深夜は優しいかしら

夜のお時間はやさしいかしら。それとも、奈落に誘う、悪者かしら。優しい仮面をつけているだけの。

わたしには判別ができない。深夜はだってやさしい時間をくれるから。しずかでなだらかな無音の川のような、清々しくも清らかなまっくらをわたしに注いでくれる。

たとえ、仮面の優しさとしたって、それはとっても貴重な時間ではないかしら。

仮面の優しさをずっとつけているから。
だから、深夜がほんとうは奈落の底への入口、迷宮、出口なき深淵への落とし穴であったとしても、それを肌身に体感する時間がいずれ訪れるとしても、気づいたらもう手遅れであったとしても。
嘘をつかれた、そう、知ったときには、もうすべてが過去になり終わっていたとしても。

深夜は仮面を脱がない。深夜の優しさは麻酔どころかエナジードリンクどころかドラッグに匹敵するパワーがある。仮面を脱がないから。どんな人間にも、怪異にも、生きているなら全ての者が不可能なこと、それが、深夜にはできるから。

深夜の闇の優しさは、この惑星からの贈りものだ。
脱がない仮面は、惑星のシステムだからだ。

わたしは、深夜を信頼する。
ゆっくりと安らかに身を委ねる、この闇の冷たさと暖かさに、なんのウラオモテも無いのがわかっているから。

だから、やっぱり、深夜は優しいってことで。結論をよろしいかしら?


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。