婚活アプリ体験記⑧ 「ヲタクに恋は難しい」意識高い系エンジニアで草
12年間付き合った彼氏と別れ、一念発起し婚活アプリ「Pairs」「Omiai」に登録。
お付き合いを通して得た気付きや、自己成長を記録した「婚活体験記シリーズ」第8弾。(マガジン「スキモノ」記事)
このマガジンは恋愛こじらせ中の女性、本音の女心が知りたい男性にも、一読してもらいたい。
私自身が多くの失敗を重ね、傷つけ、傷つけられながらも少しずつ成長し、学んだことを共有し、少しでも誰かの役に立ちたい。
良い恋愛をしてほしい!と願って書いた。
左脳派
自分と全く違う思考回路の人に強く惹かれたことはないだろうか?
「右脳派は直感型、左脳派は論理的思考型」と言われていて、自分がどちらか簡単に診断出来る。ちなみに、この診断で私は「うう女」。
全ては直感・本能のまま突っ走って生きる、女性としては最もインパクトのあるタイプらしい(笑)
【二枚貝】オフィシャルサイト
仕事上、システムエンジニア(SE)の方のお世話になることも多く、対応してもらう度に頭の回転の速さや、知識の深さに感動する。
左脳派に密かに憧憬の念を抱いていた頃、OmiaiでマッチングしたのがSEのAさんだった。
OmiaiはFacebookと連動出来る。
Facebookは実名登録が規約で定められているので、職場や出身校、交友関係を公開している人も多い。
アプリ上でのプロフィールしか開示していない人に比べ、多くの情報を提供している人は安心感や信頼度が桁違いだ。
互いに相手の情報を把握しておけば、会う前から知り合いだったかのような既視感が生まれ、打ち解けるのも早くなるだろう。
Aさんは参加したイベント・講座なども公開しており、プログラミングや情報処理、語学教室など自己啓発に励んでいる様子が見て取れた。
そのため、向上心が高く勉強熱心でリスペクト出来る人だと感じた。
他にFacebookで知り得た情報は以下の通り。
・「萌え絵上達法」というサイトの常連
・「pixiv」ユーザー
・「ニャル子さん」が好き。他にもエヴァンゲリオン、細田守監督作品、
ライトノベルに関する記事に イイネ!をしている。
・PS3、XBOX360、ファミコンを所有している。
・甥っ子を溺愛している
なかなかディープなオタク気質を予見させるが、ロリコンや異様に胸のでかい二次元キャラクターに入れ込んでいる様子は無さそうだ。
犯罪の匂いがしなければ、趣味嗜好は個人の自由である。
甥っ子を可愛がっている点は人間味が現われていて、親しみと好感が持てた。
オタクへの理解
私には2歳離れたオタクの姉が居る。
姉は小学生の頃「天空の城ラピュタ」にハマり、抱き枕に「パズー」という名前を付けていた。以後順調にオタクへのエリート街道を歩み始める。
当時「2ちゃんねる」などの掲示板やFlashアニメーション、ニコニコ動画が全盛期だった。姉はネットスラング※と言われる言語を日常会話で多用していた。※インターネットで使用される俗語。
「テラワロスww」「醤油キボンヌ」「キターーー!!!」「オマエモナーー」「逝ってよし!」などのスラングは全て姉から教わった。
今こんな言葉を使えば「オワコン」と言われ「痛い人」認定される。
姉以外にも、コミックマーケットでコスプレをして自作の同人誌販売をする才能溢れる友人や、ネナベ(女性だがネット上では男性を装って活動する人)の面白い友人も居た。
「オタク」とは好きなこと・ものを追求する経過や結果であり、人間誰しもオタク的な要素を持っているものだと思っている。
「私はオタクに寛容。むしろ自分もオタク。きっとAさんとも分かり合える。」そう思っていた。
あぼーん
交流するからには取り繕わず、ありのままの自分を出してほしい。
Aさんが「らしさ」を発揮しやすいようにLINEの会話上で「私もオタですよ」アピールをすることにした。
知っているネットスラングを総動員し、会話の笑いどころには「ww」を付ける。するとどうだろう、今まで「今日は15時から英会話に行ってきます」と業務日誌みたいなLINEしか送ってこなかったAさんが、水を得た魚のように真価を発揮し始めた。
「黒電話マジ卍」「発射フラグ立ちすぎてて草」「あらぶってんなーww」
注)LINEのトークです。
北朝鮮が弾道ミサイルを放ち、落下した場合を想定したニュースが世間を賑わせていた頃だ。
私は全ての単語の意味が解らず、とりあえず一語ずつネットで検索
(通称:〝ググって〟)みた。
「黒電話マジ卍」…金正恩は本当に信じられない!
