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昭和14年 冬の食卓を賑わす温かい味覚

◆昭和14年 冬の温かい経済料理の作方五百種

山海の珍味より何より、温かいといふことが冬の第一のご馳走でございます。  (中略)聖戰第三年を迎えての今年の冬は、うんと頭脳を働かせて、日々のお惣菜は勿論、お正月の御馳走もお客料理も、できるだけ経済的に、しかも温く美味しく拵へて、寒さを蹴飛ばすことにいたしませう。

からはじまっています。                          本誌が発行された昭和14年(1939)は日中戦争の最中であり、同年ヨーロッパではドイツ軍がポーランドを侵功したことが第二次世界大戦のきっかけとなり2年後には日本も参戦することになります。
贅沢は禁物であり、「パーマメンとはやめませう」という言葉が流行語となったり、白米禁止令が出たりと、厳しい時代背景が窺えます。

◆心から身體(からだ)の温まる★★★ 郷土風のお汁物七十種の作り方

理想的味噌汁
良いネーミングですねーー                         現代よりきっと献立の定番であっただろう味噌汁の理想系・・・        魚の骨でとった出汁に大根、大根葉、牛蒡、豆腐や麩が入ります。       麩は水に漬けずそのまま使う、大根葉は炒めてから最後に入れる、       など細かな気遣いも・・・                         美味しいだけでなく、栄養分満点、どこでも作れて経済面まで理想的です。

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スキー汁

その名の通りスキー前の腹ごしらえです。                  腰掛茶屋で鍋を囲んで食べる味噌汁のようです。

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土地にできる大根、牛蒡、里芋、人参などを粗く切って、山で獲れた兎でもあれば大自慢で放り込んで、ごった煮の、それこそほんとの田舎汁。

兎を大自慢で入れる店側も恥ずかしいほどがつがつ食べるお客もいいですねー!
この時代スキーに行ってる人結構いたのかな・・・              裏表紙の鎌倉ハムの広告にもスキーの文字が・・・              スキーにハムになんだか贅沢な感じがします。

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◆誰にでも喜ばれる☆☆☆ 温い御飯もの四十種の作り方

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鰯の魚飯(ぎょはん)

鰯の炊き込みご飯に汁をかけるようですが・・・

普通の水加減で御飯を仕かけ、噴いてきたら蓋を取り、頭と腸だけ除った鰯を一尾づつ尾を持って噴いている御飯に頭を逆さに挿し込んで、尾だけ外に出しておきます。手早くかうして蓋を被せて炊き上げます。 よく蒸れたところで、尾を箸で挟んで徐かに引き上げると、頭だけすっと脊骨について面白いようにきれいに抜けますから、あとをよく混ぜ合わせて、お釜からすぐ茶碗に盛り、煮出汁に味醂、酒、醤油、好みでは砂糖も少し入れた、厚いかけ汁をたっぷりかけていただきます。
 

衝撃的な作り方!!こんなにうまく骨が取れるものなのか再現してみたい!   とはいえ鰯が刺さるほどの米を炊かなければならないということは一度に結構な量を作ることになりそうな予感。

法城寺ずし
 明治時代の懐しい書生飯。書生とは今でいう高校生、専門学生、大学生といったところでしょうか。材料は冷御飯、のり、醤油のみ!醤油ごはんで太い海苔巻きを作り、火鉢の火で網焼きにするようです。熱々のところをわし掴みでかじる・・・学生っぽい料理!寒い夜に書生が集まって楽しんでいた様子が目に浮かびます。 レシピ指導の尾崎先生も書生が考え出したとは思えないくらいよい具合に焼ける、と絶賛です。

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この本に掲載されているレシピは「材料」という項目がなく、作り方の途中に分量が出てくることもありますが、基本細かい説明がありません。各家庭で味付けが微妙に違ったり、自由な感じがいいなと思います。厳しい時代ではあったと思いますが、まあ温かいものでも食べて元気出そ〜とポジティブな印象を受ける一冊です。

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