいました。

例えば、顧客がサブスクであることを認識せずにいつの間にか定期課金されてしまっていたり、2回目以降の料金に変更があったり、解約方法が見つからなかったり、ショップに連絡しても繋がらなかったり、といった事例が多発してしまったのです。

これは一概にショップ側だけが悪いわけではないケースもあったのかもしれませんが、やはり、じっくりと顔を合わせて説明のできない”ネット上”からこそ、ショップ側もトラブル回避のために契約内容を分かりやすく掲載しておく必要があります。

上記のような背景から、2022年6月に「特定商取引法」が改正されました。

改正内容をざっくり解説すると、以下のような内容です。

  • ショッピングフローの最終確認画面に、

  • 購入される商品やサービスの契約内容を、

  • 購入者が見落とさない位置に、

  • 分かりやすく書くこと。

詳細な記載例は消費者庁のガイドラインをご確認いただきたいのですが、明確な基準が曖昧なところも多いので、勘どころとしては、上記のように顧客視点に立つことだと思ってもらうと良いのではないかと思います。

また、クレームがあった場合には早期に快く対応してしまう。という潔さも現代ECには大事かと思います。

Amazonをはじめとした外資サイトでは、クレーム対応を長引かせるよりもさっさと返品交換したほうが悪評も立たずコスト安である。と合理的に割り切っているショップも多いように感じます。
IKEAやH&Mなど店舗ビジネスでもそうですし、YOOXやSHEINなどのファッションECでは試着ができないメリットを逆手に取り、返品対応を気軽にすることで安心してネット購入を促していますね。
グローバル企業という規模感の違いはあれど、日本サイトも学ぶべきことが多いなと感じさせられます。


サブスクは顧客との信頼関係が大事。

このように、一見メリットばかりに見えてしまうサブスクビジネスも「儲け」にばかり目が行ってしまうと、ショップの信頼や評判を落とすという逆効果になることもあり得ます。

一方で、”顧客と長期的な信頼関係を作れる“という意味では、とても理想的なビジネスの在り方だと言えるでしょう。

サブスクビジネスを始めると、「契約させたい。解約させたくない。」という心理が働いてしまいがちですが、上手くいっているサブスクサービスを見てみると「気軽さや、風通しの良さ」があると感じられます。

具体的には、

  • 短期(1ヶ月単位)で契約できる

  • 簡単に解約できる

  • 事前説明が分かりやすい

  • 問い合わせ対応が丁寧

  • 価格以上の満足が得られる

上記のようなイメージでサービスを作ると成功しやすいでしょう。

もちろん、長期的に良いサービスをクオリティ高く提供し続けるためにも、自社にとっても利益はしっかりと上げれるサービス設計にしておくことが何より大事です。


まとめ

このように、物販ECにおいてのサブスクサービスは「長期的にWin-Winとなる条件」を満たすことがとても大事です。
顧客ニーズとビジネスメリットをふまえて、上手くサービス設計することができればショップの認知度も信頼度も利益も増していくでしょう。

なお、他社のモデルケースを探していく時の注意点としては、世に出回っているサブスクサービスの中には、利益度外視で先行投資を行なっているケースも多々あるのでその点は注意が必要です。

たとえば投資家から資金調達するベンチャー企業であれば、リスクを取って赤字でもまずはユーザーを確保するところから始めることができますが、おそらく現時点ですでに物販ECをされている企業にとってはキャッシュフローの面でこういった戦略が難しい場合も多いのではないかと思います。

その場合、少し見方を変えて「リピーターを作るためのサービス」を目指す。といったように捉えてみると、他社にはないコアな独自サービスを生み出せるかもしれません。

ワンタイム販売もサブスク販売も、物販も無形サービスも、ECもリアル店舗も含めて、既存の概念に捉われず、柔軟な思考で顧客と接することがこれからのEC事業には必要なのだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?