見出し画像

あの夏の日の ぼくたちは どこへ行ってしまったの

いつの日が 大人になると
ステキなことはもっとステキに
動きだすと 思っていた
Old Fashioned Love Song for you
ムーンライトダンス 渡辺美里

どうも生理前で、あんまり精神状態が良くない。

夏休み中の北にLINEで甘えても、やっぱり離れてるし、なにしろ口下手な人だし、なんなら文字入力嫌いだし、電話で話すくらいなら会いに行く、てな人だからあんまり付き合ってはくれない。

こんな時は、読み慣れた本を読むしかないなー。

冬休みの話ではあるのだけど。

恩田陸は、ほとんどの作品を図書館で読んでしまったので、買ってる本は少ない。

その数少ない本の一冊。

冬休みに、それぞれの事情で寮に残った少年たちの、触れてほしくない『謎』。

恩田陸自身も言ってたように思うけど、萩尾望都のトーマの心臓っぽいかな。

トーマの心臓は、本の腐海にあるようだ。

iPhoneのKindleに11月のギムナジウムが入ってた。

(1985年までの全ての単行本、特装本、イラスト集、母は持っていたのだが、10年くらい前にいきなり捨てやがった。理由:萩尾望都好きじゃなかった。これだからファンじゃないコレクターは…何冊か借りパクしてた奴が生き残ってる)

明るく見せて影のある、粗暴で繊細、まさに、少女マンガ的な少年たちの織りなす、冬の真っ最中の告白劇。

毎晩の酒盛り、楽しげな料理、別れた彼女からの切ない電話、幽霊、たわいなく始まるゲーム、口にしない秘密、不思議な後継人を持つ少年、てんこ盛りだ。

恩田陸は、食べること飲むことが好きなんだろなー、といつも思う。とても美味しそう。

そうしてラストは、恩田陸曰く、「高島礼子ならいいじゃないか!」な、ある少年の昏い語りからの、ある事実を知ることになる、疾走感あふれる作り。

早く大人になりたいと願ったあの少年は、でも、大人も、決して自由でもないとわかっているのだろうな、と苦く思う。

本当に自由なら、両親はあんな形で人生を終わらせなかったろう。

本当に自由なら、あの女は、憎悪の塊となってまで、自分を縛り付けはしなかったろう。

さまざまな少年たちのそれぞれの想いを背負った話はあるけど、やはり、この『謎』は強烈で、忘れられない。

トーマの心臓でいったら、彼はオスカーだな。

大人びた眼差しは、何を見つめてきて、これから何を見ていくのだろう。

(訪問者、良いけど暗かったなー。本の腐海にあるなー、特装本)

誰も傷つかない人生はありえないし、これからだって傷ついてくだろう、皆。

折れそうな自尊心を、頼りない止まり木でそっと支えて、羽ばたく時を待っている。

悲しい、切ない、煌めく物語は、夏にぴったりだ。

(冬休みの話だけどな)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?