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日本におけるP2P電力取引のいま: 4/7 シェアリングエネルギー事例(井口氏)

株式会社シェアリングエネルギー https://share-denki.com/
事業開発室長 井口 和宏氏

我々が行っておりますP2P電力取引実証事業をご紹介させて頂きます。今回、技術実証ベースになるのですが、ご了承頂ければと存じます。まず大きく分けて3つ、なぜP2P電力取引のPoCに取り組むのかということ(Why)と概要(What)、どう取り組んでいるのかと、あとは実際に取り組んでいる内容をデモンストレーション(How)でご紹介できればと思っております。

(下記スライド3)そもそもシェアリングエネルギー社のビジョンとしましては、「分散電源の創出を通じて、再エネ100%の世界をつくる」ということで、そこに寄与していくということになります。そのためにファーストステップとして行っていることは、PPAモデル(太陽光発電の第三者所有モデル)を家庭に対して行っています。2018年2月から実施していて、契約件数1000件を突破しているという状況です。

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続いて事業の意義というところですが、従来型の電力システムから双方型の電力システム変わっていくというところで、もちろんここのボリュームはまだ小さいですけれども今後確実に増えていくと思いますし、弊社としてもPPAとして弊社所有のPVを家庭に載せさせて頂いて、蓄電池といったエネルギーリソースの提供も進めていければと思っております。中央集権から、分散型・ハイブリッド型のシステムに変わってきているということです。

(下図スライド5)弊社としては、プロシューマーに対して色々は付加価値を提供していきたいと考えております。現時点としては、PPAモデルを提供しているのですが、蓄電池の販売にも取り組んでおりまして、さらには弊社もライセンスは取得しているのですが、小売参入も視野に入れているところです。次にエネルギーマネージメントサービスを位置付けているのですが、これは例えばVPPですとか、P2Pの電力取引といったモデルを想定しておりましてそこの事業開発を現在行っているところです。

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(下図スライド7)具体的にどういったところなのかというところをご紹介致します。弊社は1社ではなくて、プラットフォーマーとしてオーストラリアのパワーレッジャー社(Power Ledger)、小売電気事業者であるイーレックス社とのコラボレーションで実証事業を進めております。

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パワーレッジャーという会社はご存知の方も多いかと思いますが、この会社はオーストラリアのブロックチェーンのソフトウェア会社です。電力と環境価値の取引の為のブロックチェーン対応のプラットフォームを世界で8か国で展開しております。日本ですと関西電力さんや、あとはタイ、アメリカ、フランス、イタリア、オーストラリアで実証を進めているところです。

プラットフォームの機能でいうとデータの見える化や、取引アルゴリズムに基づくトランザクション処理、即時決済といった機能があります。実証の内容としましては、7つの家庭に協力頂いております。プロシューマー側は、弊社のユーザー、コンシューマー側は、イーレックスさんの需要家の方々にご協力頂いております。そしてその30分値を売りと買いでマッチングさせますが、取引のロジックを今いくつか実証しているというわけです。

(下図スライド8)電力データの取り方ですが、今回はNTT東日本さんにご協力いただき、「フレッツ・ミルエネ」を活用しています。データのフローは、電気の流れとBルートデータの流れと電力料金の請求の流れの3つの流れがあります。イメージとしては、プロシューマーからの余剰電力(オレンジの矢印)が電力系統を通って消費者に供給されます。Bルートの流れ(青の点線の矢印)が、スマートメーターからミルエネのサーバーを通じて、そこから弊社のサーバーを通じてAPI経由でパワーレッジャーのところにいくという流れになります。今後、精算の仕組み(左側の緑色の矢印)を小売電気事業者と連携するためにAPIを予定しているところです。請求の流れとしましては、P2P電力を含めた精算をそれぞれに行っていく流れ(左側の緑色の矢印)になります。

