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「この車中泊マンガが凄い」2022秋!


・はじめに


昨年書いた『「この車中泊マンガが凄い」2021春!』からもうすぐ一年半。

この記事内では下記の車中泊マンガを紹介させていただいた。

 ・今夜は車内でおやすみなさい。(小田原ドラゴン・講談社)

 ・渡り鳥とカタツムリ(高津マコト・ワニブックス)

 ・離婚して車中泊になりました(井上いちろう・朝日新聞出版)

 ・山と食欲と私(信濃川日出雄・新潮社)


さて、いつの間にか車中泊を題材にしたマンガはさらに増え、内容のバリエーションも多彩になってきている。今回はそんな車中泊マンガについて纏めてみた。

※ 見だし画像は筆者の今年の春の車中泊状況。ノートPCじゃなく、デスクトップPC(DeskMiniだけど)を車内で使うという謎のロマン装備。でも旅に出てないなぁ……(笑)


・異世界車中泊物語 アウトランナーPHEV(芳賀概夢・灯まりも)

「会社で大きな失敗をした会社員の大前。彼は重要資料の入ったノートPCを抱え、一枚の写真に惹かれて買った『九菱自動車アウトランナーPREVエボリューション』に乗ってEXPASA足柄(足柄サービスエリア)へと逃避していた。

そんな大前が社内で寝ているといつの間にか異世界へ。そんな世界でケガをしていた配達業が生業の獣人美少女キャラと出会う。

成り行きでキャラとの車中泊生活を始めるコトになった大前と最強クラスの走破力と蓄電・発電能力をもつPHEV-SUVのアウトランナー、異世界でどう活躍するのだろうか……」

アウトランナー……フロントやハンドルに三菱マークが堂々と輝いているのだが、もちらんモデルは三菱の誇るSUV、4WDのPHEV車な現行アウトランダー。あれこれ言われる三菱車ではあるが、四駆のための駆動系と電装技術については強い。

EVがもてはやされる時代だが、それを有効に使うインフラがまったく追い付いていない。充電スポットもそうだし、EVが皆が期待する程に普及すると、ベースロードとなる原発か火力発電所の爆増が必要だ。自宅の太陽光発電でと夢見る人は多いが、それをちゃんと運用できるバッテリーを含めた検討が必要なのに、それが現状では必要とされていない。

PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)とは自宅や充電スポットで『も』充電出来る車である。充電した電気が足りなくなると搭載したガソリンエンジンで充電し、かつ状況により走行にガソリンエンジンの駆動も割り振れる、もちろん回生ブレーキでも充電出来る、現時点では最高の自動車システムだ(断言)。

そんなアウトランダーは最大1500W出力+20kwhのバッテリーを備えており、公式HPでは一般家庭の12日分の容量としている。これを車内のコンセントで使えるし、V2Hというシステムを用意すると戸建てに直接電力供給も出来る。

そんな最強システムを異世界に持ち込んでどうするのか、そして最強と言ってもガソリンは切れるので、それをどう凌ぐのかというマンガである。

原作は7年前からみたいだから、アウトランナーは先代のアウトランダーPHEVであろう。キレッキレのデザインに変わった現行アウトランダーがベースとなっているアウトランナーがどう活躍するのか。そして電力に余裕ある異世界車中泊にはどんな楽しみが?

やたら可愛いキャラちゃん(まさか元ネタはマツダのAZ-1のOEMなスズキのキャラか?)も含め、今後が楽しみ。特になろう異世界フアン、車バカでランエボやデリカな三菱……もちろんアウトランダー乗りの方には是非楽しんでもらいたい作品である。勧めてくれた友人に感謝したい。

・道草寄子の食べ走り(風光めいび・講談社)

「経理専門の派遣社員な寄子さん。ボンクラ正社員に囲まれる中での唯一の楽しみは週末の車中泊。金曜日は相棒の軽キャンピングカー『キャン太』を会社近くの駐車場に止め、ひたすら定時を待つのだ。

パンク等のトラブルにも見舞われつつ、SAやRVパークでの車中泊を楽しむ寄子さんであるが、ある日RVパークで知った顔の人を見つけてしまう。その人は現在の派遣先の仕事の鬼な猪狩さん。

休日も仕事の糧に動いている猪狩さんに捕まった寄子の車中泊生活は……」

『キャン太』はちゃんとしたキャンピングカービルダーが架装して販売している軽キャブコン。モデルは~というか、社名ステッカー張ったままだからバンショップミカミさんの販売しているダイハツハイゼット(ジャンボなのかな?)ベースのテントむしか。

軽キャブコンは軽トラベースとはいえ、運転席から後ろをFRPなどで大改造しているため、そこそこ広い(過度な期待はNG)。『キャン太』は天井を上げられるポップアップルーフにしっかりした電装(サブバッテリーと走行充電器)、水が出るシンクに電子レンジもついている、さすがのビルダー製のキャンピングカーである。

