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「建築の原点に近い」アースバッグの魅力と課題を建築業界のベテランにきいてみた

お久しぶりです!
前回のインタビューの後、アースバッグのワークショップなどがあってバタバタしており、更新がちょっと空いてしまいましたが、今回はこれまでとは少し毛色の異なる方に協力していただいてます。

今回インタビューにご協力いただいたのは、前回7月に初めて開催されたオンラインでのワークショップに参加していただいた田村ショウコさんです

田村さんは建築業界に30年以上身を置くベテランで、ワークショップ中の質疑応答の時間でも、プロならではの視点や経験に基づいた発言で、他の参加者の方たちとの意見交換を大いに盛り上げていただきました。

DIY、セルフビルトとは異なる文脈を持つ「現代の建築」のプロが考えるアースバッグの魅力や課題とはどのようなものでしょうか??

聞き手は引き続きスギシタとなっちゃんのふたりです



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田村さんと愛犬の笑(わら)

田村さん:初めまして、田村ショウコともうします

なっちゃん:オンラインワークショップ中に、独自の視点からさまざまな質問をしてくださったことが本当にうれしくて、今回インタビューの時間を設けさせてもらいました。

田村さん:こちらこそ、ありがとうございます

スギ:田村さんは建築関係のお仕事をされてるんですよね?

田村さん:そうです、建築業界に身を置いてかれこれ30年ほどになりますね。ゼネコンや住宅メーカーでも働いていましたが、今は自分の工務店を立ち上げて4年目になります。

なっちゃん:そうなんですね、今のお仕事の内容はどのようなものですか?

田村さん:現場監督の仕事をしています。
ただ、私の場合は一般的な工務店のように社員を雇っているわけではなく、自分一人で営業から総務、経営までをやっているので、フリーランスの現場監督みたいなイメージですね

アースバッグって・・・どう??

スギ:建築業界で長く経験を積まれてきた田村さんからみて、アースバッグってどうですか?(笑)

DOU なのか・・・?

田村さん:「どう」って難しい質問ですね(笑)
思うところはたくさんあります、可能性を感じる部分もあるし。私の印象ではアースバッグに建築の原点に近いものを感じました。

なっちゃん:どのあたりに建築の原点を感じましたか?

田村さん:今の建築現場は分業が進んでいて、外構、構造、内装など、いろんな分野のプロがいますが、アースバッグの現場はそうではないですよね
特定の分野のプロがいるわけではなくて、アースバッグをつくりたい人たちが協力して一つのものを作る。その構図が建築の原点をなんとなく思わせるんです

スギ:たしかに、アースバッグの現場には特定の分野のプロはまだいませんね。
「躯体を綺麗に積むのが得意な人」とか「壁をムラなく塗るのが得意な人」はいますけど、基本的に参加する全員がたくさんの工程に関わります

田村さん:日本でも昔は大工さんとかが特別いたわけじゃなくて、村のなかでできる人が知恵を出し合いながら建物をつくっていたと思うんです。例えば、昔の茅葺き屋根なんかはそうやって保っていたみたいですよ
職人さんだけではなく、村の人たちも参加して、お互いの屋根をみんなで葺き替えていた集落がたくさんあったそうです

残念ながら、茅葺は今では失われつつある技術ですが、そこにあった人間の建築に対する姿勢はアースバッグ建築の中に息づいているように思います

なっちゃん:とっても面白い視点ですね!自分たちが住む家を自分たちでつくり、手入れしていく、その思想はアースバッグにもあると思います


アースバッグの本懐は「みんなで建てる」こと

田村さん:言ってみれば、今のアースバッグはみんなで作り上げていくボトムアップの建築なんですよね

例えば、私がゼネコンで働いていた時に関わっていたような建造物は、その完成図を一番上に据えたトップダウンの構図で現場が動いていましたが、今のアースバッグはどちらかというと一緒に作る人たちを基底においたボトムアップの構図に近いと思います

スギ:実際にアースバッグの現場では、やっていくうちに完成図がどんどん更新されていって、最終的にできたものが初めの完成図とは全然違うなんてこともあります(笑)

なっちゃん:完成図というゴールだけでなく、作る人たちというスタートも大事だよね。

田村さん:そうですね。そこがアースバッグ工法の魅力の一つであり、広めていくのが難しい点でもありますね。

アースバッグハウスを建てることの難しさ

スギ:どんなところに難しさを感じましたか?

田村さん:法律面ですね。
もともと建築を含むあらゆる文化はボトムアップの系統で生まれてきたものですが、ボトムアップで進めていくと日本の法律に合わせるのがだんだん難しくなってきて、その中で建築基準法や都市計画法が整備されてきた歴史があります。そして、それらの法律は木造やRCといった工法の枠組みと対応するように作られています

ただ、アースバッグに対応するようにはできていません

なっちゃん:そうですね、それはアースバッグハウスを設計するときにいつも悩む点です。

田村さん:もちろん、建築基準法にアースバッグを適合させていくことはできると思います。ただ、それをやると最終的には現代の建築になってしまう。
それがこれからのアースバッグにとって本当にいいことなのかは、私にはわかりません

スギ:みんなで作れるのがアースバッグの魅力の一つですから、プロたちが集まって作る建物になってしまうと、良さが失われてしまうかもしれませんね

田村さんのなかでアースバッグにはこうゆう方向の可能性があるんじゃないかなぁとか思っていることってありますか?

現代の住宅へのアンチテーゼ

アースバッグの可能性はどんなものがあるのか?