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これが、西オーストラリア州のフレマントル(Fremantle)という所でパワーレジャーが実証をしておりまして、実証と言いましても商用化しているのですが、顧客に対して請求している請求書です。(当日画面共有のみ)特徴的なところとしては、購入電力料金の内訳としてグリッドとP2Pが分かれており、それぞれ単価があって購入量(kWh)をかけるという形になっています。P2P取引単価というのは、通常の小売り単価よりも安く設定しています。この方はプロシューマーなので、売りの分も相殺しています。パワーレジャーさんのマージンも込みとなっています。

(下図スライド9)我々が取り組んでいるマッチングアルゴリズムは、大きく3つです。固定価格の買取り、ダイナミックプライシング方式、自分で命名しましたが、プリファレンス方式です。固定価格は、量に注目していまして、1kWhあたりいくらで取引するというのをあらかじめ設定して取引します。ダイナミックプライシング方式は、厳密な意味とは少し異なるんですが、30分の時間で区切ってマッチする分について取引されるということになります。一致しない分はグリッドで取引します。プリファレンス方式というのは、ネーミングは自分で考えたのですが、コンシューマーがどの電源構成で電気を買いたいのか、選ぶことができる取引方式です。つまりエネルギーミックスを選択できるということで、実際にパワーレジャーさんのマッチング、3つ目の方式をフランスの再エネ事業者のエクウオーター(EkWateur)という会社と一緒にやっているそうです。

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デモンストレーションを数分できればと思います。(画面は当日共有のみ)設定はダイナミックプライシングになっていますが、コンシューマーとプロシューマーがそれぞれ買値と売値を設定します。Transaction画面の買いのグラフではGridとP2Pに分かれており、当然夜は発電しないのでグリッドから、つまり小売電気事業者から買うことになります。昼間は自家消費をして余剰の分がP2Pになります。これは先程ご説明しましたBルートで取得したスマメデータを使ってトランザクションを処理しています。売りに関してはP2Pで消費され、消費されない分はグリッドに流れているということです。トランザクションは「Record」に記録され、ブロックチェーン・トランザクションIDと誰から誰にという情報が書かれています。これはテスト環境なので実際のデータとして反映されてないのですが、本番環境であれば、いくつかのサイトでIDを検索するとこの取引が確かにこの取引が実行されていることが証明できます。誰でも見ることができます。

(下図スライド12)課題ですが、いくつか挙げています。特に一番大きなところでいくと、P2Pを使ってどんなメリットが出せるのかというところです。参加者としては経済合理性がないとやらないというのが前提にあると思いますので、それをどうやって出すのかというとこですけれども、シンプルに考えると、小売の料金というのは、電源調達と託送料金とあとは小売のマージンですね、そこにプラットフォームのマージンも含まれていきます。

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検討事項は少なくとも3つはあると思っています。まず電源調達については、プロシューマーとしては、卒FITユーザーを想定したときに、卒FITで買ってくれるよりもさらに高く買ってくれる、小売側からすると、JEPXの価格よりも安く買えるとか、そういったかけ引きが出てくると思います。卒FITの価格が非常に高いと、たとえば11円とかになってくると、それを上回るのはなかなか難しいんじゃないかといったところです。あとは託送料金ですが、同じ配電網で取引することが前提にあるので、損失率や潮流改善を考慮した託送料金の価格設定というのが期待されるのかなと思います。あとはパワーレッジャーさんの実証実験でもレポートとして出ているのですが、やはり顧客を啓蒙する、それによって消費行動パターンを変えてもらうというのが重要なのですが、そこがなかなか苦戦している状況と彼らは出していました。なので、顧客の啓蒙は非常に大事ということになります。私の発表は以上です。

本イベントの記事
1/7 P2P電力取引とは(LO3 Energy大串氏)
2/7 実現への期待及び想定される課題(阪大・西村氏)
3/7 実現への期待及び想定される課題(東大・田中氏)
4/7 シェアリングエネルギー事例(井口氏)←本記事
5/7 デジタルグリッド事例(高坂氏)
6/7 森のエネルギー/elDesign事例(坂越氏)
7/7 パネルディスカッション

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