立って着替えられる、顔も社内で洗える、足を下げてテーブルでご飯が食べられる。もちろん煮炊きも出来てレンジで簡単調理も当たり前。軽キャブコンの魅力たっぶりの作品。

非力と風に弱い弱点と共に、荷物の収容能力に難のある軽キャブコンではあるが、完璧なキャンピングカーなどないし、寄子のような週末中心の車中泊生活には完全にフイットしたキャンピングカーなのだ。

ビルダー製の軽キャブコンによるしっかりした車中泊を描く作品としてオリジナリティがある。

個人的に残念なコトが一点。仕事時はアンダーリムのメガネを愛用している寄子さんだが、休日はメガネレスなのでメガネフェチとしては残念なのだ。

もちろん仕事と車中泊のオンオフの切り替え表現のアイテムなので、マンガとしては正しいのだが。でも一話の通勤時はメガネが……(笑)

近々の10月21日に2巻発売予定。


・廃バスに住む(イチヒ・KADOKAWA)

「美人の高校教師、雨森はづきには秘密があった。自宅アパートのトラブルで数週間の退去になり、学校裏の空き地に廃棄されたバスで暮らしているのだ。

ドアすらない廃バスであるが、マイペースでドコででも寝られるはづきには問題ない。七輪と長机とパイプ椅子とTVとスマホぐらいで生きていける。

さて、そんな廃バス生活だったのだが、バスには昔からの先客がいた。秘密基地としてバスを使っていたのははづきの高校の二年生の大家くん。近くて遠いふたりの廃バス生活はゆったりと進むのである……」

美人教師がドアもない廃バスに住む。ありえないシチュエーションなのであるが、マイペースなはづきによるゆったり流れる時間が心地よいマンガである。

走らないバスでの生活を勝手に車中泊と言っていいのか?

いや、まあ車中に泊っているのは間違いない。どちらかというと車中泊の秘密基地な部分に特化したマンガといえる。はずきがバスの中で行うのはよく寝て・よく食べて・携帯機で昔のゲームなのだ。

そんな美人のはづき先生は良くお腹を鳴らす。シンプルな生活であまり食べてないように見えるが、食べるシーンは多い。もしかしたら美女のお腹を鳴らすフェチを取り込むために。寝姿が多いのも?(笑)

はづきと大家、ついでにカラスの秘密基地、秘密はいつまで続けられるのだろうか?

道草寄子の食べ走り2巻と同じ10月21日、3巻が発売予定。


・車のおうちで旅をする(いとうみゆき・KADOKAWA)

「学校生活が終わった作者のいとうみゆきさん。住み込みのバイトで稼ぎ(ん、今期流行りの冥途的なトコかな?)、向かうは海外、ニュージーランド!

ただし普通の海外旅行ではない。ワーキングホリデーを利用した一年間の旅で住処は車中泊。ニュージーランドで中古車を買い、それを家として暮らすのだ!

44鍵の小さなキーボードを抱えて過ごした車は三菱グランディス(シャリオグランディス)の『グラ子』。テント・ガスコンロ・寝袋・長靴などなどついて十四万円+修理費六万円の『グラ子』を車のおうちとして、ニュージーランドを駆け巡る青春がここに始まったのだ……」

海外車中泊生活とは凄い体験。コミックエッセイだけど、イラストと文章による解説ページの中にときどきマンガがあるというスタイルの本である。

ところが、セツ・モードセミナー出身という作者のデザイン能力がとても高く、そのイラストと文章のレイアウトは解説ページをまったく飽きさせない。

特出すべきはやはりイラスト。素晴らしい。ページをめくる毎にほんわかとさせる、でも小さくシンプルでも車種がわかるイラストとして完成された絵だ。ひとつひとつが素晴らしいイラストは飽きるどころか、小さなカットにすら虜にされてしまう。

マンガ部分はパートカラー(フルカラー部分もある)、そして解説ページのイラストはフルカラーとメリハリがしっかりしていて構成が上手い。

ニュージーランドは日本でいうキャンピングカー登録をSCC、普通車をNSC(not吉本)と分けて扱い、キャンプ場の利用をしっかりと分けられるようで、日本よりも進んでいる感じがする。

車中泊だけでなく、ニュージーランドで旅する・暮らす・働く・出会うが綺麗に纏められている、1ページ1ページが素晴らしい作品。出会えてよかったと思う本である。作者も編集者も素晴らしい仕事をしている。


・しゃしゃごもり(さわむらリョウ・KADOKAWA)

「連載をめざすマンガ家の山田一花は超絶な人見知り。外出すらままならないコミュ障の典型的ぼっちである(今期アニメ化されたぼっち・ざ・ろっく!の主人公、後藤ひとりと同等かそれ以上)。

担当編集者に外の世界に出て取材しろと言われるも、近所のカフェにすら入れない一花。そんな一花が人に会わずに外出する方法があった。自宅近くでカーシェアされている車(スズキのラパン)に乗って、車内から出ないで外の世界を回るのだ。

