人魚の魚屋さん。

馬海白町3丁目5番地4にある魚屋さんは、実は、人魚が経営している。そして実はやくざである。さらには裏切り者の闇売買人である。
というのも、人魚にとっての魚とは、愛でるべき対象であってともに微笑むべき友人であって、食べる美味しいとかの関係ではない。人魚と魚は古来より友好関係をむすんだ、永遠の盟友なのである。ところが一部の人魚はその久遠ともいえる長寿がゆえに、人間なんて生きものを知ってしまって、彼らの食生活まで知ってしまい、アラやだこれって彼らに高く売れるじゃない、と自分のまわりをふよふよと泳いで遊んでる魚たちにブラックな視線を向けてしまった。

ちょっとこっちにきて、この箱に入って、あの手この手で各地の魚をだまくらかして誘拐していく悪党・人魚。
誘拐された魚は、地上にもっていかれて、人間へと化けた二本足の変身済み人魚が売りさばく。まさに闇のマーケットである。闇市である。義理も情緒もなんもなくただ金儲けとそのお金で人間世界で遊ぶことだけが目的だ。残酷なことである。

極悪非道の人魚による魚屋さんは、けっこう全国にぽちぽちと展開されているし、あるいは居酒屋に魚を卸すなどしているが、そんな話は人間には知られていない。なんせ人魚の闇家業、魚身売買、つまるところ人間にしたらば他人事である。
知らないで当然だ。哀れな魚はたたき売りなんかもされてるが。

この世界、案外と知らないだけで、ブラックかつビターな真実はありふれている。




END.

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