田村さん:アースバッグの可能性は「みんなで作る」ことにあるんじゃないでしょうか?
先にもあげた茅葺の例のように、村のような小さな共同体の中でお互いのために建物を立て合うような関係性の中にアースバッグは活きると思います

例えば、マンションなどに住んでいる場合、隣に誰が住んでるかわからないという状況がありますよね。アースバッグの場合は隣の人達どうしの関係ができる建物になるんじゃないかなと思いますね。

なっちゃん:そうですね。そこにも建築の原点を感じますね

田村さん:あとは、現代の基準に則った住宅に違和感を感じている人たちにとっての代替案になるかもしれません。
例えば、今の長期優良住宅は高気密・高断熱を主眼においていて、小さいエネルギーで快適な室温を保てるという意味では非常にエコです。ただ、それを実現するために気密をよくする。
そうするとシックハウスのリスクが生じて24時間換気をつけなくてはいけないというような矛盾が生じてくるんです。
そういった矛盾に疑問を感じている人は、建築業界内にも少なくありません

スギ:難しい問題ですね・・・

田村さん:日本の気象条件や災害リスクを踏まえた上で「快適な」木造住宅を60年以上保たせるというのは簡単なことではないんですよね
今、大手住宅メーカーの中には長期優良住宅を実現するために、10年おきに家のフルメンテナンスを行う方針を打ち出している企業もあります。しかし、高気密・高断熱の家は材料自体が高価な上に、メンテナンスの手間もかかるため、どうしても高額になります

なっちゃん:費用もさることながら、自分でメンテナンスができないのも、問題の一つですね

田村さん:はい、高気密・高断熱の家は知識や経験がないと自分でメンテナンスすることは難しいですね
快適で長持ちする家はたしかに魅力的です、けど自分で手入れができない家を、そこに住む人がどこまで「自分の家だ」と思えるのでしょうか
売買契約をかわして、契約書があるのなら書類上はその人の持ち物です
けれども、所有と愛着は同じことではないですよね

「住宅の本質」はどこにあるのか?

アースバッグは今のところ、その流れとは対極にある建物ですよね
自分たちの手で建てて、メンテナンスもしていく。主に法律の面でこれからの課題は山積していますけど、行き詰まった現代の住宅事情に、風穴を開けるようなムーブメントになるかもしれません

アースバッグの作り方はオンラインで学べるのか?

スギ:今回田村さんがアースバッグ協会のオンラインワークショップに参加してくださったのは、アースバッグのもつ可能性を知りたかったからですか?

田村さん:それもありますけど、単純にアースバッグがどんなふうに作られているのかに関心がありました
アースバッグハウスをはじめて見かけたのは何かの雑誌でした。その時、こんなに自由な形の建物を日本で建てていいんだという驚きが印象的でそれからずっと気になっていました。世界を見渡せばドームハウスそのものは珍しいものではありませんけど、日本ではかなり珍しいんですよね
なので、どんな素材でできてきて、どんな手順で作られているのかが知りたかったんです

なっちゃん:実際にオンラインで学んでみて、いかがでしたか?

田村さん:普段関わっている建築とは全く違う部分があって、とても興味深かったです
特に「土の試験方法」が面白かったですね、土と消石灰などの配合を変えたサンプルをいくつも用意して、自分たちでテストする方法。
その方法もさることながら、材料の強度を自分たちで調べていることにも驚きました

あとは、自然素材と新建材をふんだんに織り交ぜているところも面白かったです。
参加する前は、ほとんど自然素材で建てているという先入観がありましたが、実際には自然素材を使いながらも防水素材や塗料など、一部には新建材も使われていてそれぞれの長所を活かした建物だったと知りました

なっちゃん:今は快適な空間を保ちながら、自然素材の割合を増やせるような実験も積み重ねているところです

スギ:最後に、オンラインワークショップで「もっとこの点について知りたかった」と思うことはありますか?

田村さん:個人的には、ドームのデザインの仕方をもっと知りたかったですね。アースバッグ協会が建てているドームは、他のアースバッグよりも見た目のデザインが特徴的なので、どんなイメージや着想、手順でデザインしているのかが気になりました

スギ:わかりました、その点は今後のワークショップの内容に取り入れていきます

田村さん:あとは、あの設計図からどうやって実際にドームを建てているのかが気になりましたね

なっちゃん:それはどういうことですか?

田村さん:アースバッグに使われている設計図って、あまり厳密なものではないですよね?
寸法など細かな指定がミリ単位で書かれているわけでもないのに、どうしてあんな立派な建物が建つのか、わからないんです(笑)

スギ:それは普段建築のお仕事をされている方ならではのわからなさですね(笑)

田村さん:技術のレベルに関わらず、いろんな人が建築に参加できるアースバッグでは、現場の中でも実際に完成図が頭の中にある人はおそらく1人か2人ですよね。
最終的な完成のイメージを作業員全員が共有していないのに、あれだけの完成度が出せるのは、どういうことなんでしょうか?

なっちゃん:アースバッグはポジティブにいうと、すごく柔軟性がありますからね。
設計図とおりに収まらなくても造形に活かしたり、後から壁を削ったりすればある程度はなんとかなるし、そこが面白いところでもある(笑)


スギ:あとは経験値もあると思います。壁を削ればどうにかなる部分と、どうにもならない部分の見極めは、経験によるところが大きいです
そういう勘所を抑えた人がプロジェクトにいれば、あとは参加者のパワーで次第に出来上がっていくのが、アースバッグの面白さですね

田村さん:そうかもしれません。
私は今回オンラインワークショップを通じて、実際にアースバッグがどんなふうにできているのかを学べたので、次は実践にも参加して、その面白さを体験してみたいです。

その時には、またいろんな疑問が出ると思うので・・・

なっちゃん:楽しみにしています(笑)

スギ:田村さん、今回はご協力ありがとうございました!

田村さん:こちらこそ、ありがとうございました。

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