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限定。

「期間限定」とか「本日限り」とか限定されると特別感が漂いますね。
それと同時に「無くなっちゃう…!」という焦燥感も、もれなく付いてくるシステム。

今回は温泉宿の「限定」のお話。
自宅から車で1時間ほど走ったところに地元でも有名な温泉街があります。
そこに知る人ぞ知る「1日3組限定」のお宿があります。

このご時世、宿泊者を少数に限定するお宿は需要が高いのかもしれません。
しかも、各部屋に源泉かけ流し温泉付き。24時間入り放題。

ご主人と奥様、そして娘さんの3人のみで切り盛りするこのお宿は
全ての箇所に行き届いた心遣いと温かさが溢れています。

初めて伺ったのですが、ここには深い思い出がありまして。
昨年、そして一昨年に亡くなった旦那さまの祖父母が最後に宿泊した場所です。

おばあちゃんは、宿泊から約1か月後に
おじいちゃんは、おばあちゃんが亡くなった半年後に旅立ってしまいました。

病で横になることが多くなったおじいちゃんは最後にもう1度、この宿に泊まりたいと話していたそうです。
体が弱ってしまい、その願いは叶いませんでした。

今回はその願いを叶えるべく、一族で3部屋を貸し切り、宿泊してきました。

おばあちゃんは、いつも笑顔で、器用で、料理が上手で。チャレンジ精神旺盛。
80歳を超えてiPadを華麗に使いこなし、何でも調べちゃうスーパーおばあちゃんでした。

おじいちゃんは厳しさの中に優しさとお茶目さを兼ね備えていて。
嫁いできた私を「孫の嫁だけども、アンタは本当の孫娘みたいで可愛い」と言ってくださり、最後まで可愛がってくれました。
家族みんなの良いところを必ず言葉にして伝えてくれる素敵なおじいちゃんでした。

生前、一緒に旅行に行ったとき
「おじいちゃんとおばあちゃんの夫婦仲良しの秘訣は何?」と聞いたことがありました。

その時おばあちゃんが一言、
「忍耐だ。」と言ったことが私の中で強烈な記憶として残っていて。

いつも穏やかでニコニコのおばあちゃんが、凄くキリッとした表情で言い切ったのを今でもハッキリ覚えています。

あとからお義母さんに聞いたけど、
昔を生きた人だから。
その頃の夫婦像は夫の三歩うしろを歩くことが当たり前の時代だったし、
若い頃のおじいちゃんは厳しかったから。
いろいろ大変だったから「忍耐」なんでしょう、って。

今と昔では「忍耐」の度合いが違うかもしれないけど、
いつの時代も夫婦はいろいろあるんだな…と感じたエピソードです。

夫婦だから、いや…夫婦だからこそ
ちょっとした意見の違いや見解の違いがあると許せなかったり、悲しくなったりする。
それも全てひっくるめて、理解して、歩み寄って、時に譲ったり、譲られたりするのが家族なのかな、と。
旦那さまの祖父母の思い出が残る旅館に宿泊して、改めて思ったのでした。

だからお宿に着いて早々、めっちゃ嬉しそうに「源泉垂れ流しだね♥」と言い放った旦那さまを許してあげることにします。笑

か・け・な・が・しっ!!!


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