エイリアンいてこそ桶狭間

この世は戦乱に満ちてきた。まだ実感がわかないが、宇宙人的な第六感がサトにささやく。大学生であるサトは、環境学を専門にしていて動物行動学のテキストなど暗記するほど読み込んだ。

そんなサトは、人間はぜったいに泡になって消える人魚姫のような美徳は、身につくことがない、確信するにいたる。

毎日のニュースで。
アルバイトで酒屋に出て。
大学をあるきまわって皆の世間話を小耳にして。

(わたしたちって、みにくいのよね)

見にくくて、醜い。
それが人間なのだろう。

人口爆発が起きてしわ寄せは必ずある。食料も土地もないから、快適に暮らせる面積が少ないから、奪い合いになる。そうすると人類総じて桶狭間の戦いだ。

戦国、戦乱、世界規模のそれは、はたして核戦争だろうか。それとも強国による支配だろうか。もしかすると植民地や奴隷制度の復活かもしれない。

核戦争だ、なんて簡単に言うけれど、核の使用は住める面積を減らしてしまう。

サトは、私なら、最近はよく思う。
私ならこっそりと手を取りたい人間をえらんで、スクラムを組んで、人間をより分ける。上層の人間、下層の人間に。

そして、全く異なる暮らし方をするのだ。させるのだ。
これがいちばん都合がいい。
下層は、はいあがれないぐらい、過酷にしておく。都合がますますいい。

と、なると、もはや戦時下である。
サトは大学の皆を見て、のうてんきに笑う彼らの顔を見て、あきらめに似た虚しさを覚えた。人間が人間に侵略されるとして、それはもはや抵抗の手段がなく。

いっそ、エイリアンからの侵略なら、まだ、人間同士、結束することができたのにね。

やっぱり、私たちの敵は、私たち。


END.

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