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日本におけるP2P電力取引のいま: 5/7 デジタルグリッド事例(高坂氏)

デジタルグリッド株式会社 https://www.digitalgrid.com/
システム開発部部長 高坂 大介氏

私どもが取り組んでおりますP2P電力プラットフォームのご説明をさせて頂きます。まず、簡単に自己紹介をさせて頂きます。2017年から田中先生と阿部先生と一緒に東京大学のP2P電力取引を研究されている方と一緒に実証事業に参画させて頂いたことがきっかけで、去年デジタルグリッドに入社しまして商用化に向けてP2Pプラットフォーム開発の責任を負ってきました。現在は、プラットフォームは順調に稼働しておりまして、実際に個人ではなくて企業間ではありますけれども実際のP2P取引が行われている状態になっています。

(下記スライド3)会社についてですが、ミッションとしては「エネルギーの民主化を通じて人類を豊かにする」ということで、どんどん電源が分散していくなかで、電気を持っている人と電気を欲しい人が事業者の手を介すことなく直接自由に取引できる社会を作りたいというところを目指していきたいと考えております。2017年に設立しまして、3年目とまだ小さい会社です。

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(下図スライド4)次に沿革ということで、2008年からP2Pの構想というのはデジタルグリッドと我々は呼んでおりました。実証実験を経て、2017年が大きい実証だったのですが、会社を起こしました。そして2019年に、プラットフォームを作っている中ではありますけども、エネ庁とたくさんの議論を重ねまして、ようやく資格を取得し、商用の初期運用を開始しました。2020年現在で商用の本格運用が始まっておりまして、現時点で16社が契約してくださっているという段階になっております。

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(下図スライド5)浦和美園の実証事業の話をしますと、P2P電力取引プラットフォームというのは、ブロックチェーンをはじめとしてAIも使っていますし、IoTも使っているというとこで、いろんなデジタル技術を組み合わせた太陽光発電の売買の取引市場をプラットフォームとして試作しました。各浦和美園地区にありますショッピングセンターや5件の家庭のところに蓄電池とDGR(デジタルグリッドルータ)があります。

DGRは電力出し入れを自由に行える機能がついたデバイスでして、こちらをつけて、発電の状況とか蓄電池の残量を踏まえて自動的にこのデバイスから、売り・買いという入札を行っていきます。それでマッチングを自動的にここでやっていくという実証をやりました。これは自営線を構築して実証をやっています。

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(下図スライド6)事業背景ということで、FIT価格がどんどん下がっていって、そのうち一般系統電力価格よりも低くなってしまうということで再エネ補助金制度の次に使われる仕組みというのを急いで作らなければいけないという課題があります。

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(下図スライド7)あとは、世界的な再生可能エネルギー推進の潮流というところで、我々は事業者をターゲットとしていますが、RE100をはじめとして、電力を再生可能エネルギーでまかなうという流れが日本企業においてもどんどん拡大しています。自社が直接関わらなくてもアップルみたいなiPhoneを作っている人に部品を納めるサプライヤーにも再エネを100%やってくださいといった再エネの転換の要請が行われています。なので、関わってくる会社はどんどん再エネ由来の電源に切り替わっていくということが求められています。

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(下図スライド8)一方で、解決したい課題というところでは、出力が不安定な再エネを売買するということで、今までは電力会社が管理しないとできないということでした。その理由としては、24時間365日、計画値同時同量という発電量=需要量となるような需給調整が必要であるというところと、発電源が高く買い取ることは困難ですといった課題があり、難しいです。

買い手は、実際これだけ使えますといっても、その時間になった時に、どれだけ使うかというのはなかなか予測することは難しい中で、さらに発電家の方も再生可能エネルギーの導入で発電量が予測不可能という状況になると相当需給管理・需給調整というのが難しいという中で、再エネをどうやって増やすかが課題となっています。

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(下図スライド9)再生可能エネルギーというのは通常のエネルギーに比べてちょっと割高になっています。下図でプレミアムと買いてありますが、普通の大規模水力とかFIT電気で買うと+5円、1.3円などになるのでちょっと高いですよということになります。再エネ電力証書(J-クレジット・グリーン電力証書)を適用して再エネを買ったことにするというものは比較的割安なのですが、市場に出回っている量が少ないということでなかなか使いにくいと言われていて、解決しなければならない課題として挙げられています。