だが、車に乗っても人と話すシーンがまったく無いわけではない。給油のためのセルフスタンドで悪戦苦闘する一花の前に現れたのは金髪・ピアスで一花の苦手な怖い人、ハルカ。

そんなハルカ、涙目GDBのインプレッサWRXSTiに乗るスバリストな新担当編集者の土居。そんな二人との出会いは一花を変えるのか、変わるのか……」

ネット仲間から教えてもらった一品。

だが、現在発売中の1巻ではまだ車中泊は出てこない。一花初の車中泊話は2巻の巻頭になるハズの7話からである。車中泊が主役ではないが、人見知りで車内から出られない一花という主人公設定は面白いし、後に車中泊が主役になる可能性も秘めているというコトで選出。

正確にはカーシェアマンガという新ジャンルになるのかなぁ(笑)

最初に見た時はあまりの一花のコミュ障っぷりで、出オチで終わるのかと危惧したけど、順調に連載は面白く進んでいる。

ハルカのバイト先がコスモのスタンドだったり、オートバックスが実名だったり、(カーシェアの会社はスペルがちょっと違うが)実在する車社会が出てくるのは車バカには楽しみの一つ。

マンガ自体もどんどん面白くなっているし、連載がコミックNewtypeなので無料で連載を追えるし(毎月庭つき大家付きも読めるし)、新人マンガ家マンガとしても面白いので読んで欲しい作品である。


・モバイルハウス暮らし(旅する漫画家シミ)

「世界一周の後にネットで見つけたモバイルハウスのワークショップに参加した旅する漫画家シミが、三か月かけて製作したモバイルハウスで相棒のマトリョーシカさんと暮らす旅……ではなく暮らす日常を描く。

くるまのおうち、モバイルハウスに住む二人の生活。旅マンガじゃないといいつつそれなりに車の話も。

しかし、車内で生活しているうちに『うごくひきこもり』になってくるふたり。そして狭い中での共同生活は……」

旅の要素ゼロと言っているが、色々な所に移動をしてイベントに出ていたりしている。でもそれはやっぱり旅ではなく、移動して暮らす彼らの日常なのだ。ワイド4コマ・3コマ、普通のコマ割りと色々あるが、基本は1ページマンガ。内容は多種多様。

もはや車上・車中生活者であるが、自作キャンピングカーによる車中泊に変わりはない。モバイルハウスとは軽トラに自作した部屋を載せたキャンピングカーである。

自作軽キャンピングカーとしてYoutuberで流行って、結構な数の動画が上がっている。楽しそうだからやってみたい……でも軽トラはガタイが良いと運転がツラい。そして運転をガチで楽しむには某全日本ジムカーナ選手くらいの技量が必要だと思う(笑)

そんな狭いモバイルハウスの中でふたりで生活する。使い方は完全に自宅兼仕事場。そんな生活は旅とか日常を超えたトコにある感じもする。

1コマなんでサクサク読めて、ちゃんと面白い。オマケにジャズやサウナの話(1ページではない)もあるけれど、こっちも。

上下巻で各Amazonの電子書籍Kindleで0円にて販売中。

モバイルハウスの作成について纏めた「モバイルハウス製作日誌」は1~6巻を100~390円で販売中。kindle Unlimitedでも読める。車中泊は車を作る方が楽しい派としてはこれも面白かった。モバイルハウス製作に興味のある方にはオススメ!


・おわりに


車中泊マンガは車中泊ブームと共にどんどんと増えている。よくホテルに泊まったほうがいい、車中泊にいい所があるの?と聞かれるが

・ホテルの予約がいらずチェックイン時間を気にする必要もない
・コースの自由度が増える。公共交通機関の時刻にも左右されない
・慣れれば完全に自宅気分。公共マナーを守れば車内はだいたい自由
・24時間駐車が可能でトイレや自販機が使える道の駅が増加して便利
 (車中泊禁止の道の駅もあるから、もちろんそれは調べる)
・道の駅で知らなかった特産品や名物料理に出会う楽しみ
・色々と車を改造していくのが楽しい
・車中泊便利グッズを探して悩むだけでも楽しい
・Wi-Fiルーターやテザリングなどで車でもネット環境が作れる時代
・なんといっても、歳をとっても動く秘密基地にはロマンが

などがいい所だと思う。正直マナーがなってない人に出会ったり、水だらけになったトイレの洗面台を拭いてくるハメになったりする時もあるけど、まあ、あんがいと楽しいのだ。

しっかりと車中泊するマンガの初めてはGTO(藤沢とおる)の内山田教頭がハイソカーから軽キャンピングカーに乗り換えた時だろうか?
いや、ラーメンジェットキャリィでお馴染みコンポラ先生の大ちゃん先生が大型バスコンで生活していたっけ……。

とにかく今後も面白い車中泊マンガが出てくるコトに期待したい。


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