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三千世界への旅 縄文6 時空を飛ぶ土器


新潟・十日町市博物館2


素朴系土器の魅力


十日町市博物館には、火焔型土器が作られた縄文中期だけでなく、草創期や前期のシンプルな土器も展示されています。

縄文土器と言えば、これまで火焔型とか王冠型の複雑で大胆な造形美を思い浮かべがちでしたが、シンプルな土器もなかなか魅力的です。これも今回の新しい発見でした。

この下が細くなっていて、たぶん下の方を土に埋めて立てた深鉢型土器は、もちろん木の実の保存など実用的な用途のために作られたんでしょうが、丸みといいボリューム感といい、ちょっと立体的な横線といい、惚れ惚れするくらい美しいと思いました。

西東京市郷土資料室で見た、深鉢型土器はちょっといびつだったりして、そこが可愛かったんですが、この深鉢はもっと緻密な美意識を感じさせます。

たとえば江戸初期の陶芸家、野々村仁清の茶壺に通じるような、均整と質量感のようなものです。

作った人に「美意識」のようなものがあったのか、聞いてみたい気もしますが、インタビューできたとしてもおそらく「美意識? 何それ?」と言われるでしょう。それでもいびつな深鉢を作った人とは違うこだわりが彼にあったんじゃないかという気がします。

この縁に穴が並んでいる浅鉢は、その厚みと浅いフォルムが、また格別なボリュームの美しさを感じさせます。

何か材料をこねるのに使ったのかもしれませんが、その実用的な目的のために使う人が感じる心地よさまで考えて作られているようで、そこが入れ物用の土器とはまた違う味わいです。


茶道具の面白さ


注口土器と名付けられたこの小さな土器は中期のもので、装飾はそんなに複雑でも派手でもありませんが、なんだか室町末期の茶道具のような面白さがあります。

中に赤い白がかすかに残っているようですが、赤漆を入れて注ぐための容器だったんでしょうか。

この黒ずんだ鉢形土器は、シンプルですが縄文後期のものです。


中期までの土器よりかなり薄手で、下の部分が膨らんでいるなど、草創期や前期のシンプルさとは違う、ちょっと怪しげな美しさを感じさせます。

外も中も黒いのは、どういう使い方をしたんでしょうか。外が黒いのは火のススかもしれませんが、中の黒さはなんでしょう?

わからないところが、謎めいた怪しい美しさを感じさせる要因でしょうか。千利休とか茶人が好きそうな黒っぽさじゃないかという気もします。この大きさとかたちでは茶道具に不向きだと思いますが。


インカと古代中国

この土器は容器にしては縁が内側に大きく張り出していて、モノを出し入れするのに不便そうです。

これだけ長野県立博物館から借りているとのことで、新潟県の出土品ではないようですが、デザインが火焔土器に通じるものを感じさせると同時に、何かインカなど古代南米の土器を思わせるところもあります。

火焔土器は飾りが四方に付いているのに対して、この土器は一カ所だけだからか、火焔土器では気づきにくい、縄文的デザインの時空を超えたグローバル性に気づかせてくれます。


この深鉢は中期のものですが、古代南米的でもあり、縄文中期と近い時期に中国・四川省あたりで花開いた三星堆の青銅器文明を思わせるところもあります。

まあ、素人の勝手な空想ですから、特に根拠はありませんが。

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