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(下図スライド10)我々が開発したプラットフォームなのですが、端的に申しますと、発電源を持っている企業さんと、需要を持っている企業さんの供給と需要を計画の段階から個々に紐づけてそれを電力需給に向けて自動的に最適化していくという仕組みになっています。先ほどの(前図スライド8)、供給された電力にトラッキングをつけるということではなく、我々が実現したものは、計画の段階から一個一個の拠点を一つ一つ紐づけることができるという仕組みになっています。

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(下図スライド11)参加する事業者がプロの(電力取引を行う)事業者さんではない場合を今回想定していまして、電力の需給調整とか電力取引に必要なものを一個一個揃えていこうとすると設備投資がかかるため、なかなか入るのが難しいという課題がありました。

我々はそこの顧客管理から電源調達して需給管理をして最終的に料金計算・請求するところまでを一連のサービスとしてプラットフォームを提供することで、手数料を頂くわけですが、誰もが市場に参加可能という仕組みになっています。

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(下図スライド12)電力調達、P2Pのところは我々独特なものかもしれません。まず需要家と発電家が安心してかつ価格競争力のあるかたちで直接P2Pで電力の売買契約を結ぼうとすると、期間がある程度長くないと発電する側も安心して出せないとか、需要家側もコストメリットが受けられないとかのニーズがありました。それらに考慮しまして、まずは一旦長期相対取引ということで1年間分の電源調達方針をまず決めます。

イメージとしては、たとえばベースラインのところだけプラットフォームで買って、再エネのところは再エネの発電家から買うように、再エネ・非再エネ含めいろいろ組み合わせます。さらに折り合いがつかないもの、例えばJEPXから買ってくというように、電源を需要家が一つ一つ選んで買うことができるということです(下図の左下)。

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この一つ一つは、個々の需要拠点に分かれていて積み重なってグラフのようになります。発電家からしても、再エネの場合は、計画よりも少なかったり多かったりしてもちゃんと需要家が1年間という決まった期間で責任をもって買ってくれる契約を結べるので安心して売れるというメリットがあります。それらを考慮して作っております。

そして実際の実需給に向けて、この短期需給調整というのが次のフェーズです(上図の右側)。実需給直前まで、今度は、当日の電力使用状況に応じて余ったもしくは不足したという需要家同士で需要量とか値段とかの条件を基にして調整がついたとこ同士で取引を行い、最終的な余剰や不足についてはJEPXとの売買をすることになります。この流れで短期調整をしていき、実需給のインバランスを最小化する仕組みになっています。

(下図スライド13)我々に賛同してくださっている事業者さんは現時点57社もの企業さんがパートナーとして出資頂いておりまして、その中の何社さんかは実際にプラットフォームを使用して頂いております。

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(下図スライド14・16)プラットフォームの活用企業例ということで、需要企業のP2Pをやるメリットとしては、エネルギーを自ら調達できるというメリットであったり、既存のチャネルで電力をクロスセルできる手段になることを挙げて頂いております。発電企業としては、新たな卸電力取引市場としての利用ができそうであったり、あとは、発電事業者じゃなくてアマチュア発電家としても売れますといったメリットを仰って頂いております。

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(下図スライド15)プラットフォームを利用頂いている住宅会社の住友林業の例ですが、住宅を作って売るついでに、再生可能エネルギー由来の電気を付加価値として提供するといったものとか、電力のコスト削減にメリットを感じて頂いて、プラットフォームを利用して頂いております。

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(下図スライド17)まとめますと、システムの網羅性ということで我々のプラットフォームの特徴としては、現物の電気を取引するために必要なシステムを全てカバーしています。あとは発電のトラッキングであるとかP2Pで電力売買する技術は、環境省実証の中で実証済みでありまして、それに必要なデバイスも開発済ですので、それを使って商用のプラットフォームが動いているところです。多くの企業がプラットフォームの利活用を目的に出資をして頂いておりまして、プラットフォームに参加して頂いたり、協力にバックアップしていただいている状況で、とても恵まれた環境でサービスを運用している状況です。

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最後に目標として、我々はデジタルグリッドプラットフォームを通じて分散型エネルギー社会に貢献してまいります。ということでもしご興味がおありでしたらいつでもお問い合わせいただければと思います。発表は以上になります。ありがとうございました。

本イベントの記事
1/7 P2P電力取引とは(LO3 Energy大串氏)
2/7 実現への期待及び想定される課題(阪大・西村氏)
3/7 実現への期待及び想定される課題(東大・田中氏)
4/7 シェアリングエネルギー事例(井口氏)
5/7 デジタルグリッド事例(高坂氏)←本記事
6/7 森のエネルギー/elDesign事例(坂越氏)
7/7 パネルディスカッション

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