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転職する勇気 おじさん編③

私が会社、辞めちゃいなよって言ったのは去年の年末だった。
その時に、めちゃめちゃ重いバンを持って歩いているので、「カバンも軽くしなよ。書類やら何やらなんて、そんな持って歩く必要ないんだから、もう捨てちゃいなよ。頑張って8割減。少なくとも今の重さの半分以下に。
カバンが軽くなると、その分気持ちも変わるから・・・」
と伝えた。

そう、全然違う事みたいだけど、毎日持って歩くカバンの重さって結構大事。毎日持って歩くから、当り前になっているけれど、軽いだけで心もちょっとは軽くなる。
どうせ毎日使う物じゃないのだから、必要な時に持てばいい。
嫌なしがらみやら色んなもの、一度思い切って捨てた方がいい。

私は前職で心が病むほどお局のオバハンに意地悪されて、いじめられた。社長に訴えたけど、見て見ぬフリ。知らぬ存ぜぬで、身体にも異常が出て来たので辞めた。最後は、辞めるなんて勝手すぎるとか、私が悪いとか社長らに罵られた。
うちは私が主夫。
私が家計を成り立たせなきゃならないから、次の仕事も決まっていないのに辞めるのは本当に怖かった。怖かったけど、自分が壊れる方がもっと怖かったし、本気で自分がヤバいと思ったから思い切って辞めた。
だから、おじさんじゃなくたって、働くおじさんの気持ちも分かるし、会社を辞める怖さもわかる。
何もない所から自分で仕事を始める怖さも分かる。
それでも、全部の書類にサインして、色々返却して会社から帰って来る最後の日、カバンにゴミ袋を忍ばせていた。
なぜなら・・・
家には入る前に、マンションのごみ箱に寄って、ずっと来ていたコートを捨てたかったから。コートに罪は何にもないけれど、あの会社に行くために来ていた、自分が身に着けているものを全部脱ぎ捨てたかったから。
ただ、全て脱ぎ捨てて捨てる訳にもいかないから、コートに犠牲になってもらうことにした。
変な理屈だけど、あの会社であった嫌な事や嫌な記憶、触れたものを全部コートに吸収して、綺麗さっぱりしたかった。
捨てた瞬間、何やってるんだろう自分、っとクスっと笑ったのを覚えている。これで良かったと思える瞬間だった。

・・・何かを捨てる事は、新しい自分を見つける始まりだと思う。
だから、私みたいな事をしろなんて、そこまで人に求めないけれど、カバンの中身を捨てて一度軽くしてみて欲しい。

それから1週間後、おじさんからカバンの中身を軽くしたよと連絡があった。でも、半分にはならなかったと・・・
何が重いのか聞いたら、充電器やらipadやら・・・と言うけれど、私だってPCを持って歩いているけれどあそこまで重くない。
昔、忙しい時は外で一日中電話したり、PC使ったりしていたけれど、今はそんな必要ないなら、充電器なんて要らないじゃないと思い、
「充電器とかいる?」と言ったら、「俺のカバンは何でも出てくるのが自慢なんだ・・・」って。
それだよ、それ。。
言い方悪いけれど、過去の栄光みたいな、過去の亡霊に引きずられているの。
昔の自慢話しか出来ないおじさん同じ。
それは、決して悪い事じゃないんだけど、それしか話せないと、今は何にも無い人になっちゃうんだよ。今の話が出来ない人になっているって事なんだよ。前に進み続ければ、過去の話をしている場合じゃないんだから。
それと同じで、昔必要だったものなんて、今使わないなら持って歩く必要はないんじゃないかなぁ。

残酷だけど、今の環境から自分を本当に抜け出したいと思うのであれば、何かを置いて来ること、何かを捨てる事、そういうのが必要なのだと思う。
だって、永遠なんてないんだから。。。

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