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貧乏人の某

 漫画記事のまとめがまだじゃないか! という脳内の声がうるさいのだけれど、今日は貧乏人の話。

 私は、スーパーで魚のあらが売られていると大抵買ってしまう。「きのう何食べた?」で、シロさんが、「ぶりが安い日は、あらはもっと安いから、それを買ってきてぶり大根を作る」と言っていたのだけれど、それを地でいく生活である。
 ちなみに、まぐろの血合いのあらを買った時はそれを煮てまぐろフレークにしたのだけれど、かなり大量にできて、子供には不評なんてこともあるので、安いから、工夫ができそうな素材だからといって、飛びついてはいけないのだけれど……。

 私が高確率で買うあらは鯛のあらである。鯛が安い日、頭の部分やえらの部分だけの鯛が安く売られているので、それを鯛めしにする。本体を家族分しょっちゅう買うお金はないが、鯛の美味しさを学習させたいという貧乏人の知恵である。ただ、あらの部分はうろこがかなりついていて、どんなにきっちり取ったつもりでも、たいてい少し入ってしまう。骨が入っていた、うろこが入っていたと子供らに非難されるたび、この貧乏人の鯛めしのこだわりなんて、私のエゴかもしれないなと思うのである。でも! 鯛! 美味しいし!

 ちなみに、鯛めしといえばずいぶん昔に、さる高級料亭で食したことがあるのだけれど、料亭の鯛めしはどのくらい神経を使って作られているのだろうかといつも疑問に思う。そもそも鯛のあらなんて使っていないだろうし、うろこや骨が入るなんてもってのほかだろう。といって、全くおこげがなくても愛嬌がないので、とてもお上品なおこげをわざと作って添えるんだろうか。焦げだらけの我が家の土鍋をぢっと見つめるのである。


 そういえば、貧乏人のと名の付く料理にパスタがあったはず。その話を子供にしたら、普段半熟卵なんて絶対許さない面々なのに、食べたいと大合唱しだした。

 卵二個をニンニクの香りを付けた油で目玉焼きにして、一個は半生で火からおろし、もう一個は加熱してざっと刻んでおく。指定より短く茹でたパスタ、ゆで汁をフライパンで炒め、塩で味付けして、刻んだ卵を和える。上に半熟目玉焼きをのせ、粉チーズと黒コショウをまぶしてできあがり。


 子供の栄養面と、見た目へのなけなしの配慮から、マッシュルームとカリカリレンコンを添えたよ。

 なかなかどうして、濃厚で美味しいじゃないですか。カルボナーラも地域によってはほぼ卵かけごはんならぬ卵かけパスタだ、と聞くけど、卵二個使えばこれだけでも十分満足できる。なお、本来「貧乏人のパスタ」はにんにくと塩だけで味付けするものだけれど、わたしはリュウジさんの200mlの水で麺を茹でてペペロンチーノを作るってメニューの解説で、「味付けを塩だけにするのはどうしたって味気ない」という意見に全面同意なので、今回のパスタにもコンソメを入れた。

 貧乏人のパスタという名前は、貧乏だからというよりは、料理できない独身男がパパッと作るようなもの、という意味合いらしい。イタリアでも卵は物価の優等生なのかな? とか思ってしまったけれど。ちなみにニンニクと唐辛子しか入っていないペペロンチーノは、貧乏人から更にランクが下がって「絶望のパスタ」らしい。絶望のパスタは海で見たけど……なんか……ふふっ……。

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