「発射フラグ立ちすぎてて草」…ミサイル発射の前兆がありすぎて笑える。
「あらぶってんなーww」…興奮しているなー(笑)
今でこそ「草」は浸透してきたが、3年前はまだメジャーではなかった。
しまいには「あぼーん」ときた。
「あぼーん…?」
どうしよう。Aさんと会話が成り立たない。
私は何処の国の人と交流しているのだろう。
彼からLINEが来る度に、意味を調べなければいけないのだろうか。
だが、実際に会って会話をする時には、きっと私でも解る日本語で喋ってくれるだろう。会わずして人を判断するのは良くない。
そもそも彼とは思考回路が違うのだから、理解出来なくて当然だ。
ちょ、おまww
お互いの職場は徒歩20分圏内だった。
Aさんは会ったこともない私に職場の詳細な場所や、毎日ランチをしている定食屋まで教えてくれた。
ハッカー並みの技術を持っていそうだが、心のセキュリティーはそんなに強固ではないのか、ここまで自己開示をしてくれた人は初めてだった。
平日の夜、「仕事終わりにご飯でも」という事で、互いの職場の中間距離で待ち合わせた。
第一印象は「前髪長っ!」だった。
高身長でスタイルが良く、180㎝近くあった。
肌も綺麗で顔のパーツも整っているが、長い前髪と黒縁メガネでどことなく陰鬱な雰囲気を醸し出している。オタク特有の空気感というのだろうか。
全く以て余計なお世話だが、「短髪にして爽やかにすればモテるだろうに。勿体ない」と思った。
仕事や趣味について尋ねると、凡人の私には理解出来ない言語で語り始めた。
「パイソニックなコードにハマってて、読みやすいソースを書く為にクロージャに対応する関数を考察したり、ビルドできないapcに対して、サードパーティークッキーを構築するのが好き。要するにバッチスクリプトを量産して言語をスマートにするのが仕事かな。」
※これはイメージであり、実際にこの台詞を言った訳ではありません。
※これらの単語は全て彼のFacebookからお借りしました。
私は試されているのだろうか?
全く頭に入ってこない。
パーティーでソースやクッキーがどうとか、美味しそうな単語しか聞き取れない。
ここは共通の趣味である美術や音楽鑑賞の話題に切り替えよう。
私もなかなか通(ツウ)な趣味を持っているつもりだった。
美術鑑賞「バルビゾン派とか好きで見に行く。ルソーとか」
音楽鑑賞「ケルト音楽が好きで、ディジュリドゥを吹きたい」
「パトラッシュ、僕もう疲れたよ。なんだかとても眠いんだ…。」
どんどんリアクションが薄くなっていく私とは対照的に、趣味の話でエンジンがかかり益々饒舌になっていくAさん。
今一番ハマっている「ニャルラトホテプ星人のニャル子さん」について語り出す。
私は考えていた。
「彼にとって三次元のパートナーの必要性はなんだろう…」
全てニャル子さんで事足りるのではないだろうか。
むしろニャル子さんで不足している部分を三次元で補おうとしているのか。彼女になったらニャル子さんと比較されるのだろうか。そもそもニャル子さんって何だ。
Facebookで仕入れたAさんの情報に思案を巡らす。そしてある結論に至った。
「そうか、子供が欲しいんだな!」
Aさんは甥っ子を溺愛していた。
会う前の私にLINEで画像を送ってきた程だった。
やっと会話の糸口を見つけた私は、甥っ子さんの画像を飽きる程見せてもらい、ひたすらかわいいと褒めちぎった。
逃した魚
私は何を求めて婚活をしているのだろう。
子供が欲しい?
将来が不安だから?
母を安心させたいから?
寂しいから誰かと付き合っていたいだけ?
「明確な目的意識」を持って婚活をしている人はどれ位いるのだろう。
会った後「甥っ子さん褒めちぎり作戦」が功を奏したのか、Aさんから好意的なLINEを頂いたが、返信はしなかった。
「何言ってるか全然解りませんでした」と正直に伝えるか、そのまま既読スルーを続けるか、どちらが傷つくかは解らない。
だがどんな理由であれ、きちんと自分の気持ちを伝えて終わりにするのが正解だと今は解る。
この記事を書くにあたり記憶を辿(たど)る為、彼のFacebookを訪れた。
今は会社も変わり、大きな医療機器関連の管理職として勤務している様子。
3年前には無かった立派な保有資格が3つも追加されていた。
あれから自己研鑽を怠らずにひたすら頑張ったんだろう。
仕事が出来て勉強熱心。一人の時間を存分に楽しめて、嫁に足らない部分があれば黙って二次元で補充する。ある意味「ハマる人には最高」の男性だ。
同じ趣味を持っている女性とならば、お互い独立した最高の関係を築けるのではないだろうか。
そうしているかもしれないが、週末婚や家庭内別居もオヌヌメ※したい。
(※オススメの意味。これはAさんからの受け売り)
「逃した魚は大きかった」そう思わせる程成長していたAさんに、
「私も頑張らないと」と、力を貰った。
フルーツパーラーを連想させる珍しい名前のAさん。(Aさんは下の名前)
ずっとフルネームで覚えています。ありがとう。
彼から学んだこと
・中途半端な知識で「オタク」を名乗ってはいけない
・理解の範疇を越えた脳の作りがある
・自分に無い物を求めすぎると一つも噛み合わない
・自分が相手に何を求めているかハッキリさせない婚活にゴールは無い
・向上心を忘れず自己研鑽を怠らない人間は魅力的
・ニャル子さんは宇宙人
いよいよ「婚活体験記シリーズ」も最終章。
次回は私がこのシリーズを書くきっかけになった手練手管のラスボスが
登場する。
モテたい男性は彼から手法を学べば良いだろう。
女性には「こんな男性に気を付けて!」と全力で警鐘を鳴らしたい。
読んで頂き有難うございます。
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